代理店と顧客をトータルにサポート

大東京火災海上保険(株)

長年の経験と実績を基にカスタマーサービスセンターを開設

 大東京火災海上保険(株)は、1918年の創業以来、大衆保険の先駆者として時代を先取りし、自動車保険への積極的な取り組みを推進。さらに、関連サービスや新商品の開発に力を注ぎ、現在の基盤を作り上げてきた。
 同社では、1988年11月、業界初のインハウス・コールセンターを開設し、全国から24時間・365日フリーダイヤルで事故受付を行う「安心ダイヤル」をスタート。その後、安心ダイヤルで培ったノウハウをベースに、代理店の営業支援ができないかと考えた同社では、1991年に既存のお客様を対象としたアウトバウンド業務を行うカスタマーセンター(CC)を開設した。ここでの主な業務は、保険に関するニーズ調査を行い、調査結果を基に、見込度が高いと思われる顧客情報をフィードバックすること。あらかじめターゲットを絞り込むことで、効率的かつ効果的にアプローチできる体制を整えた。さらに1996年には、インバウンド機能を加えた統合型コールセンターとしてこれを整備・拡充。1999年4月にはお客様の総合窓口機能を追加することにより、代理店の営業活動と顧客の拡大を幅広くサポートする体制を整えた。またこれを機に、サービス・センターからカスタマーサービスセンター(CSC)へと名称を変更した。

役割を明確にし、新規顧客開拓の効率をアップ

 CSCの業務内容は「新規顧客開拓支援」と「既存顧客の管理支援」の2つに分けられる。
 これをさらに詳しく見ると、前者には「集団・団体開拓支援」「通信販売支援」「カードオーソリ・新規初回口座振替」「見込客のフォローアップ支援」の4つの業務がある。「集団・団体開拓支援」では、集団や法人・団体のお客様からの問い合わせを受け付けるほか、アウトバウンドでニーズや見込度などを把握して的確な情報を代理店にフィードバック。「通信販売支援」では、代理店がアプローチしたお客様からの資料請求、見積依頼、契約申込などに対して、電話や郵便、Eメールで対応。「カードオーソリ・新規初回口振支援」では、代理店、またはお客様からの電話を受け、クレジットカードの有効性の確認、および新規初回口座振替の仮登録を実施。「見込客のフォローアップ支援」では、他社の保険に加入しており満期を迎えるお客様に電話と郵便でアプローチし、契約の切り替えを促している。
 一方、後者には「異動手続代行サービス」「アップセリング支援」「クロスセリング支援・顧客CS調査」の3つの業務がある。「異動手続代行サービス」では、自動車保険の車両入替や条件変更などの受け付けとそれにともなう保険料の計算や承認請求書の作成、さらには保険料の徴収から計上までの手続きを実施。「アップセリング支援」では、代理店のPR活動に基づき、人身傷害中途付帯などの受付窓口として契約者に直接対応し、契約内容の拡大や単価アップをサポート。「クロスセリング支援・顧客CS調査」では、既存顧客へのDM発送やフォロー・コールなどによるクロスセリングを促進。さらに、アウトバウンドによる顧客満足度の把握やアンケート調査の結果分析などを行い、営業活動を支援している。
 ここで、傷害保険の代理店介在型通信販売を例に挙げると、商品のPRから成約までの流れは以下の通りである。まず、同社と契約を結んだ代理店がチラシなどを利用してお客様に商品のPRを行い、それを見たお客様からの資料請求を代理店に代わってCSCで受け付け、申込書が同封された資料一式を郵送する。その後、契約が成立すると、CSCが代理店の代行をした部分の手数料を差し引いた金額を代理店へマージンとして支払うというもの。どこの代理店を経由してきたお客様かを見分けるために、資料請求受付の際、チラシ等に明記されている資料番号を必ず聞くことになっており、資料番号がわからない限りは、話しが先に進めないオペレーション・フローを採用している。
 また、同社の自動車保険「スーパーSAPⅡ」も傷害保険と同様で、代理店がアプローチしたお客様からの見積作成依頼の受け付けから作成、送付までをCSCが行う。その後、現在加入している自動車保険の満期日の約2週間前にアウトバウンドで再見積を実施。その電話で成約することも可能だ。お客様がクレジットカードでの支払いを希望した場合には、即時にその有効性を確認することもできる。すでにお気づきの通り、傷害保険と自動車保険とでは成約までのプロセスが異なることは言うまでもないが、大きな違いは傷害保険は郵送で成約するのに対して、自動車保険は電話で成約ができること。ただし、金融監督庁の規制によりペーパーレスは禁止されているので、後日、契約者の氏名や契約内容などを印字した申込書を送付し、捺印のうえ2週間以内に返送してもらう仕組みを採用。その後の書類チェックや申込書計上なども、すべてCSCが行っている。
 このように同社では、煩雑な事務処理はCSCで代行し、代理店は新規顧客の開拓を行うというように役割を明確化。代理店の事務処理業務を軽減することで、新規顧客の開拓に精力的に取り組める環境を創出している。同社ではCSCを、代理店支援を担う基幹と位置付けている。

カスタマーサービスセンターのオペレーション風景

カスタマーサービスセンターのオペレーション風景

1日平均3,000件の顧客の業務を処理

 CSCは、東京・練馬区の住宅地の一角にあるオフィスビル内にある。総席数は200席。約250人のオペレータがシフトを組んで勤務している。
 アウトバウンド業務には50席を用意。自動車保険の見積を実施したお客様へのフォロー・コールや、代理店に代わってアンケート調査を行い、お客様の潜在ニーズや契約の見込度など販売促進に役立つ情報を収集するためのテレホン・インタビューを実施している。実施時間帯は、月曜日から土曜日の午前9時から午後5時までとなっており、日・祝日は行っていない。発信件数は、平均3,000件/日。これらを支えるバックオフィスでは、見積書をはじめとする各種書類の出力、封入、発送から書類受付、確認、保管などを行っており、1日平均3,000件の顧客の業務を処理している。
 一方、インバウンド業務には、新規顧客開拓支援に120席、既存顧客の管理支援に30席の合計150席を用意。受け付けには、フリーダイヤル約250回線を導入している。受付時間は月曜から金曜日の午前9時から午後8時と土曜日の午前9時から午後5時まで。日・祝日は休業となっているが、時間外に受け付けたコールは、自動的に安心ダイヤルに転送。CSCだけで1日平均2,000コールを受け付けている。

インターネットでの見積もり受付にも代理店が介在

 同社では1996年4月にホームページを開設。翌年の1999年7月より、自動車保険の見積受付を開始した。同社の見積もり用Webサイトに代理店がリンクを張るかたちで見積もりを実施。現在、同社と代理店契約を結んでいる通信販売会社の2〜3割がリンクを張っているという。代理店が同社の許可を得ずに見積もり用Webサイトとリンクを張っても、見積もり金額の算出はできない。また、必ず代理店を介するため、同社のホームページから直接見積もり画面にアクセスできない仕組になっている。ホームページで受け付ける見積依頼件数は、1日の総件数の約2割となっており、多い日にはその割合は約5割にまで上る。
 規制緩和の進行にともない、通信販売の可能性が拡大しているとはいうものの、同社では、あくまでも代理店が主体となって営業活動を実施し、これを支援する立場からダイレクト・インシュアランスは行わない方針を掲げている。
 前述の通り、CSCは代理店支援を担う基幹である。今後CSCでは、新たな販売スキーム、および新商品の開発とそれにともなう顧客データベースの高度化、オペレータのスキルアップ、適性配置などによる運用の効率化など、コールセンターにおける課題に取り組みながら、代理店の営業支援の強化と顧客満足度の向上に努めていきたいとしている。

大東京火災海上保険(株)のホームページ画面(URL:http://www.daitokyo.co.jp/)

大東京火災海上保険(株)のホームページ画面(URL:http://www.daitokyo.co.jp/)


月刊『アイ・エム・プレス』2000年5月号の記事