必要なタイミングで利用しやすい接点でのアクセスを提供

(株)ファンケル

(株)ファンケルは、美容関連事業の情報誌『エスポワール』と鍵康関連事業の情報誌『元気生活』を通販事業における重要なコミュニケーションツールへと成長させた。また、ユーザーニーズに応えるかたちで、店舗展開を積極的に推進。さらに、1997年にはネット販売を開始し、現在はネットならではのプロモーションを展開。それぞれのチャネルの役割を最適化して、事業を推進している。

販売チャネルを増やすことでお客様の「不」を解消

 「肌を美しくするはずの化粧品に肌を傷つけてられている。そんな悩みを抱える女性が安心して使える化粧品をつくりたい」という創業者の想いが、(株)ファンケルの原点である。1982年、2年近くの研究・テスト販売を経て、肌トラブルの原因である防腐剤を一切排除した無添加の5mlのバイアル容器入り化粧液を完成させ、通信販売をスタートさせた。以来、生活の中の「不」の解消を企業理念に新しい価値を創造するかたちで事業領域を広げ、現在は、化粧品関連と栄養補助食品(サプリメント)関連の2事業を“収益を目指す「コア事業」に、発芽玄米事業と青汁事業を“成長性を目指す「成長事業」”と位置付けて、美と健康という事業領域に挑み続けている。2005年1月現在、基礎化粧品など約100品目、メイク用品など約70品目、サプリメントなど約100品目を扱っている。
 1982年に発売された5mlのバイアル容器入りの製品は、防腐剤を含まないがゆえに、つくりたての製品を素早くユーザーの手元に届ける通信販売が最適な販路と判断。同社が通販で出発した理由がここにある。1985年には情報誌『エスポワール』を創刊。同誌は1995年と2001年のリニューアルを経て、通販事業における重要なコミュニケーションツールへと成長した。現在、美容と健康をサポートするコミュニケーションマガジンは、美容関連事業の情報誌『エスポワール』と健康関連事業の情報誌『元気生活』の二本柱で、それぞれ毎月発行している。
 通販には、商品がユーザーの手元に届くまでに「3つの手間」が存在するという。注文、受け取り、支払いがそれだ。同社では、通販システムをいかに簡略化し、こうした手間を軽減するかに努め、マルチチャネル展開を推し進めてきた。例えば、注文フェーズでは、 コンタクトポイントとして情報誌、Web、直営店舗を、注文チャネルとして電話、ハガキ、FAX、インターネットを用意。受け取りフェーズでは、留守でも登録場所に商品を置いていってもらえる「置き場所指定サービス」を開始。支払いフェーズではコンビニエンスストアでの代金払い込みサービスにも、業界に先駆けて取り組んできた。
 また、肌への使用感を試してみたい、現物のファンデーションや口紅などの色を見てみたいといったユーザーニーズに応えるかたちで、特にコンタクトポイントとしての直営店舗の拡充は積極的に進めている。1995年には、静岡市に直営店舗の1号店「ファンケルハウス」を出店。以来、着々と出店数を増やし、1998年12月の健康食品の中核ショップ「元気ステーション」開設、2005年春のジューススタンドを併設した新業態である美と健康のセレクトショップ「ファンケルハウスJ」オープンなどを経て、2005年9月末日現在、全国174店の直営店舗を展開する。今後も新規出店を加速させて、2007年3月期末には直営店舗300店体制を目指す。

10年前に比べてWebからの注文比率が上昇

 情報誌『エスポワール』と『元気生活』はそれぞれ毎月約80万部を発行。毎月20日~25日ごろという配達時期を考慮し、Webに掲載する情報のアップデートやキャンペーン開始、新商品告知・投入などのタイミングを計っている。
 店舗はマルチチャネル展開において、顧客とのフェイス・トゥ・フェイスの接点を担う。ジュースという手軽なアイテムをきっかけにした化粧品やサプリメントへの利用拡大を目指して、事業成長に伴い多様化してきた業態を「ファンケルハウスJ」へと転換中だ。
 また、特に直営店舗はファンケルらしさを直に伝える販売拠点であるという位置付けから、スタッフが丁寧な説明を加えるなど、対面ならではのカウンセリングやテスティングといったサービスの提供を試行中である。そのひとつが、「内外美容アドバイザー」の配置だ。同社では、身体の内側からも外側からも美容や健康を追求する「内外美容」を提唱しているが、これを店頭で個別にサポートする専門スタッフとして、すでに約120名を配置している。
 直営店舗における接客ポリシーは明確で、“売らない勇気を持つ”こと。例えば、必要な人に必要なものを、必要としない人には押し付けない接客スタンスを徹底している。来店客がその場で購入に至らなくても、ユーザーにとって必要なタイミングで利用しやすい接点でのアクセスがかなえばいい、という考えだ。これはまさにマルチチャネル展開の強みだと言える。
 さらに、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでの取り扱いフェイスも増やすなど、顧客に対し商品を身近にする接点づくりに積極的だ。
 一方、Webサイトは、広く一般の人々に向けて商品の紹介を行うサイトとして1996年に開設。1997年よりネット販売を開始し、現在は、情報誌には載せきれないネットならではの商品情報の提供、プロモーションを実施している。また、各販売チャネルでの購入に対して、獲得ポイントを一元管理する5%のポイントサービスも展開しているが、オンライン注文の場合はさらに1%がポイントプラスになるというインセティブを設けて利用促進を図っている。
 チャネル別の売上構成比率は、情報誌およびWebによる通販約60%、直営店舗30%、コンビニエンスストアなどへの卸売約10%。アクセスチャネルは、1位電話、2位Web、3位ハガキで、10年前に比べて2位と3位が逆転。情報誌に比べてWebは、独自の特典(前述)や顧客が自身の購入履歴を確認しながら注文できるといった媒体特性上の利便性もあり、注文比率はますます上昇している。ちなみにWebのトップページビューは、月当たり120万件に上る。顧客のボリュームゾーンは20代後半から30代の女性で、チャネルごとに大きな差はない。
 近年、同社では、カルシウムをはじめとするミネラルの吸収を高める新機能成分「ツイントース」、分子量が小さく体内への吸収が早いうえに美肌効果も高い「HTCコラーゲン」、新発想の美白サプリメント「ホワイトアドバンス」の開発といった画期的成分や製品の独自開発に相次いで成功。サプリメント市場は新規参入が著しく競争が激化していることから、差別化策として、独自成分や製品の研究および実用化に一層注力していく意向だ。また、サプリメントと医薬品の飲み合わせを検索できる画期的なデータベースを構築し、2004年4月、「サプリメントと薬の飲み合わせ(Supplement & Drug Interaction:SDI)窓口」を開設した。
 今後のマルチチャネル展開において、同社では、既存チャネルの充実化にフォーカスする。まず通販では、リピート購入を促進するべく、顧客属性や購買特性に見合ったサービスシステムや商品提案を行っていくという。店舗については、対面によるヒューマンタッチな対応ができるという特性を再認識し、内外美容アドバイザーの配置に全力を尽くす。Webについては、競合サイトを意識しつつ、使いやすさをさらに追求し、工夫を凝らしていく意向だ。

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Web情報のアップデートやキャンベーンの開始、新商品告知・投入などのタイミングは、情報誌『工スポワール』と『元気生活』が講読者の手元に届く、毎月20日~25日ごろに行う


月刊『アイ・エム・プレス』2005年11月号の記事