高付加価値自動販売機「シーモ」を直営店とし顧客コミュニケーションを強化

日本コカ・コーラ(株)

商品サイクルの短期化が続く飲料業界において、各清涼飲料カテゴリーでトップシェアを誇る日本コカ・コーラ(株)。強力なブランド力とマス・キャンペーンの豊富な 実績をもつ同社が、購入チャネルである自動販売機を軸とした消費者とのコミュニケーション強化を図っている。iモードユーザー向けの会員制サービスClubCmodeと、ケータイを利用したキャンペーンの取り組みを取材した。

コミュニケーション・プラットフォームとして高付加価値の自動販売機「シーモ」を設置

 商品サイクルが目まぐるしく変化する清涼飲料業界において、各製品カテゴリーの基幹ブランド「コカ・コーラ」「ジョージア」「爽健美茶」「アクエリアス」を軸に25を超えるブランドを展開、約3割のトップシェアを誇る日本コカ・コーラ(株)。同社の主な業務は、日本市場における製品開発、広告などのマーケティング活動である。同社のビジネスパートナーでありカスタマーでもある、全国14のコカ・コーラボトラー社が自動販売機の設置、営業活動を担っており、各地域に密着したビジネスを展開している。
 同マーケティング部では、自動販売機を「コカ・コーラシステムの屋台骨」、言わば直営店であると定義し、「ベンディングイノベーション」を推進している。スーパーマーケット、CVSなど販売チャネルごとに購入傾向が異なる中で、自動販売機の「ボタンを押すとその場で商品が出てくる」という本来の楽しさを消費者に再認識してもらい、さらに購入時にその場で楽しめるゲームの提供などにより、隣接する他社自販機との差別化を図り、購入チャネルとして活性化したいとの思いがあるからだ。グローバルな企業理念である「Fun and Excitement」を追求する上でも、自販機は消費者とのコミュニケーション・プラットホームとして付加価値の高い購入体験が提供できる重要なツールであるとの認識から、2000年よりシーモ自販機の開発に取り組んできた。
 2002年4月、同社は伊藤忠商事(株)、(株)NTTドコモとの共同プロジェクトとして、CmodeServiceをスタートさせた。Cmodeの「C」は、Coca-ColaのCであると同時に、CommunicationのCでもある。
 これは、iモード対応ケータイ電話に表示された2次元コードをかざすことによりキャッシュレスでの製品購入が可能なCmode対応自販機(愛称シーモ)による会員向けサービスだ。登録方法は、iモード上のClub Cmodeサイトにアクセス、必要事項を入力すると、「ポイントパス」(会員証)が発行され、会員登録完了となる。以降、プリペイド方式によるキャッシュレスでのドリンク購入とポイントサービスを利用できるというものだ。
 2004年9月には、シーモを改良・刷新した「シーモ2」サービスを開始。これまでの2次元コード、赤外線に加え、非接触ICカード技術であるiモードFeliCaに対応したインターフェースを追加、決済手段が広がった。サービス面では、時間指定の割引販売機能や商品購入後に液晶画面を利用したゲームを利用できる機能、メンテナンス面では、売り切れ、故障時に担当営業のケータイへメールを自動配信する機能、保全機能を追加している。2005年1月現在、同社の全自販機設置台数は98万台、うちシーモ(シーモ2含む)設置台数は2,500万台だ。

2週間で220万人がサイトへアクセス 認知向上と会員化に成功

 同社では、2004年6月、新商品「コカ・コーラC2」の世界先行発売を行った。新商品のみならず、Cmodeのトライアルを狙ったサンプリング・キャンペーンの事例を見てみよう。
 対象はiモードユーザー。キャンペーン告知は、PCインターネット、iモードサイト内の「とくするメニュー」、NTTドコモのメッセージF(フリー)、ピクチャー広告、主要バナー広告などで行った。専用2次元コード「シーポン」を作成するサイトへ誘引し、ユーザーがケータイの2次元コードをシーモのケータイ認証口で起動すると、C2を無料で1本入手できる仕組み。さらに、着メロ無料配信、抽選プレゼントをはじめ、iモードユーザーの友人にシーポンをプレゼントできるなどのオファー特典で話題喚起を図った。それらの結果、サイトアクセス数が2週間で約220万人に到達。このうち2次元コード取得者が50万人、シーモ体験者は23万人であった。当時のClubCmode会員数は約21万人。サイトへの全アクセス数の約1割であることを考慮すると、潜在会員のシーモ認知に成功したといえるだろう。
 2004年11月1日~30日の1カ月間にわたって展開した「シーサイドで遊ぼう!!」キャンペーンは、東京・台場の臨海地区に設置した14台のシーモと商業施設を連動させたユニークなキャンペーンだ。
 同キャンペーンでは、参加対象をClubCmode会員に限定した。入会登録の上、キャンペーンサイトで専用2次元コードを入手。これを使って、エリア内でシーモのポイントラリーができるというものだ。1台回るごとに60ポイントが付与され、すべてを回るとさらに追加ポイントを得ることができる。また、シーモから自動出力されるクーポンチケットを抽選券としたプレゼントを用意。抽選にはずれた場合でも、チケットは同エリア内の指定店舗で割引クーポンとして利用できるというわけだ。
 「これが私たちがコカ・コーラシステムのCmodeで目指しているキャンペーンの姿です。ケータイだけに閉じた使い方ではなく、ケータイが持っているバーチャルな世界と、自販機を拠点としたリアルな世界の連動を目指しています」(水落氏)

利用頻度に応じたサービスプログラム展開を模索

 自販機の利用状況を見ると、会員は特定の個機を利用している例が多いという。定期的に会員向けキャンペーンを行って自販機の利用頻度を高めるとともにユーザーデータを蓄積、購入履歴を分析し、次回のサービスに活用するサイクルを確立している段階だ。
 通常は、専用サイトでシーモのキャラクターを使ったゲームや待ち受け画面の無料ダウンロードなど、コンテンツを提供して会員とのコミュニケーションを図る。年数回のキャンペーン時にはサイトで告知し、自販機へ誘引する。購入体験を積み重ねることにより、複数台が並ぶ自販機の中で自然に「シーモ」を選んでもらう、という狙いがある。
 同社は、昨年のキャンペーン時に会員対象のテスト・マーケティングを行った。会員を利用頻度で3段階に分け、CRM施策の有無で6つのグループを作り、「有」グループ層に週1、2回キャンペーンサイトに来てもらい、「シーモはどこで使えるか」「シーモの使い方」といったクイズにからめた課題型のコミュニケーション施策やアンケートを行った。結果、エンターテインメント性の高いCRM施策の効果は利用頻度の高い層により顕著に現れることがわかった。今後、利用頻度に応じたCRM施策を強化し、さらなる利用増を図っていく。
 シーモ2の特長のひとつに、決済手段の利便性がある。実際に、従来のプリペイド式会員よりもFeliCa対応機種を持つ会員のほうが利用頻度が高い。しかし、おサイフケータイの普及率が十分でない現段階では、それが新奇性によるものか利便性によるものかを検証することは難しい。FeliCa利用層の拡大には、シーモ2の設置台数・場所もかかわってくる。そこで、首都圏のオフィス街、アミューズメント施設周辺を中心に、年内に大手CVSの店舗数と並ぶ、数千台を設置する予定だ。
 Cmodeの現在の会員数は、約30万人。うち半数は10代、20代だ。会員の男女比では、自販機ユーザー全体と比べて女性がやや多く、男女が6対4の割合だと言う。キャリアが限られているとはいっても、iモードのユーザー総数は約5,000万人。同社は、まだまだ会員数の伸びは期待できると見ている。
 都市の夜の明かりをリサーチするワークショップ「照明探偵団」の報告によると、都市の街路において最も強い光を放つのは自動販売機とCVSの2つだそうだ。同社の“直営店”であるシーモを軸としたコミュニケーションに、今後も注目していきたい。


月刊『アイ・エム・プレス』2005年3月号の記事