3フェーズの成長戦略により、日常生活のあるゆるシーンでの利用を目指す

(株)Tカード&マーケティング

全国約1,900万人(2006年2月末現在)の会員を有する国内最大の各種エンタテインメントソフトレンタル・販売店チェーンTSUTAYA会員証をベースに、TSUTAYAおよび提携企業で共通のポイント・プログラム「ティーポイント」事業を展開する(株)Tカード&マーケティング。今回は特に、日常生活のあるゆるシーンで利用されるポイント・プログラムを目指す同社の異業種提携戦略に注目した。

22社参加の異業種共通ポイント・プログラム「ティーポイント」

 TSUTAYA会員証をベースとするポイント・プログラム「ティーポイント」は、当初、TSUTAYAでのみ利用できるポイント・プログラムとして発足。しかも、その利用は会員証発行店に限られていた。つまり、その目的は、個店レベルでの会員囲い込みにほぼ限定されていたのである。
 しかし、その後、「ティーポイント」はその性格を大きく変えた。2004年4月にTSUTAYA全店でのポイント共通化を実施。また、これに先立って2003年3月に(株)ローソン、新日本石油(株)との間でポイント・プログラムに関する業務提携を締結し、同10月から運用を開始したのを皮切りに、異業種との提携を積極的に推進。2006年3月現在、「ティーポイント」への参加企業は、実に22社に及んでいる(TSUTAYA、TSUTAYA onlineを含む)。このような大きな変化は、どのような戦略によって、もたらされたのか。

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3フェーズの成長戦略

 「ティーポイント」事業においては、「日常生活のあらゆるシーンで利用されるポイント・プログラムを目指す」という目標達成のため、3フェーズに渡る成長戦略が設定された。
 まず、第1フェーズはTSUTAYA全店でのポイント共通化。これは前述の通り、すでに2004年4月に完了している(一部例外を除く)。
 第2フェーズは、日常生活のあるゆるシーンを網羅する異業種企業との提携。これについてはリテールをメインに、日常生活にかかわるさまざまな業種におけるリーディングカンパニー1業種1社との提携を目指しており、前述の通り、すでに22企業の参加を得ている。ちなみに同社では、30企業の参加により、日常生活のほとんどのシーンをカバーできると考えていることから、現在の進行状況はほぼ70%程度と考えられよう。
 第3フェーズは、現在、TSUTAYAに限定されているTSUTAYA会員証の発行拠点を、提携企業にも拡大すること。これについては、2006年度中に「カメラのキタムラ」でのTSUTAYA会員証発行を開始する予定であり、これを端緒に拡大していく意向だ。
 同社では、このTカード発行拠点拡大により、将来的には会員数が3,000万人規模に達すると予想。さらに現在、TSUTAYA会員証発行拠点がTSUTAYAに限定されていることに起因して、TSUTAYA の顧客層の中心である20代に45%前後が集中している会員の属性的分布の平準化も期待できることから、TSUTAYA会員証のマーケティングプラットフォームとしての価値が高まり、日本の消費動向を左右する存在になれるものと見込んでいる。

提携企業の期待を集めるマーケティングサービスと集客力

 それではなぜ、「ティーポイント」事業は多くの提携企業を獲得することができるのか。その大きなフックとなっているのが、同社が提供するマーケティングサービスと、全国約1,900万人の会員規模をベースとする集客力の高さである。
 マーケティングサービスについては、提携各社のPOSと連動して会員の利用履歴を単品ベースで把握。顧客軸による分析、商品軸による分析、商圏分析などを実施し、基本的な帳票をWebベースで提供するほか、イレギュラーな要望に対してもアドホックで対応している。提携企業にとっては、同社がこれまでに培ったノウハウを活用でき、また、これらの業務を単独で行う場合に必要な経営資源の投入が軽減される点が魅力と言える。
 集客については、TSUTAYA店頭でのポスターや配布物のほか、ダイレクトメールやeメール、さらには200万部発行の月刊情報誌(フリーペーパー)『TSUTAYA CLUB MAGAZINE』などを主な媒体に、提携企業情報を会員に伝達している。ある提携企業の店頭において来店理由調査(複数回答)を行ったところ、2005年5月の調査では、回答者の7割近くが「TSUTAYAのティーポイントが貯められる」ことを来店理由に挙げるなど、その効果は絶大と言えよう。
 さらに、最近では同社がハブとなって、提携企業同士の相互販促活動を仲介する試みも始められている。例えば、2005年10月~12月にはエネオス(新日本石油)の店舗で、映画「Mr.&Mrs.スミス」の告知を行い、同時に映画鑑賞券などが当たる特典を用意する一方、ワーナー・マイカル・シネマズの47カ所の映画館内でエネオスのハイオクガソリンに関するキャンペーンを紹介、相互の集客効果を狙うキャンペーンが実施された。若い世代へのハイオクガソリンの販売を目論むエネオスと、郊外型映画館への自動車での来場促進を狙うワーナーとの思惑が一致したものであり、似通った顧客層の開拓を狙う提携企業のニーズをうまく結び付けた好例と言えよう。今後もこのような試みは継続して行い、トライ&エラーを重ねつつ、効率の高い連携スタイルを模索して、最終的には定期化につなげていく意向である。
 なお、同社では提携企業ごとに営業、販促、マーケティングの各担当者をチームとして組織しており、このチームが提携企業のマーケティング・ニーズを汲み上げ、それに対応した施策を提案することで、各提携企業のその時々における事情に基づいた、タイムリーかつ的確なサポートを実現している。

TSUTAYA

200万部発行の月刊情報誌(フリーペーパー) 『TSUTAYA CLUB MAGAZINE』でも提携企業の情報を告知

インターネットの有効活用、優良会員対策などが将来的な課題

 「ティーポイント」事業における将来的な課題としては、インターネットの有効活用や優良会員対策などが挙げられている。
 インターネットの活用に関しては、現時点では専用Webサイトを設けているものの、内容的には会員向けの提携企業情報の提供などにとどまっている状況である。将来的にはこのWebサイトを発展させ、提携企業のECサイトと連動させるなど、実利用の増加につながる施策も講じていく意向である。
 優良会員対策も大きなテーマだ。現状では会員へのポイント付与率は利用実績にかかわらず一定であるが、将来的にはステージ制の導入なども視野に入れている。
 いずれにせよ、国内でも有数の会員数を基盤として、新しいポイント・プログラムの形を模索し続けるTカード&マーケティングの活動は、今後も注目に値すると言えよう。


月刊『アイ・エム・プレス』2006年4月号の記事