新規見込客リストでディーラーを支援

ビー・エム・ダブリュー・ジャパン(株)

新規見込客データの約5割をインターネットから獲得

 1981年、ドイツBMW AGの100%出資子会社として設立されたビー・エム・ダブリュー・ジャパン(株)。同社が扱う商品は、現在オート・モービル(4輪車)、モーター・サイクル(2輪車)の2アイテム。また近々発売予定のコンパクトボディの4輪車「MINI」がこれに加わる予定だ。流通チャネルとしては、関東(東京・神奈川)に13の直営新車販売拠点と、全国に83のフランチャイズのディーラーをもつ。
 同社ではこれまで、DM、マス広告、アウトバウンド・テレマーケティング等により、毎年10万件もの新規見込客データを獲得、これを最寄りのディーラーに提供することで、各社の販売を支援してきた。かつては、このうち約8割のデータをDMによって集めていたが、1997年に自社のホームページを立ち上げてからは、インターネットによる資料請求が急増。これに加え、アウトバウンドのeメールも開始し、現在では新規見込客データの4〜5割をインターネット経由で獲得している(図表2)。

10-3 図表2

 一般に、アウトバウンドのeメールは、紙媒体のDMより低コストだと言われるが、初期投資や、ホームページの更新といった“維持”の部分にコストがかかるので、同社では単純にコストだけで考えるとDMとさほど変わらないのが現状だ。今後はいかにインターネットに要するコストを下げていくかが課題であるという。

「バーチャル・センター」を設立

 同社は2001年4月に、自社ホームページを新しい世界統一基準のCIに合わせ、デザインの刷新、コンテンツの充実などにより、さらに“BMWライクな”ページにリニューアルした。
 10月には、インターネット上への「バーチャル・センター」設立を中心としたホームページのアップ・グレードを行う。これは、同社が考える商品販売におけるインターネットの位置付けを具現化するものだ。具体的には、「顧客が商品に興味をもち、ショールームに出向いて情報を集めたり、試乗を行い、購入に至る」という購入プロセスのどの部分をインターネットに置き換えられるかという発想に基づく。検討の結果、同社が導き出した結論は、「商品を売ること」ではなく、「新規見込客の獲得」にインターネットを活用するということだ。
 “自動車”という商品の性格上、同社と顧客の関係は、販売の時点で完結するのではなく、その後のアフターケアやメンテナンスなど、One to Oneで“人”が介在する部分が必要になってくる。また、そもそも販売に至るまでに担当のセールスマンが付かないことはあり得ないという。このような理由から、同社ではディーラーの存在の重要性を認識しており、オンライン上で実現するのは「販促」による「新規見込客の獲得」が一番現実的だと考えたわけだ。
 これまで、同社はホームページ上においては、どの顧客に対しても一律のキャンペーンの告知をしたり、カタログを送付したりしてきたが、「バーチャル・センター」設立にともない、顧客とのインタラクティブ性を強化していく予定。これにより、実際の販促に役立つ「質の高い見込客データ」を獲得することを狙う。

ミニ

「MINI情報ページ」http-//www.mini.ne.jp/mini.html

「質の高い顧客データ」とは

 同社が考える「質の高い顧客データ」には2つの要素がある。
 ひとつ目は、顧客の基本属性と現在の自動車の保有状況。これにより「新規見込客」になり得るか否かのかなりの部分がわかるのだという。また車検がいつであるかも重要なデータのひとつ。このデータを把握することで、顧客の次の商品購入時期を予測することがある程度可能になる。こういったデータの収集・分析により、どのくらいの確率で同社製品を購入する可能性があるのかを割り出す「スコアリング」の作業ができるようになるのだ。
 2つ目は「顧客が希望することは何か」である。「バーチャル・センター」には、「カタログが欲しい」、「試乗がしたい」、「見積もりが欲しい」といった、“顧客が今何をしたいのか”、前述の“購入プロセスのどの位置にいるのか”を吸い上げるファンクションが用意されている。これらのデータの活用により、将来的には、在庫のマッチングをはじめとした、より効率の良い販売が期待できるわけだ。
 このように「バーチャル・センター」は、リアルのショールームでの活動をインターネット上で実現するものと言えるが、これはリアルのショールームの見込客をインターネットに移行させるのではなく、あくまでも新規の見込客を獲得するための場として位置付けられている。

“人”が介在する部分の重要性を強く認識

 同社が行っているこの他のディーラーへの支援には、ショールームで行われる同社商品の「週末の展示会」に関わるものがある。これについては同社自身が企画を立案し、必要なツールを作ってディーラーに提供している。また、「セールス・ラウンド」と呼ばれる、全国統一の展示会も月に1回以上開かれているが、これにも「週末の展示会」と同様の支援を行っている。「セールス・ラウンド」での1回の集客数はおよそ1万5,000組に及ぶ。
 これらのイベント展開に前述の見込客データの提供を加えると、同社のディーラー支援は各社の売上増にかなり貢献しているものと見られる。
 同社は、前述の通り、販売において“人”が介在する部分の重要性を強く認識していることから、ディーラーの繁栄こそが、同社の繁栄につながると見ており、今後もインターネットによる展開を含め、ディーラーを強力にサポートしていく考えだ。また、そのために、インターネットから得られる見込客データと既存のデータを統合し、見込客の履歴管理、行動管理を整理することで、同社、ディーラーともにさらに効率的な販促を実現することが、現在の課題であり、当面の目標であるということだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年10月号の記事