余剰在庫を格安で提供する 「e-zaiko.com」を開設

いい在庫ドットコム(株)

付加機能として決済や物流、保険機能を提供

伊藤忠商事(株)、三井物産(株)、オリックス(株)、東京海上火災保険(株)の4杜は、加工食品、繊維、日用雑貨、建材、産業機械などの余剰在庫を取り引きする「いい在庫ドットコム(株)」を6月9日に設立。インターネットを利用したB to B E-マーケットプレイス「e-zaiko.com」を開設する。
 今年7月中旬からデモサイトでの運営をはじめ、9月1日から決済機能を含めた本格的な稼動に踏み切る。同社の資本金は4億9,000万円で、出資比率は伊藤忠商事と三井物産がそれぞれ35%、オリックスグループと東京海上火災グループがそれぞれ15%。
 「e-zaiko.com」は、各企業が抱える建材をはじめとする様々な商品の余剰在庫をインターネット上で紹介し、購入企業を募る在庫処理サイト。多種多様な分野の商品を取り引きするほか、付加機能として決済や物流、保険機能を提供する。商品を求める購入企業と、在庫を抱える販売企業に出会いの場を提供し、Eコマース(電子商取引)を利用して余剰在庫の解消に貢献していく。
 サイト上での取引形態は、購入企業と販売企業がサイト上で交渉するマッチングと、販売企業が出展した商品に、購入企業が値段をつけて交渉するオークションの2種類を予定している。販売企業は在庫商品の数量や希望販売価格をサイト上に登録。購入企業は希望商品や価格などをインプットし、諸条件が合えば取り引きが成立する。在庫商品の価格の目安は、商品により違いはあるが、基本的には製造原価程度をイメージしているという。また、サイト上での取引きは、社名を明かすことなく匿名で行なう。これは余剰在庫を抱えた企業が社会的な信用を失うケースがあることを配慮したもの。
 「e-zaiko.com」のメリットは、購入企業にとっては商品を安く迅速に調達でき、販売企業にとっては在庫を抱えることなく健全な経営を維持できること。在庫不足は顧客からの信用の失墜につながるため、企業は余剰在庫を抱えがちだ。しかしこれが倉庫費用などの多大な経費を生んでいるのも事実。同社では、「e-zaiko.com」によりこの問題の解消を図っていきたいとしている。
 サービス内容としては、在庫商品の検索が可能なコミュニテイ・データベース機能、広告宣伝機能、在庫商品の情報提供などのアフターサーピス機能を予定している。具体的な情報コンテンツについては、7月中旬のデモサイト開設に向けて現在検討中。

付加機能として決済、物流機能を用意

「e-zaiko.com」のような在庫処理サイトは、米国ではすでに98年から稼動しており、取引金額は年間2億ドルに上るという。代表的なサイトには建材や医療機材を対象品目とする「Tradeout」や、衣料や自動車などを対象品目とする「Ubarter」などがあり認知度も高まっているが、購入企業と販売企業の出会いの場を提供するにとどまっているサイトがほとんど。「e-zaiko.comm」では、米国の在庫処理サイトにはない付加機能として、信用調査や決済、物流機能を設け、信頼性の高さをアピールしていきたい考えだ。
 売買企業の信用調査や決済は、オリックスが担当する。在庫商品の取り引きは、ファクタリング(債権の買取り)、リース、割賦払い、エスクロー(代金の前払い)といった形態で行われるが、これらの取引リスクに関する保険業務を東京海上火災が手掛ける。また物流については伊藤忠商事と三井物産が物流受注システムを共同で構築。見積もりからオーダーまでを実現し、安価でなおかつタイムリーに商品を提供できる体制を整えることで、余剰在庫の取り引きに拍車をかける。
 同社は紹介手数料として取引金額の5%のほか、サイトへの商品掲載料として1件につき5,000円を受け取る。またケースによっては、オプションとして物流仲介料、決済仲介料、広告宣伝料などを徴収。これが同社の収入源となる。
 初年度は2,000社、3年後には1万社以上の利用を目標にしているほか、2年目からは海外からの購入企業も募集し、3年後には年間2,000億~3,000億円の取り引きを目指している。会員の獲得は、伊藤忠商事と三井物産において現在取り引きのある10万社を対象に、両社の営業担当者が宣伝活動を実施し、加入を呼びかける。サイトの開設に先がけて、すでに余剰在庫の処理については、同社の仲介により具体的な商談を求めている企業もあるという。なお、取扱商品についても市場に流通する全商品(危険物など法的な規制のある物以外)を対象に窓口を広げていく。
 現在、日本国内における売れ残りや過剰生産などで企業が抱える余剰在庫の処理方法は、廃棄処分処理事業者に有償で廃棄を委託するか、企業自らが労力をかけて購入企業を探すほかなく、その取引額は2003年には3兆円を超えると推定されている。同社の狙いはEコマースを活用して、より有効な在庫処分を可能にすることだ。
 今後の展開について、同社代表取締役社長に就任した石塚秀俊氏は「現在、在庫処分に対するニーズは非常に高まっているので、会員数は順調に伸びると思います。サイト運営を迅速に開始して、在庫市場におけるシェアを拡大していけば、ビッグ・ビジネスになる可能性が高いと考えています」と「e-zaiko.com」の将来性に自信を見せている。

【図表1】いい在庫.comのしくみ

月刊『アイ・エム・プレス』2000年7月号の記事