コールセンターが営業活動を担当

(株)リクルート フロム エー

数多くの求人情報誌を手掛けるリクルートグループは、クライアントとのオペレーションの点で、従来とは異なる求人情報誌「タウンワーク」を発刊している。これにおけるコールセンターの役割はずばり“営業”である。

“ローカル・トゥ・ローカル”の情報誌を

 「フロム・エー」「とらばーゆ」「ビーイング」などの求人情報誌を数多く手掛けているリクルートグループ。その中で「フロム・エー」を発行する(株)リクルートフロム エーでは、新たな試みとして1998年11月より、地域密着型の求人情報誌「タウンワーク」の発刊に乗り出した。
 「タウンワーク」のコンセプトは“ローカル・トゥ・ローカル”。「フロム・エー」などは首都圏、関西圏、東海圏を中心とした求人情報誌であり、都心に位置する企業へのレスポンスは抜群であるものの、「千葉、埼玉といった都心近郊の求人ニーズに必ずしもフィットしない場合があった」と語るのは、同社センター統括室 室長金子正一氏だ。
 同氏は「フロム・エー」などに携わるかたわら、常にこの問題に頭を痛めていたという。その解決策のひとつとして発刊されたのが「タウンワーク」なのである。

「タウンワーク」

 「タウンワーク」は、フリー・ペーパーで、2002年5月現在、関東地区17版、関西地区12版、東海地区4版の計33版が発刊されており、全国のコンビニ、ファミリーレストラン、ゲームセンター、書店などに置かれている。
 同社の代名詞とも言える「フロム・エー」は、前述したように、首都圏、関西圏、東海圏を想定した求人情報誌であり、それら地域の求人ニーズに関しては多大な効果を上げているが、同社ではもっと狭い局地的なエリアでの求人に威力を発揮する媒体の必要性も感じていた。地域に深く根付いて、かつ掲載料も安価な媒体が、特に小規模な事業所を構えるクライアントから望まれていたのだ。こういったニーズによりきめ細かに応える媒体と して誕生したのが、「タウンワーク」なのである。98年当初は、千葉版、町田・相模原版の2誌が創刊され、その後発行地域を徐々に広げていった。
 「フロム・エー」の求人欄1コマの最低価格が5万円であるのに対して、「タウンワーク」は1万5,000円となっている。
 “ローカル・トゥ・ローカル”、かつ低コストでの利用を可能にする同誌の創刊は、クライアントのかゆいところに手が届く媒体の実現とともに、新しいビジネスモデルの構築にもつながった。

コールセンターを営業拠点に

 単純に考えれば、33版をカバーするには、地域ごとに営業所、相応の人数の営業担当者を配する必要性が生じてくる。つまり設備費や人件費がかさむことになるので、求人欄の値段を5万円より低く設定することは難しい。しかし同社は「タウンワーク」においては、前述のようにリーズナブルな価格での求人欄の提供を図った。そしてその実現のために、コールセンターを営業拠点として機能させ、営業活動に外回りの営業担当者を使わないというビジネスモデルを考案したのである。
 「フロム・エー」などの営業においては、営業担当者が、足を使って見込客を発掘し、クライアントを獲得する。そして広告掲載に際しては、直接、クライアントを訪ね、綿密な打ち合わせを行い、誌面作りにおけるノウハウを提供し、広告掲載後のアフターケアにも万全を尽くしている。これにより、掲載料は人件費等を加味すると、ある程度高く設定せざるを得ない。
 しかし、「タウンワーク」には、後述する代理店を除き、直接クライアント先に出向く“営業担当者”は存在しない。見込客へのアプローチから実際のクライアントとのやりとりまでを一手にコールセンターのオペレータが引き受けている。基本的に最初から最後までクライアントと対面することなく、主に、電話・FAXを通じて営業活動を行っているのだ。なお、「タウンワーク」のコールセンターは横浜にあり、196ブース、およそ230人のオペレータがこの業務に携わっている。
 こうした営業方法により、クライアントに対して、前述のような低コストでの求人欄の提供が可能になったわけだ。
 しかしコストが下がる分、クライアントの作業負担は「フロム・エー」などに比べると大きくなる。
 掲載広告の文面は所定の用紙にクライアント自身が記入し、FAXでコールセンターに送る。オペレータはその文面を校正し、表記等をチェックした後、掲載するという運びだ。求人欄にはイメージイラストの掲載も可能であるが、これもあらかじめ同社側が用意した中からクライアントが好みのものを選択する仕組みである。また、掲載誌のクライアントへの送付も特に行っておらず、同社側の徹底的な労力の軽減を実現している。

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「タウンワーク」のコールセンター(横浜)

代理店へのサポートもコールセンターで

 「タウンワーク」におけるオペレーションの流れは以上のようなものだが、一般的に考えてこのような営業は成り立つのか? といささか懐疑的な気持ちも拭えない。しかし、実際の「タウンワーク」に対するクライアントの満足度は総じて高い。関東地区に関して言えば、掲載クライアントの7割が、「効果があった」、「満足である」と答えている。これもひとえに、顧客ニーズに応えた同社の判断、ひいては同社ブランド力のなせる技であろう。
 また同社は、クライアントの効果測定に関して、2002年1月から開設した大阪・三田(さんだ)市のコールセンターに、専任のチームを置いた。その目的は、個別のクライアントに掲載の効果に応じた提案を行うことで、クライアントとの継続的な関係作りを推進することである。
 基本的に営業に外回りの営業担当者を介在させない「タウンワーク」ではあるが、クライアント側から「どうしても直接会いたい」といった要請があるなど、やはり“営業担当者”が必要な場面も出てくる。同社はこの問題を解決するために、1999年より同社直系の代理店に、2001年からは、それ以外の代理店にも営業を委託している。
 しかし、当初は代理店を介した営業活動を想定していなかったため、これら代理店での営業に対するサポート体制が整っていなかった。現状、代理店側では、受注登録や顧客履歴の確認はできないので、これらのサポートをコールセンターで行っている。が、早ければ8月中旬には代理店側からも自由に検索できるシステムを構築する予定で、より柔軟な営業活動が実現する見通しだ。

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「タウンワーク」


月刊『アイ・エム・プレス』2002年7月号の記事