ETCカード拡販を優良顧客戦略の主軸に20~30%の利用増を実現

ユーシーカード(株) 

ETCカード申込者は、ショッピングなど高速道路以外の領域でのクレジットカードの利用が申込前に比べて20~30%増加する。自社調査からこの結果を得たUCカー ドでは、ETCカードを中心とする優良顧客化戦略を打ち出し、すでに10万名の利用者を獲得した。

ETCカードを持つとクレジットカード利用が3割増加

 会員1,206万名、加盟店290万店を擁するUCカードでは、ここ数年で新規顧客獲得を重視する拡大路線から、既存顧客の囲い込みを図る優良顧客化路線へとマーケティング戦略をシフトさせてきた。これは、クレジットカードが広く一般に浸透し、2枚以上を持つ生活者が65%(マイボイスコム調べ)にも達する現状で、新規顧客の獲得が困難になってきたためだ。「コアな顧客は全体の20%程度」と、営業統括部 市場開発室調査役 吉中慎氏は語る。それでは、既存顧客をいかに優良顧客に引き上げ、さらなる利用促進を図るかの取り組みを紹介しよう。
 優良顧客戦略の主軸は、2001年3月から導入が開始された高速道路のノンストップ自動料金支払いシステム(ETC)向けの専用カード、「UC ETCカード」である。ETCカードを既存客に利用してもらうことでUCカードの利用そのものを促進するのだ。同社ではETCスタ-ト時から専用カードを発行しているが、2002年度に利用状況を把握するための 調査を実施。その結果、非常に興味深い事実が浮かび上がってきたという。
 まず既存顧客については、ETC申込時の前後半年のUCカード利用状況を調べた。すると、ETCカード所持者は、UCカードの利用額が20%増、多い場合では2倍以上になっていたのである。また、新規顧客がETCカードとUCカードを同時に申し込んだ場合では、ETCカードしか利用しない人の割合は全体の20%にとどまり、残り80%はUCカードを併用していることが分かった。 この2つの事実から、 ETCカ-ドは、既存顧客の優良顧客化に向けた有力なツールであり、その利用促進は新規顧客開発にもつながると判断。市場開拓に力を入れることを決定したという。

ゴールド会員の特定セグメントにDMを送付 今年度中に利用者倍増を目指す

 それでは、既存顧客に対してどのようにETCカードを勧め、申し込みにつなげているのだろうか。
 まず、会員誌「てんとう虫」の活用が挙げられる。年11回発行される同誌は会員優待情報をはじめ、旅行・チケット・グルメなどの最新情報を会員に届けているが、同誌上でETCカードを案内するとともに、車載器の通信販売を実施した。また、月に1度の利用明細発送時に同封する「UCレター」にも、同様の案内を掲載している。
 さらに2003年7月、ゴールド会員へのアプローチも開始した。ゴールド会員を「クレジットカードで高速道路料金を支払っている」「ガソリンスタンドでクレジットカードを利用している」などの条件で絞り込み、最終的に2万名に対してETC案内専用のDMを送付したのである。このDMでは、これまで別々に申請しなければならなかったETCカードと車載器の申し込みを初めて一本化。1枚の用紙でETCカードと車載器を同時に申し込めるようにした。
 通常、 ETCカードの利用には年会費が500円かかるが、ゴールド会員向けにはこれを無料とすることで、同カードへの加入促進や、既存顧客がゴールド会員へのランクアップを検討する動機付けとしている。
 同社の ETCカード加入者は2002年末時点で10万名。2001年に高額ハイウエイカード利用停止が発表されるなどの影響もあって、個人・法人ともにETC利用は広まっている。吉中氏によると、今年の申込件数は前年比2倍で伸び続けており、今年度中に加入者数を現在の2倍、20万名にまで引き上げたい考えという。また、若い年齢層の利用を想定していたが、実際に調べてみると30代の利用が多く、その8割が男性であることが分かった。これを受け、同社では今後、「ファミリーを持つ男性」を主要ターゲットとしたマーケティングを行いたい考えだ。
 既存顧客に限り電話による申込受付も開始、ホームページでの受け付けは8月にスタートした。さらに、9月からは、オペレータに対する電話受付に加え、自動音声応答サービスでの受け付けも開始する計画だ。また、法人向けの施策として、クレジットカード1枚につきETCカードを最大99枚まで発行できる仕組みを2003年4月に整えた。7月には、申し込みから発行までを最短3日に短縮するなど、加入促進に向けた施策を矢継ぎ早に打ち出している。

UC  ETCカード UCゴールドカード

すでに申込者が10万名を超えた「 UC ETCカ ード」(写真左)/一般会員に送付したゴールドカードを案内するDM。メリットを数字で説明しお得感を印象付けた(写真右)

ゴールド会員の年齢制限を30歳から25歳へ引き下げ

 それではここからは、ETCカード以外の優良顧客化へ向けた施策を見てみよう。
 まず大きなところでは、これまで30歳以上だったゴールドカードの加入制限を25歳にまで引き下げ、若くても利用が見込まれる優良顧客の囲い込みを図る。
 このほか、会員誌、DM、eメール、Web会員組織などを活用するなどして、既存顧客の優良顧客化を図っている。ゴールドカードへの切り替えを案内するDMは、会員全員ではなく、利用実績に基づいたデータ分析で絞り込んだ顧客に対して送付する。今年7月上旬には利用実績などからセグメントした一般会員10万名にDMを送付した。DM制作上重視したのは、UCカードのオリジナル施策である「半年で30万円の利用があったら2,000円分のギフトカードをプレゼント」など、具体的にどれくらい「得」なのかを数字で示すことだ。年会費は1万円と高額なだけに、入会すればメリットがあることを強調することで顧客の気持ちを後押しする作りとした。8月上旬時点ですでに6,000名を超えるゴールドカードの申し込みがあり、同月末までに発信数の10%に当たる1万名の申し込みを見込む。
 吉中氏は、「インターネットの活用にはまだ取り組むべき課題は多い」と話すが、すでに多くの施策が実施されている。例えば、Web会員組織「アットユーネット!」の会員はすでに60万名を超えた。同会員向けのサイトではIDを一人ひとりに発行し、利用明細の確認がリアルタイムでできる。また、同社社員がトレンディなスポットである東京のお台場を実際に訪れて収集した情報を伝えたり、クーポン券の発行も行う。加えて、ポイントプログラム「UCにこにこプレゼント」のポイント確認やプレゼント応募、各種キャンペーン応募も可能なほか、オンライン・キャッシングや支払方法の変更もできる。
 ETCカードなど新しい発想から生まれた優良顧客化戦略。今後もこうしたユニークな戦略が次々と展開されていきそうだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2003年9月号の記事