常に緊張関係のあるパートナーシップを形成し患者が能動的に医療に参加できる仕組みを作る

(医)鉄蕉会 亀田総合病院 

日本経済新聞が行っている調査では、「医療の質重視」が2位、「患者にやさしい」で6位、「経営充実度」でも19位に入り、総得点で2位となった亀田総合病院。早くから電子カルテを導入し、患者に対して医療情報を開示するなど、透明性のある医療を提供してきた。南房総という立地にありながら、患者の中には遠方からわざわざ訪れる人もいるほどだ。同病院のスタッフが、常にどのような意識でいるのか。どこに患者の心を引き付ける魅力があるのかを取材した。

ISO9001の認証など医療の質の向上に力を注ぐ

 亀田総合病院は、亀田メディカルセンターの中核として機能する施設である。350年の歴史を持ち、千葉県南部の基幹病院として、優れた人材、高精度機器を導入・駆使し、集中治療部門を整備すると同時に急性期高度医療の提供に力を注いでいる。
 また、診療部門も含めた医療サービス全般にわたるISO9001の認証や、病院機能評価機構の認定も受け、医療の質の向上に取り組んでいる。
 1995年から、世界に先駆けて電子カルテシステムの本格運用を開始した実績を持ち、中でも医療における徹底した情報活用を推進する国内でも稀な存在として知られている。
 2002年11月には、「癒しと安らぎの環境」フォーラム(実行委員会名誉会長:日野原重明氏)から、第1回「癒しと安らぎの環境」賞クリニック部門の最優秀賞を受賞した。
 こうした先進的な取り組みを手掛けてきた同病院の院長である亀田信介氏は、「医療という商品そのものが患者さまに参加していただく、協業なのです。患者さまはカスタマーであると同時に、プロバイダーの一員になっていただかないといけない。患者さまが能動的に医療に参加して満足していただくかどうかで、商品そのものの価値を決定してしまう」と、医療の持つ前提条件を語る。
 これを基にして、患者は“オープン・パートナー”であり、決して“囚人的、受動的パートナー”ではないと言う。同病院では、患者が能動的に医療にかかわれる仕組みを院内に配置している。そのひとつが、「タッチパネル」の設置である。例えば、画面にある内科や外科などの診療科や医師などの項目に触れると、診療科ごとの診療内容を確認することができたり、担当医の経歴や専門分野が何であるかから、趣味に至るまで詳細な情報を知ることができる。また、これらの情報は同病院のWebサイトからも見ることができる。患者本人はもちろんのこと、家族にとっても安心して治療を受けることができるのである。
 もうひとつは、2002年にスタートした医療情報ネットワーク「PLANET(以下、プラネット)」の導入である。プラネットは、患者の意思に基づき、参加医療機関が相互に患者のカルテ(医療情報)を参照することができる医療情報ネットワーク。患者はインターネットから好きな場所で好きな時間に自分のカルテを見ることができ、「患者さま記入欄」を用いて医療機関に日々の自己病状や体温・血圧などの情報も発信できる。
 プラネットを利用するには、ICカードリーダーが接続され、インターネットにつながるパソコンが必要である。この条件を満たしたパソコンは、鴨川市役所や地域医療福祉センターなどの公共施設、南房総地域の中核病院のブースなどにも設置され、患者に開放されている。このシステムの導入は、同病院自らが患者を囲い込むことができない仕組みにした。これは、患者と医療関係者は、“イコール・パートナー”の関係であるという考えに基づいている。「イコール・パートナーだが、常に緊張関係を保ったパートナーシップこそが、相手を思いやれるから」(亀田氏)と説明。
 同病院では、登録された患者にICカードを渡しており、ICカードを読み取るリーダーも導入当初は400台を無料で提供。現在リーダーは6,000円で販売されているが、100人以上の患者がすでに購入したという。診察後に、院内の一画に設置されたプラネット・ブースを利用し、再確認する患者も多い。中には、ご主人が東京都内で倒れたという連絡を受けた家族が自宅からプラネットを利用して、ご主人のカルテを印刷して搬送先の病院に持って行き、医師に見せて無事に助かったケースもあった。また、病気を抱えた子どもを連れて、初めて旅行することができたと感謝されることもあったという。2004年8月からは、携帯電話(ドコモ900iシリーズ)でもカルテを見ることができるようになった。 これも患者の利便性を追求するとともに、医療への能動的参加を進める仕組みと言えるだろう。

建物

2005年4月にフルオープンする「K-Tower」のCG(中央)と、亀田メディカルセンターの全景

病院の規制緩和に伴い患者参画の医療を推進

 同病院の外来患者数は、10年で約2倍(2,500名)に増えた。これは1990年に、同病院が21世紀に向けた中長期的ビジョンとして策定したマスタープランが患者に受け入れられたからだと思われる。その第一段階が、外来専門の亀田クリニックの開設と電子カルテの導入。待ち時間を短縮するために受診予約をはじめたほか、電子カルテの導入により会計までを一元管理し、受診後すぐに会計が済むシステムを作り上げたことなどが、多くの患者の支持を得たと言える。
 現在は第二段階に向けて、約370床の個室中心の急性期病棟「K-Tower」を建設中。フルオープンは、2005年4月になる。新病棟では「Total Healing Environment」を掲げて、患者をパートナーと位置付け、医療サービスの目的をQOL向上のためのお手伝いと位置付けている。personalizing(個別性の尊重)、humanizing(人間性の尊重)、demystifying(知る権利の尊重)をポリシーとし、①病院の無駄な規制の緩和、②受ける医療から参画する医療へ、など患者中心のパーソナルなサービスを想定している。
 具体的には、入院患者にとっては病院が生活の場になることから、無駄な規制は外し、面会時間や消灯時間などの決めごとを廃止する。骨折だけで入院していて、特に医療に問題がない患者ならば、食事の時にお酒を飲んだり、食事制限のない患者ならばレストランメニューをオーダーできたり、また病室には家族が寝泊まりすることを可能にする予定だ。
 また新病棟では、全病室にパソコン端末を置き、患者が退院までの治療や検査などの予定を画面で見られるようにする。女性専用フロアには、エステサロン、ヘアサロン、ネイルサロンを完備し、代替医療による治癒力を高めることも行う。「病院だから仕方がないというようなものは作りません。仮に原宿のど真ん中にお店を出しても、負けない一流のサービスを提供していきます」(亀田氏)と、患者中心のサービス提供には、すべてに“こだわり”続けるという。
 さらに患者自身に関係したカンファレンスへの参加を推奨し、患者本人の治療への参画を促進していく。
 このように同病院では、“受ける医療”から“参画する医療”へを旗印に、患者に対して能動的に医療に参加してもらう仕組みを作ることにより、患者満足度を高め、多くの患者の支持を得るまでになった。それを深化させたのが2005年4月にフルオープンする「KTower」と言える。病院だけではなく、さまざまな企業にも参考となる病棟の完成が待たれる。

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「PLANET」の導入により、患者が積極的に医療に参加し出した(写真左)/玄関ロビーには、病院スタッフが車椅子を用意して待っている(写真右)


月刊『アイ・エム・プレス』2004年9月号の記事