マイレッジ会員を対象にさらに顧客を組織化

(株)日本エアシステム

会員だけに“特別”の旅を提供

 (株)日本エアシステムは、自社の「JASカード」の会員を対象に、新たな顧客の囲い込みに乗り出した。
 同社はJASマイレッジサービスとして、クレジット機能の付いた「JASカード」と、クレジット機能のない「スカイメリット」の2つのカードを発行しており、マイレッジは、本業の部分での安定した顧客の確保、つまりリピーターの促進に効果を発揮していると評価している。
 同社ではこうした会員の中から、さらに利用頻度の高い会員を絞り込み、従来以上に密接な関係を築くために、1999年7月1日から「JAS旅倶楽部」をスタートさせた。
 「JAS旅倶楽部」は会員向けに一般の旅行会社とはひと味違う、オリジナル性に富んだ“特選の旅”を提供する旅の会。顧客のニーズを満たす価値ある旅行の提供により、ひとりひとりの顧客とのつながりを深め、ロイヤルティの高い固定客を増やすのが同社の狙いだ。
 顧客囲い込みの切り口として“旅”に着目したのは、同社の路線網を最大に活かし、航空会社ならではのサービスが実施できることと、旅行商品を企画する子会社、JAS商事(株)のノウハウを活用できること、さらにこれからの高齢化社会を睨んで、旅行を通した心のケア、たとえば退職者などに、仕事とはまた違った喜びやいろいろな人との巡り会いを提供することができるとの観点から。
 「JASカード」と「スカイメリット」の会員数は、合わせて179万人。「JAS旅倶楽部」開始に際しては、まずはこの中から、利用頻度が高く、首都圏在住の45歳以上の会員を抽出し、ダイレクトメールによる案内と申込用紙を送付した。
 このほか、入会案内のパンフレットを機内、空港や各都市にある同社カウンターに設置。さらに旅行好きの熟年世代を購読者層にもつ「ふりぃすたいる」「毎日が発見」「旅の手帳」といった雑誌にも広告を掲載。6月29日には東京、神奈川地区で新聞の折り込み広告を実施した。
 入会希望者は、専用の申込書を取り寄せ、記入・捺印の上、事務局宛に送付して申し込む。「JASカード」会員であることが入会条件となるため、新規顧客の場合は「JAS旅倶楽部」と同時に「JASカード」への申し込みが、「スカイメリット」会員の場合には「JASカード」への移行が必要となる。熟年世代をターゲットにしているが、特に年齢制限は設けていない。また、家族会員の登録を受け付け、家族旅行にも活用できるようにした。
 1999年7月9日現在、すでに本会員だけで約2,000人、家族会員を含めると5,000人ほどの会員が集まっている。「JASカード」会員では男性会員の比率が高いが、「JAS旅倶楽部」の場合には男女比はほぼ半々だという。

1999年10月から2000年3月までの旅行プランが掲載された「旅の暦」。すでに会員に送られている

1999年10月から2000年3月までの旅行プランが掲載された「旅の暦」。すでに会員に送られている

航空会社ならではの特典を用意

 特典として、会員には向こう半年間の旅のプランを記載した「旅の暦」の提供、JAS国内線任意区間搭乗優待証(50%割引)を年間2枚提供、空港内レインボーラウンジ利用券を年間4枚提供、JAS商事(株)が企画する旅行商品“JASナイスウイング”を7%割引、JASカレンダーの提供、機内誌「アルカス」を毎月送付など、航空会社ならではのサービスを用意した。
 核となる旅行は全コース添乗員付きのグループ・ツアーである。グループ・ツアーとは言え、定員を10〜20名程度の少人数に抑え、出発日を固定して企画されたきめ細かなプラン。趣味や嗜好の多様化を考慮し、ゆったりとした日程が組まれている。現在、「紅葉とお花見」「京都・奈良」「秘湯めぐり」「味覚と地酒」「街道を歩く」「趣味の陶芸」「離島・岬めぐり」「祭り・イベント」「歴史・伝統芸能を訪ねる」「2泊〜6泊の滞在型」「海外の旅」の11テーマごとに、毎月、異なる旅行プランが、1999年10月から2000年の3月分まで設定されている。基本的には、半年前に「旅の暦」を、3カ月前に詳細を記載したパンフレットを会員に送付していく方針。
 年会費は、将来的には6,000円を想定しているが、2000年の6月までは組織運営を軌道に乗せる助走期間と考え、会費は徴収しない。
 「JAS旅倶楽部」の運営を担うのは、同社の国内事業本部とJAS商事(株)、それに組織化に当たって社内に新設した旅倶楽部事務局である。会員募集に関わる申込受付、問い合わせ対応、会員データの管理といった実際の業務を旅倶楽部事務局が、旅行商品の企画をJAS商事(株)が、全体のとりまとめを国内事業本部がそれぞれ担当している。
 旅倶楽部事務局への問い合わせは一般加入回線で、旅行の予約はJAS商事(株)がフリーダイヤルで受け付ける。ただし、フリーダイヤルのオープンは7月21日から。JAS商事(株)は旅行商品のホールセラーであり、その販売は基本的に旅行代理店に委託しているため、これまで顧客との接点がほとんどなかった。しかし、これからは「JAS旅倶楽部」を通じて顧客情報が得られ、それを基に“JASナイスウイング”の強化を図ることもできるわけだ。

機内や同社のカウンターに置かれている「JAS旅倶楽部」入会案内のパンフレット

機内や同社のカウンターに置かれている「JAS旅倶楽部」入会案内のパンフレット

 いわゆる“旅の会”はさまざまあるが、中には一度その会社を利用すると意識しないままに自動的に会員となるものもあり、ロイヤルティの向上に必ずしも結びついていないケースも多い。だが、同社では「JAS旅倶楽部」をそうした受け身的な組織ではなく、もっと能動的な会員組織にしたいと考えている。たとえば、ひとつの旅行の参加者同士が親睦を深め、次には誘い合ってほかの旅行に参加するといった自発的なコミュニケーションが生まれ、それが輪になって広がれば理想的。そのため、目標会員数も初年度1万人、将来的にも5万人程度にとどめ、双方向の情報交流に力を入れていく方針。
 将来的には、会員参加によるイベントや、旅倶楽部のスタッフが会員に同行する旅行なども企画したいとしている。
 また、「アルカス」の一部に旅倶楽部の専用ページを作り、会員とのコミュニケーションの場として活用していきたいと考えており、ゆくゆくは会員向けの独立した機関誌を作成する計画。
 10月からの旅行開始を目前に控え、会員の期待が集まる中、どれだけ質が高く、価格的にも満足のいく旅行を提供できるかが当面の大きな課題。そこで同社では、第1回目の「旅の暦」送付時に、興味をもった旅行やテーマ、そのほかどのようなテーマに興味があるかなどを問うアンケートハガキを同封。今後も顧客ニーズにかなう商品の開発に向けて、随時顧客からの情報収集を行っていく。そして「JAS旅倶楽部」をマイレッジの延長線上にあるものではなく、一歩進めた組織として育てていく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年8月号の記事