営業支援のため電話フォロー活動を展開

第一生命保険相互会社

創業100周年に向けて中期経営計画を策定

 第一生命保険相互会社は、創業100周年を迎える2002年を控え、従来からの基本方針である「社会からの信頼確保」、「最大のお客様満足の創造」、「職員・会社の活性化の実現」に向けて、2000年度から2002年度までの中期経営計画を策定した。同計画では「収益力、競争力の向上」、「お客様満足の向上」、「コスト効率の向上」の3つを中期経営目標として掲げ、これを個別の具体的な経営方針の前提、ならびに事業運営における基本的な判断指針と位置づけている。
 経営方針のなかで注目されるのは、「生涯設計」の推進。これは就学、就職、結婚、子供の誕生、子供の独立、退職、老後というライフステージをトータルにカバーし、また病気・ケガ、介護などのさまざまなリスクや不安を解消するため、「良質な提案」と「良質な商品」に基づく「良質なサービス」を、一生涯にわたってお客様に提供することを目的にしている。
 「良質な商品」については、顧客ひとりひとりのニーズにあった「備える」「貯める」「殖やす」をテーマに商品開発を強化し、適正な価格で提供していく。現在、好評を得ている定期付終身保険「堂々人生」(99年10月発売)は、3月現在で契約者45万件を突破。3大成人病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)になった場合、それ以降の保険料払い込みが免除される特約「ハイバリュープラン」や、顧客単位で保険金額を合算して高額割引を判定する「とくとく割引サービス」、預けている資金を引き出すことなく、手数料なしで投資信託の購入が可能となる「資金移動サービス」が特徴で、これまでの保険以上にライフステージに合わせたサービスを充実させている。

第一生命保険相互会社のホームページ画面(URL:http://www.dai-ichi-life.co.jp/index0.html)

第一生命保険相互会社のホームページ画面(URL:http://www.dai-ichi-life.co.jp/index0.html)

新携帯端末「Nav!t」の投入で、効率的な営業活動を徹底

 2000年4月現在、同社では全国112支社、約2,000支部のもとに5万3,000人の営業職員を抱えている。これらの営業職員は99%女性で、平均年齢は42歳前後。同社ではこれらの営業職員に対する支援策として、顧客の一生涯の生活設計をサポートする「生涯設計プラン」と、提案の基礎となる「生涯設計読本(ヒントとアドバイスのガイドブック)」を配布するとともに、1999年5月からは新携帯端末「Nav!t」を貸与することで、各営業職員による最適な商品の提案や、営業情報の管理、顧客サービスを支援している。
 「Nav!t」は①保障設計、生涯設計作成機能、②見込客データベース、③既契約者の契約情報、④テレ・アポ情報、⑤その他(お客様とのコミュニケーション・ツールとしての占いなど娯楽的要素、契約の動きなど)などのコンテンツから構成されており、個々の営業職員が独自に作成する見込客データベース以外は、本社サイドでタイムリーなメンテナンスが行われる。
 特に見込客情報については、何人の契約者を獲得し、どのお客様を訪問したかなどの、営業活動のバロメータとなる情報を本社サイドで吸い上げ、営業支援につなげる方針。このほか、販促面での支援策としては、年に数回、マス媒体を駆使したキャンペーンを展開。単に営業職員を側面から支援するのみならず、キャンペーンを通して見込客情報を収集することにより、以降のコンサルティング・セールスに結びつけるのが狙いだ。

ポイントサービス「ドリームキングダム」誕生

 同社ではこれまでも、顧客に対して「生涯設計プラン」による提案や、「バトンタッチプラン」などの商品を開発してきたが、1999年4月にはお客様の生涯設計をさらに充実させる目的から、「生涯設計ドリームパッケージ」を開発。たとえば同年10月からは、生命保険や特約をこれまでの「ご契約単位」から「お客様単位」にすることで、取引量に応じたハイグレードなサービス(「とくとく割引サービス」や「資金移動サービス」)などを提供している。
 また、今年4月10日からは、契約加入後1年ごとに20ポイント、加入保険金額100万円ごとに10ポイントが貯まるポイント・システム「ドリームキングダム」も開始。蓄積ポイントに応じて、結婚、子供の誕生、入学など家族のライフイベントに合わせたライフサイクルプレゼントを実施している。営業支援面においても、このシステムを利用して新規顧客獲得を促進するとともに、顧客の維持を図っている。
 同社では、単に顧客を開拓するだけではなく、顧客の維持にも力を入れており、たとえば、既存契約への特約の付加や名義変更といったアフターフォローにも営業ポイントを付与。逆にアフターフォローを評価するシステムを採用している。 
 また、昨年4月からは東京23区内、同年10月からは全国の担当営業職員が退社した顧客に対して、電話によるフォロー活動を展開している。これは契約者へのアフターサービス拡充の一環で、営業職員が退社した顧客の利便性の向上とフォロー活動が目的。その背景には①フェイス・トゥー・フェイスによる訪問営業の効率悪化などにともなう、顧客との接点強化の必要性、②新規営業職員の訪問先確保難、③担当営業職員が退職した顧客へのフォロー体制の強化などが挙げられる。
 同社では1996年からテレマーケティング用ソフト開発に着手し、全国の支社に順次担当者を配置して、取扱者退社契約に対するアフターフォローと営業支援を実施。1997年度からはアフターフォロー活動を拡充するためにマーケットレディ(電話・渉外業務を担うパート社員)の支社配置も行っている。

東京本社にコミュニケーションデスクを設置

 また、それまでの各支社におけるテレマーケティングの実績、および開発・研究の成果をもとに、1998年12月、新しい営業情報発信基地として「東京コミュニケーションデスク」(東京・田端アスカタワー)を本社部門の1セクションとして設立した。同デスクは、当初は50席でスタートしたが、1999年10月、全国展開を機に150席を増設。合計200席体制としている。このうち50席はテレマーケティング・サービス・エージェンシーにアウトソーシング。残りの150席はマルチ・ベンダー方式によるインハウスセンターとして、5社に運営を委託している。
 コールセンター・スタッフについては、オペレータ、スーパーバイザーともに委託先からの派遣を受けており、各社とも定員の1.5〜2倍の余裕をもって要員確保している模様だ。現在、自社スタッフは、支社などにおけるテレマーケティング経験者数名のみを配置しており、詳細情報の問い合わせや苦情などに対応している。
 コールセンター・システムについては、ビジュアル・ベーシックにより開発した自社テレマーケティング用ソフトに加え、アウトソーシング先のコールセンターでは、プレディクティブ・ダイヤリング・システムも活用している。1ヶ月当たりのコール数は約50万件。発信先のリストは、取引量、契約年数などを指標に本社サイドで選定している。基本的には担当営業職員が退職したすべての契約者にコールするのが前提だ。
 コールセンターにおける具体的な活動内容は、①お客様へのフォローコール(契約継続のお礼と営業職員の訪問確認)、②訪問の許諾(フォロー活動訪問のための在宅曜日・時間帯の確認)、③コンサルティング(専門スタッフによる保障見直し、新商品などの案内)、④アポイント情報や各種相談・説明・手続き情報の支社・支部への配信、⑤電話折衝履歴の蓄積(データベースの充実)の5点。その業務フローは図表3の通りである。
 また、同デスクからのコールにより、何らかの訪問アポイントが取れた場合は、確実に訪問したか確認するため、3週間後に再度電話するシステムを開発している。これは訪問の遅れや洩れを防ぐためのものである。電話の発信時間帯は平日の10時30分〜19時。なお、アポイント情報は各営業職員に割り振られる仕組みだ。

第一生命の「東京コミュニケーションデスク」

第一生命の「東京コミュニケーションデスク」

確実なフォロー活動で質の高いサービスを提供

 同デスクの営業支援面での効果について、同社ネットワーク推進部では、「まだ評価を固められる段階ではない」としつつ、「東京コミュニケーションデスクのこの1年の成果は、コスト面を含め、今後さらなる展開を図るうえで一定の評価ができる」とみている。
 ちなみに同社では、コールセンター開設の効果を、顧客維持と既存顧客からの新規契約獲得の2つの指標から捉えている。前者については、電話フォロー実施の数カ月後の契約維持率を電話フォローができなかった顧客と比較、後者については、電話フォローの結果としての新規契約獲得や保障の見直しなどの発生状況を調べているが、いずれにおいても顕著な効果が上がっているという。
 一方、顧客からの反応も上々で、①長らくフォローが途絶えていた契約者も好意的、②営業職員の訪問活動に展開した事例も多く、新規の契約件数も予想以上を達成、③電話による契約の維持効果の確認などの声が挙がっている。
 最後に今後の目標としては、ひとりひとりの顧客に対して「一生涯のパートナー」としての支持が得られるよう、確実なフォロー活動による、質の高いサービスを提供し続けていくという。その実現に向けて、2000年度については、5月に「大阪コミュニケーションデスク」(50席)を開設するとともに、現在は社内LANを使って各支部に送っているテレアポ情報を営業職員の携帯端末に配信することで、よりスピーディなフォロー体制を確立。また、既存の契約者の中から年齢等に応じてターゲットを抽出、特定の商品を薦める新たなコール・メニューの拡充や現場との連携体制の強化なども推進していく。
 なお、これまで顧客情報は営業職員の個人的な管理がメインであったが、今後はお客様との接触履歴を会社として顧客データベースに構築。アフターサービスと営業活動の一体化を促進すると同時に、お客様の利便性も高めていく意向だ。

【図表3】テレアポ情報活用の流れ(概要)

月刊『アイ・エム・プレス』2000年5月号の記事