ブロードバンド時代におけるテレビとインターネットを融合

ジュピターショップチャンネル(株)

テレビショッピング専門チャンネル『ショップチャンネル』でお馴染みのジュピターショップチャンネル(株)。同社は、テレビと同期させたインターネットショッピングサイトおよび携帯電話サイトも開設し、テレビとインターネットを融合させながら、ブロードバンド時代における先駆的なマルチチャネル展開を進める。

Webサイトが持つインタラクティブ性を重視

 テレビショッピング専門チャンネル「ショップチャンネル」を展開し、日本におけるテレビショッピングのパイオニアとして1996年11月設立以来、急成長を続けるジュピターショップチャンネル(株)。2001年3月には日本初の24時間生放送を、2004年9月には完全24時間生放送化を実現。CSデジタル放送、CATV放送などを通じた通信販売事業をビジネスの柱に、テレビと同期させたインターネットショッピングサイト「ネットでSHOP」および携帯電話サイト「ケータイでSHOP」も開設し、テレビとインターネットを融合させながら、ブロードバンド時代における先駆的なマルチチャネル展開を進める。
 ホームページの開設は、1999年9月のインフォメーション・サイト立ち上げに遡る。テレビがOne Wayのメディアであるのに対して、Webはひとつのメディア内にインタラクティブなモジュールを持つ。そこで、インタラクテイブ性を事業展開のキーワードのひとつに据える同社では、双方向テレビを将来的なメディアとしてとらえ、2003年3月には「テレビ連動型オンラインショッピングサイト」を正式にオープンした。
 現在、商品閲覧できる主要メディアは、テレビ、Web、モバイル。注文は、コールセンタ一、Web、モパイルのそれぞれで受付可能だ。コンタクトポイントを幅広く持つことで、ユーザーは閲覧も注文も自在にメディアを選択できる。こうしたマルチチャネル展開の実現を可能にする体制として、商品買い付け・仕入から番組編成、受注、配送までを自社で管理する一貫管理体制を構築したうえで、テレビとネットという販売チャネルを超えた在庫情報の一元化や、商品マスターと顧客マスターのデータベースのリアルタイムでの連携を実現していることも見逃せない。

「テレビ」から「Web」へ「Web」から「テレビ」ヘ

 「ショップチャンネル」の最大の特長は、「ライブ放送」だ。視聴者からのリクエストや質問にもリアルタイムで対応する、インタラクテイブな番組づくりを実現。現在、CSデジタル放送「スカイパーフェクTV!」および「スカパー!110」をはじめ、全国の318局のケーブルテレビでの視聴が可能。視聴可能世帯数は日本の総世帯数の3分の1に当たる全国1,972万世帯(2005年6月現在)、1日の平均コール数は約3万5,000件に上る。テレビで取り上げる商品は、ユニークであること、希少性が高いこと、商品価値が明確であること、値頃感があることなどの独自指標に基づいて専属バイヤーが世界中から厳選。ジュエリー、ファッション、コスメティックなどの人気商品群が7割以上を占め、平均価格は約7,600円。1週間に約700アイテムを紹介し、毎週300~400アイテムを入れ替える。テレビでは、画面上にURLを常時告知するメディアミックスを展開している。
 また、「ネットでSHOP」では、テレビで放映中の商品の静止画がポップアップされるほか、2004年3月より24時間無料のストリーミングサービスを実施中で、ブロードバンド環境のユーザーはテレビとほぼ同じ番組を24時間視聴できる。MDはテレビとの連動が基本で、商品は自社スタジオで撮影し、同じ映像をテレビとWebの双方に流す。「テレビ連動企画&商品」として、放送されたばかりの10商品を放送に連動して動的に作成するページ「Hot10」のほか、「放送中の商品を見る」「放送中の商品を買う」「TV放送を見る」といったページを設けて、テレビとの連動性を積極的に高めている。
 一方、過去に取り扱った商品を番組表から遡って見ることができる「番組表を見る」のコーナーや、アウトレット的に陳列したコーナ一、ネット限定品や人気商品のベストランキング「TOP20」といったネット特別企画も展開。また、テレビでは、ジュエリーならジュエリーといった商品カテゴリーごとに番組を編成し、品揃えしているのに対して、Webでは生活シーンにより特集ページを作って品揃えすることで、ユーザーが商品をイメージしやすくするなど、Webならではの売場作りの工夫も行う。例えば、「秋の行楽」というテーマのもとにファッションや雑貨などの品揃えをするといった具合だ。
 Webでは総計約3万点もの商品の購入が可能。テレビに比べてWebでは、健康食品や化粧品など、“説明をじっくり読んで比較購入したい”カテゴリーの売上比率が高いという。
 モバイルの「ケータイでSHOP」は、主要3キャリアからのアクセスが可能。テレビとの連動により、放送中の商品の閲覧や購入がリアルタイムでできる。主なコンテンツとしては、毎日更新の「ケータイ限定」のほか、ネット同様の「TOP20」や「アウトレット商品」などがあり、定番商品については一部動画も配信。また、Webと同規模の商品量を扱っており、これは競合サイトにも群を抜く展開である。

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テレビと24時間連動したWebサイト。このほかに、携帯電話もテレビと連動している

Webサイ卜や携帯電話がテレビを確実に補完

 商品の閲覧や注文のメディアをユーザーが自在に組み合わせることができるマルチチャネル環境により、テレビを見てWebや携帯電話で注文する、あるいはWebの電子カタログでチェックして電話で注文するというマルチチャネルユーザーが登場した。同ユーザーは購入金額が高い傾向にあり、重要顧客と位置付けている。特に、テレビでのURL常時告知の開始以降、PCからのネット受注の売り上げが3倍に伸びた。当初は、ネットの顧客は既存顧客のうちオペレータとの対話を望まない顧客がシフトすると予測していたが、実際は、視聴環境はあったものの、注文には至らなかった視聴者を新規顧客として取り込むことができた。
 同社のWebは一般的なサイトに比べてひとり当たりのPVがかなり高い。トラフイックは、1日当たり80万~150万PVを誇る。また、放送中の商品や本日のおすすめ品については、携帯電話の貢献度が非常に高く、eコマースでの売り上げのかなりの比率は携帯電話経由という実績を誇る。これはアクセスおよび注文の手軽さゆえと同社では分析する。
 そのほか、アウトレットやアンテナショップとしての役割を担うリアル店舗を出店している。ユーザーにとっては人気キャストと生で触れ合える店舗は貴重なコンタクトポイントであり、ショップチャンネルに対するロイヤルティ向上の一端を担う。大阪店は設計の段階からライブ中継を意識した、スタジオのような店舗作りとなっている。
 同社では、来年に予定しているシステムリニューアルによって、画面に表示するテレビ連動機能を充実化させるほか、配信容量を抑えて表示スピードを上げるなど、Webの使い勝手を一層向上させる。
 ネット上で映像配信できるインフラの整備が進めば、よりシームレスな環境が実現するだろう。現在、テレビライクなWebづくりを目指しているが、こうした取り組みを推し進めることで、やがて到来するテレビの双方向化に迅速かつ的確に対応していく意向だ。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年11月号の記事