曖昧化する問い合わせに対しFAQシステムの充実を図りデスクワークの改善・効率化を目指す

(株)NTTドコモ

(株)NTTドコモでは、ユーザーの利用状況に応じたさまざまなプランを次々と打ち出し、お客様満足の維持・向上を図っている。しかし、サービスの多様化・複雑化が進めば進むほど、お客様接点となる店舗やインフォメーションセンターには、これまで以上に豊富な知識が求められる。コミュニケータの負担やコール増に対し、どのような対策を講じているのか。

それぞれのお客様接点が持つ利点を活かした体制に

 関東甲信越を営業エリアとする(株)NTTドコモでは、エリア内に6カ所のインフォメーションセンターを開設。携帯電話ユーザーからの各種問い合わせ・注文に対応している。2005年度の月間平均コール数は約93万件を数え、前年を約6万件下まわった。これらのコールの約8割にコミュニケータが対応している。
 インフォメーションセンターは、実店舗である「ドコモショップ」やWeb上の「ドコモeサイト」「メールお問い合わせ」と並ぶ重要なお客様接点として位置付けられている(図表1)。インフォメーションセンターによる対応を顧客サイドから見ると、「ドコモショップ」との比較では“わざわざ出向く必要がない”、「メールお問い合わせ」「ドコモeサイト」との比較では、同時性・双方向性を持つチャネルであることから、“用件を迅速・円滑・確実にこなすことができる利点がある”と認識。それぞれのお客様接点が持つ利点を活かした体制を敷いている。

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 加えて、昨今、携帯電話サービスの多様化、複雑化や端末の高機能化に伴い、お客様からのコール内容も多様化、複雑化。1コール当たりの応対時間が長くなる傾向がある中で、同社では、2005年度、コールセンターの受付時間を全日午後8時までに延長するなどサービスの一層の充実を図るとともに、簡易な注文・照会については、IVRを利用した24時間自動受付の充実を図っている。
 一方で同社では、膨大な量の問い合わせや注文への対応を通じて、問い合わせ内容の傾向をいち早くナレッジとして共有し、コミュニケータのデスクワークの改善・効率化を目指すとともに、お客様の声を収集し、新商品・サービスの開発に役立てることもセンターの重要な役割ととらえている。後者については、センター内のマーケティング部門がテキストマイニングを行い、次なるサービスや事業戦略に反映させている。

請求書やドコモeサイトと連携しコールを予め回避できる手立てを講じる

 こうした中、平均応答率90%以上を維持している同社だが、コール数自体のコントロールは困難とのこと。現状、コールが集中するのは、季節別では新生活が始まり引っ越しが多くなる時期(3~4月)、日別では請求書送付時期や月末・月初、時間帯別では受け付け開始直後(9時~)と16時前後。そのほか、新サービス提供開始時や新端末発売開始時などにもコールが集中し、応答率が一時的に低下することもある。
 同社では、電話のつながりにくさを解消するため、複雑な説明を必要としないサービスの申し込みや手続きなどは、センターから「ドコモeサイト」へユーザーを誘導するよう努めている。具体的には毎月送付する請求書の封筒や、同封の冊子でサービス情報を告知して「ドコモeサイト」の認知向上および利用促進を図っている(写真参照)。

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請求書に同封した新サービスのチラシ(左側が表面、右側が裏面)。裏面では、ドコモeサイトへのアクセスの仕方を順序立てて説明している

封筒裏・告知

請求書の封筒裏面には、ドコモeサイトを大きく告知。引っ越しの多い時期の住所変更の手続きを喚起するとともに、ドコモeサイトへの誘導を図っている

 このように、コールを予め回避する手立てはある程度は講じているが、思い立ったらすぐにかけられる電話を“携帯”している状況で、コール数を平準化するのは困難なもようである。

問い合わせの曖昧化に対しお客様の言葉でFAQ入力を徹底

 問い合わせへの応対時間の短縮にも積極的に取り組んでいる。センター内の業務の効率化を目指して量的検証を行うとともに、コールセンターマネジメントシステムにモニタリングの結果を分析できる機能を追加。これらの結果から、コミュニケータがお客様の言葉をもとに概念検索やキーワード検索を行うだけで最適な応対が表示されるようスクリプトを改善している。これは、まだ知識が十分でない新人にとって、大変使いやすい設計と言える。
 老若男女問わず携帯電話の普及が進み、「生活インフラ」となっていく中で、インフォメーションセンターに寄せられるコール内容は曖昧化、複合化し、緊急度も増している。そんな状況において、コミュニケータ用のFAQシステムの充実がますます重要視されているのだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年6月号の記事