カタログを軸に購読者を意識したネットと店舗の運営を推進

(株)カタログハウス

カタログ『通販生活』で知られる(株)カタログハウス。カタ口グを有料で販売している関係上、同社では、購読者の存在を意識しながら、店舗とWebの展開を推進中だ。購読者とのコミュニケーションを大切にしつつ、カタログを軸にWebや店舗との連携を図っている。

著名人を含む多くのファンを獲得し着実に成長を遂げる

 著名人を含む多くのファンを獲得して着実に成長を遂げ、2005年3月期に316億円の売り上げを達成した(株)カタログハウス。
 1976年、同社の前身である(株)日本ヘルスメーカーが設立され、オリジナル開発の室内ランニング器「ルームランナー」の通信販売を開始したことは有名な話だ。1982年に社名をヘルス(株)に改め、有料カタログ『通販生活』を創刊。
 その後、1987年に社名を(株)カタログハウスに変更。1988年には、『通販生活』の発行部数が100万部を超えた。1997年に「もったいない課」、1999年に「リサイクルセンター」を設立し、ほかにも独自の取扱商品環境基準を定めた「商品憲法」を配布するといった個性的な取り組みを次々に展開してきた。同社の個性は、「モノへのこだわり」「環境へのこだわり」「社会貢献へのこだわり」といった“ちょっとだけ異端な存在であること”だという。その個性をメッセージ化して伝達する媒体が、カタログ『通販生活』なのである。

店舗開設は集客目的ではなく試着、試用したい購読者の受け皿

 同社のカタログ『通販生活』は、有料で販売している関係上、同社では、購読者を意識しながら店舗とWebの展開を推進している。
 店舗に関しては、カタログ掲載商品を手にとって見てみたいという購読者のための受け皿としての目的がある。現在、店舗数は「カタログハウスの店 東京店」「カタログハウスの店 大阪店」「カタログハウスの店 横浜店」の3店になる。この3店で東京圏、大阪圏といった商圏をカバーしている。競合他社の店舗戦略とは一線を画しており、現時点では、この3店舗以上の出店計画はないという。
 同社では、これらの店舗への来店者に対して、「5大特典」を謳っている。①カタログ掲載商品を実際に手にとって確かめられ、商品によっては試着や試用もできる。食品類は試食も可能。その場で購入もでき、持ち帰りも可能である。②同社のカタログは通常、お客様にも送料の一部を負担していただいているが、店頭でお買い上げいただいた場合、送料無料で商品をお届けする。店頭に在庫があれば、翌日配送も可能。③カタログで購入した場合は、曜日指定と時間帯指定の配送を行っているが、店頭で購入した商品の配送を希望する場合は、さらに日付指定も受け付けている。④お店での支払いは現金一括払い/分割払い、クレジットカード(JCB、DC、UC、VISA翌月l回払いとボーナス1回払い)を利用できる。⑤カタログで「何個組」とセット販売している商品、例えばクリンマスターなどの洗剤類や沖縄乾燥もずくといった食品などの消耗品類を1個から購入可能。こうしたサービスは、集客を高めるよりは“わざわざお越しいただいた”お客様に対するサービスとして行っている。
 店頭に置いてあるのは、『通販生活』最新号掲載のすべての商品とムック判カタログ『ピカイチ事典』(年1回発行)の掲載商品のうち、通年動きのある商品と季節もの。商品点数は、約280点。パックヤードには、お客様が持ち帰りを希望するケースが多い、小型商品の在庫を常備している。商品の入れ替えは、年4回発行される『通販生活』の発売と同時に行われ、最新号に掲載されている新商品などを中心に据える。
 また、店舗ごとに毎月イベントを実施し、カタログ掲載商品のデモンストレーションやミニスクールを開催している。購読者が気になる商品を体感できる場を提供しているのである。
 このほか、東京・中野にある自社商品の中古ショップ「温故知品」は、アフターサービスの延長線として、お客様が必要でなくなった商品の受け皿としての意味合いが強い。自社の中古商品しか扱っていないので、売り上げを獲得するというよりは、あくまでもお客様へのサービスと環境への配慮が目的だ。

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カタログ『通販生活』の購読者を意識した、店舗とWebの運営が特徴

常に新商品を提示しながら飽きられない誌面作りに取り組む

 年4回発行される『通販生活』の購読者数は、約130万人に上る。同カタログは“雑誌”という側面があることから、常に新しい商品を提示し、お客様に飽きられない誌面作りに取り組んでいる。号当たりの掲載アイテム数は約100点で、そのうち約半数は新商品を取り上げる。定番で売れ筋の商品に関しては、『ピカイチ事典』に掲載し、『通販生活』への掲載回数は極力減らすよう心掛けている。ちなみに、冬号については、その季節にしか売れない商品が多いこともあり、ほかの号に比べて継続商品の構成比が多いそうだ。読者層は、掲載商品が耐久消費財や家庭用品が中心であることから、40代後半がボリュームゾーンとなっており、全体的に年齢層が高い。衣料品も扱っているが、ミセスを意識したファッションである。
 また、『通販生活』の購読者すべてに、『ピカイチ事典』を贈呈。『ピカイチ事典』は年1回発行で、『通販生活』の定番商品を中心に「そのジャンルでは、ピカイチと判断したもの」を掲載している。商品点数は、約380点を数える。定期購読者、過去購入者約190万人に無料配布しているが、製作コストや商品原価をはるかに上回る注文が寄せられ、売上総利益が得られるという。

Webの位置付けは『通販生活』の購読者の受け皿

 現在ではほとんどの通販企業において、カタログ発行と同時に、Web上にもカタログ掲載商品がアップされ、カタログの講読の有無にかかわらず、誰もがそれを閲覧し、注文することができるようになっている。しかし同社の場合は、カタログが有料であることから、受注サイトは購読者限定だ。IDとパスワードを入力すれば、受注用画面が表示されるといったシンプルな作りになっている。Webサイトはコーポレイト・サイトの一環として、企業案内や店舗情報、カタログの定期購読申し込みなど、非購読者も閲覧できるコンテンツと、購読者限定のコンテンツから構成。もちろん、インターネット会員の登録は購読者限定だ。購読者限定のサイトは、商品やカタログに関する裏話、オリジナル取材などの読み物のほか、中古ショップ「温故知品」の中古品の抽選販売や、『通販生活』に載せるには在庫が少なくなった商品の割り引きセールもたまに開催している。あくまで『通販生活』購読者を意識したコンテンツである。ネットからの受注は総売り上げの1割で、電話が一番多い。
 現在、同社では、『通販生活』の購読者の存在を意識しつつも、新しいネット販売の可能性を模索している。そのためには、ネット専用の商品開発など解決しなければいけない課題がいくつかあるが、同社の個性を活かしたどんなネット戦略を見せてくれるか、今後の展開から目が離せない。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年11月号の記事