毎日の業務終了後にパフォーマンスを検証

ジョンソン・エンド・ジョンソン(株) ビジョンケアカンパニー

充実したコールセンターをもつビジョンケアカンパニー

 アメリカで誕生した世界最大のトータルヘルスケアカンパニー、ジョンソン・エンド・ジョンソン。現在では、世界51カ国に約190社の系列企業を有し、約175カ国で製品を販売している。
 その日本法人である、ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)は1961年創業、1978年に設立された。現在では、コンシューマーカンパニー、メディカルカンパニー、ビジョンケアカンパニーという3つの社内カンパニーを通じて、「人々の生命と健康」をテーマにより有益な製品の研究・開発に取り組んでいる。年間の売上高は988億円(2000年12月期)。
 ビジョンケアカンパニーでは、ディスポーザブル・コンタクトレンズの輸入・販売を手掛けている。世界ではじめて製品化に成功した、1週間連続装着が可能なディスポーザブル・コンタクトレンズ、アキュビューにはじまり、2週間装着が可能な2ウィーク・アキュビューとシュアビュー、毎日新しいコンタクトレンズを使用できるワンデー・アキュビュー、さらには遠近両用の2ウィーク アキュビュー・バイフォーカルなどを加えてラインナップを充実。品揃えとブランド力を強みに、飛躍的にシェアを伸ばしている。

コールセンターの主要業務

 ビジョンケアカンパニーのコールセンター業務は大きく分けて4つ。ひとつめは受注。全注文の5%程度をコールセンターで受けている。2つめは問い合わせへの対応。この業務のために同社ではレメディーのヘルプデスクソリューション、Action Request System(ARS)を採用している。これにより、問い合わせ履歴をデータベース化し、以前はオペレータが手作業で行っていたコンタクト履歴の検索を自動化することができた。同社では顧客からの1回の問い合わせに対し、コールセンターから折り返して連絡することを極力避け、その場で解決することを目標としている。そのためにオペレータが回答する範囲は拡大する傾向にあるが、ARSに数百のFAQを用意することで、個人によるむらのない、スピーディーな対応を実現している。FAQに当てはまらないイレギュラーな問い合わせに対しては、2名のチームリーダーが対応する。また、商品の配送状況に関する問合せに的確に答えるために、配送トラッキングシステムを利用している。これは、日本通運(株)に委託している配送状況をオンラインで確認するものである。
 3つめは、消費者への販売店紹介。販売店を通して購入していただく製品だけではなく、販売店の所在地、開店時間、サービス等も消費者に満足していただけるように、個々のニーズに合致した店舗の紹介を目指している。4つめは、テレセールス。営業部のサポートとして、新製品、新規のサービス、キャンペーンの案内を行なっている。

営業職員と同等の情報を提供

 前述の業務をこなすオペレータは15名。数名の社員と派遣社員から構成されている。オペレータには営業社員と同等の情報が提供される。新製品の発売が決まると、営業社員を対象にその製品についての研修が行われるが、営業社員への研修が終わると、オペレータに対しても同様の研修が行われる。これにより、得意先に対して新製品の告知がなされる時には、オペレータも営業社員と同様に、新製品に関する質問に答えられるよう、万全な準備が整っているというわけだ。
 また前述のように、オペレータには営業的な側面もあるため、市場を知るためにフィールドのセールスや得意先の訪問に同行させるようにしている。
 同コールセンターの回線数は46。エンドユーザーからの電話はすべて一旦、IVRを経由する仕組みになっている。このうちIVRで処理するものが65%。残りの35%の得意先、営業からの電話が直接オペレータにつながるようになっている。
 オペレータは席についての作業時間が長いので、同社では、オペレータの肉体的・精神的疲労に配慮した、仕事がやりやすい環境を整えることを心掛けている。具体的にはオペレータのスペースに対する配慮などが挙げられる。同社には社員ひとり当たりのスペースに規定があるが、オペレータのスペースはバックオフィスの社員に比べて若干狭い。そこで、それを補う工夫としてパソコンのディスプレイに液晶タイプのものを採用。空いたスペースを効率良く使うことができる。
 またオペレータがいつでも使用できる休憩室が用意されているほか、マッサージを利用することもできる。これらはオペレータの要望を同社が受け入れる形で実現したものだ。

毎日、業務終了後の夕礼でパフォーマンス検証

 同コールセンターは、新人オペレータのトレーニングに3〜4週間を費やしている。研修内容は、会社概要、製品知識、PC操作、テレコミュニケーション、発声発音練習、OJTといったもの。また、言い回し、会話の間、声の出し方等をトレーナーがチェックする、フォローアップ・トレーニングも定期的に行っている。毎年、年始めには、コールセンター業務目標を設定し、1年間全員がその目標達成に向けて業務にあったている。(図表6)。

08-4 図表6

 顧客満足(CS)の測定に関しては、クレーム発生率、Call Quality、電話放棄率、サービスレベル(10秒〈3コール〉以内に電話がとれる率:顧客が「待たされない」と感じるのが3コールまでという統計データによる)といったものを指標として設定している(図表7)。この指標を基に、1日の業務終了後、チームリーダーが気づいたことを合わせて、オペレータにフィードバックする夕礼を実施。その日に発生した問題はその日のうちに解決し、翌日はさらなる向上を目指すわけだ。図表7にある「顧客満足度調査」は年に1回、同社が外部に依頼しているものである。

08-4 図表7

 また、効率測定としては、1コール当たりの通話時間、作業時間、ひとり当りの応答数(1日7時間)などを指標に、チームリーダー、スーパーバイザーが数字を追っている(図表8)。通話時間に関しては、一概に長いのが好ましくないというわけではないが、「端的な応答は必要」という認識の基、極端に通話時間が長いオペレータには指導をしている。作業時間に関しても同様な指導を行っている。

08-4 図表8

 コールセンターのパフォーマンスのもうひとつの側面は、コールセンターに寄せられた声に対するオペレーターの感度の高さである。電話のかかってこない時間を利用して、ARS上にある他のオペレーターの問い合わせ履歴を確認し、状況の把握を自主的に行うことによって、常に電話内容の傾向を迅速につかみ、対応の準備をするよう心がけている。重複する問い合わせやクレームから、様々な不具合を、コールセンターが早期に発見することは少なくない。仮に不具合が発生したとしても、速やかに対応することが可能となる。
 このような“顧客への責任を第一に考える”同社の信条は、コールセンター内にも強く認識されており、同社と顧客を結ぶコールセンターの存在はますます重要なものになっている。


月刊『アイ・エム・プレス』2001年8月号の記事