販売パートナー企業の新しい技術習得とソリューション提案を支援

シスコシステムズ(株)

企業の統合・再編、製造のスリム化・オフショア化、外資の進出などが進む中、 IT市場も大変革の時を迎えている。ネットワークの構築にとどまらず、新たな価値を生み出すサービスの提案が求められているのだ。技術力不足を補い、営業活動をバックアップするポータルサイトは、販売パートナーの強い味方だ。

エンドユーザーのITコンサルタント 販売パートナー企業を全方位で支援

 インターネット/イントラネットの基盤となるネットワーク関連機器を提供する世界的なプロバイダーのシスコシステムズ(株)。同社は、販売パートナー企業へのトータル支援をWeb上で展開するため、去る2月16日に、新しいポータルサイト「e-Cisco Club」を開設した。
 「e-Cisco Club」の狙いは、同社の販売パートナーであるシステムインテグレータ-の営業活動を無料でバックアップし、最終的に同社製品の売り上げを伸ばすことにある。具体的には、技術供与・情報提供・販売ノウハウの伝授・ソリューションの提案などを通じて販売パートナーによる高度化・複雑化が著しいネットワークソリューションの提案・構築・保守・運用を支援するというものだ。
 同社では、エンドユーザーに製品を納品する際、全国に1,500あるパートナー企業を必ず経由させる戦略を採っている。その理由は以下の通りだ。①エンドユーザーには大企業もあるが中堅企業が多く、自社業務における問題を解決してくれるシステムを求めてはいるものの、ITリテラシーがそれほど高いとは言えないため、システムの専門的な話を敬遠しがちである。②同社のシステムの多くは、サーバールームなどに設置され、普段人の目に触れる機会が少ないため、エンドユーザーが製品のクオリティを見極めることが難しい。③エンドユーザーの製品導入の意思決定プロセスに関するアンケート調査結果によると、ITコンサルタント的役割を担っている、信頼できる販売パートナー企業の勧めを最重要視している。これらの理由から、同社では、同社の製品を組み込んだシステムを販売パートナー企業を通してエンドユーザーに販売する戦略を採用しているのだ。
 販売パートナー企業に同社の製品をたくさん売ってもらうためには、お客様に製品を勧めやすい環境を整える必要がある。それには、優れた製品力、お互いの信頼関係の構築、タイムリーな情報提供、他社より高いマージン、手厚い技術教育、自信を持って勧めるための製品知識をトータルにサポートし、販売パートナー企業の成長・収益拡充につなげることが一番だ。
 「e-Cisco Club」には、販売パートナー企業を多角的にサポートするプログラムが満載されている。まず、同社製品の販売に、技術の習得は不可欠。そこで最低限知っておく必要のある基礎知識を自学自習できる新入社員用「ファーストステップトレーニング」、新製品の知識の習得や技術レベルのアップを図りたい人のための「オンラインスキルアップトレーニング」などの技術トレーニング支援をWeb上で行っている。また、ビデオを活用した実践トレーニングも提供。さらに、技術者認定や高度なテクニカル情報を有料で提供するトレーニングシステムも用意している。販売パートナーには中堅企業が多く、自社で技術教育をするのは大きな負担だ。これを代行してくれる「e-Cisco Club」は、心強い味方なのだ。同社にとっては、これを通してシスコブランドの浸透効果も期待できる。
 自学自習が難しい販売パートナー企業のためには、最新の技術や情報を提供する各種イベントやセミナーを随時開催しており、その案内を「e-Cisco Club」で行っている。過去のセミナーレポートも閲覧できるので、安心して参加できる。
 もちろん、実際の販売シーンで即、役に立つコンテンツも豊富に取り揃え、提案活動の支援を行っている。例えば、ソリューション別コンテンツページ、新製品の詳細な情報、ドキュメントライブラリー、ユーザー成功事例、製品カタログなどである。それでも分からないことが発生した場合は、製品仕様、選定、構成に関する問い合わせ、簡易ネットワークデザインレビュー、提案活動についてのもろもろの相談ができる「シスコ提案サポートセンター」 がWeb上に開設されている。同センターは、平日の朝8時から夕方5時までオープンしており、リアルタイムの対応が可能である。

成功企業のノウハウ満載の企画書で新ソリューションの提案もバッチリ

 販売パートナー企業向けの技術認定制度(サーティフィケート)は、「e-Cisco Club」開設よりかなり前から存在する。専門技術レベル、顧客満足度、プリセールス/ポストセールスにおけるサポート体制など厳正な審査によって、レベル別に3段階評価を行う。現在、ゴールドパートナーが22社、シルバーパートナーが4社、それ以外はプレミアパートナーという位置付けだ。
 この認定を取得すると、エンドユーザーの販売パートナー企業ヘの評価を高めることができる。ちなみにゴールドパートナーの認定条件を見ると、①シスコの技術認定者が8人以上いる、②24時間365日サポートを行っているコールセンターを設け、お客様からの問い合わせに応じている、③そのコンタクト履歴をデータベース化している、④1時間経って問題が解決されなければ部長に、4時間経って解決されなかったら本部長に、24時間経っても解決されない場合は社長に連絡が入るように、業務プロセスをアプリケーションに組み込み、会社組織としてお客様サービスを行っているなど、非常に厳しい。
 同社では、販売パートナー企業のスキルアップと販促を図るために、Web上でブランド力と製品力をPRし、トレーニングコンテンツを見せるだけにとどまらず、お客様への提案や販売活動を各々の案件に応じて実践的にサポートしている。この機能は、競合他社にはない「e-Cisco Club」の最大の特徴である。
 営業活動の流れは、以下の通りだ。まず、販売パートナー企業の営業担当者が具体的な提案シーンをイメージし、個々のお客様の条件に近いネットワークソリューションの提案書テンプレートを「e-Cisco Club」からダウンロードする。この提案書に自社の独自性を加味して修正を加え、個々のお客様に最適化して提案すればよい。そこで疑問が湧いたり、不明な点が発生したら、販売支援センターのエージェントに直接問い合わせることもできる。問題を解決し、自信を持ってお客様に最適な提案ができることが、成約の決め手になるというわけだ。
 このようにお客様の心を動かし、購入を動機付けるために、営業担当者の弱点をカバーし、成功体験に結び付ける。ここに魅力を感じて、同社の販売パートナーになりたいという企業を増やすことも狙いのひとつである。日本全国の成功したプレゼンテーション、ユーザー事例を販売パートナー企業にWeb上で公開。約300項目からなる分析結果を提案書のフォーマットにも随時反映する。こうしたきめ細かな手ほどきによって、一度成功を体験すると、次からは上手く成約に漕ぎ着ける営業担当者が多いという。それをWeb上で見た他の人のモチベーションも上がるというわけだ。
 同社では提案書の作り変えまではサポートしない。同社の販売パートナー企業同士は競合関係にあるため、提案書の作り換えまで同社が行ってしまうと、販売パートナー企業の独自性や健全な競争が阻害されてしまうからだ。ベースの部分は同社が支援し、あとは販売パートナー企業のバリューを付加していく。主役はあくまで販売パートナー企業なのである。
 ただし、販売パートナー企業が実践場面で技術力や提案力の支援を求めてきた場合、全国9カ所のシスコシステムズの営業所に待機している300人の営業担当者が現場に直行する人的支援も、最後の切り札として用意している。
 同社は今後、「e-Cisco Club」を通して、中堅企業を中心に販売パートナー企業を拡大。彼らの営業活動に貢献しながらシスコブランドを広め、シスコ製品の拡販につなげる手法で、販売パートナー企業との共存共栄を図っていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年4月号の記事