通販はユーザーのチャネル選択のひとつ

オムロンツーフォーサービス(株)

既存販売ルートをカバー

 オムロンツーフォーサービス(株)は、制御機器の国内市場の約40%を占めるトップメーカー、オムロン(株)の子会社。小口ユーザーを対象としたB to Bダイレクトマーケティング事業「ツーフォーサービス」を展開している。
 オムロン(株)の販売ルートはその約9割が特約店経由。しかし、こうした特約店経由の販売では、大口で信用のあるユーザーにサービスが集中し、小口ユーザーへの対応がなおざりになりがちだ。しかも、緊急納品や時間外受注などのきめ細かい対応は難しい。
 そこで、同社では小口ユーザー対応策として、会員制の通販を開始した。これは同社が以前から営業部隊の販促支援の一環として行っていたダイレクトマーケティングを発展させたかたち。1994年8月にオムロンツーフォーサービス(株)として分社化。同年12月から営業を開始した。
 「ツーフォーサービス」の名称は必要な商品を24時間以内に届けるというコンセプトから生まれた。会員登録を行うと、会員番号とカタログが送られてくる。会員がカタログを見て、注文すると、同社の受注センターから配送センターに情報が流れ、翌日、会員に商品が届けられる仕組みだ。
 開始当初は、オムロン(株)が既存顧客に情報提供の一環として年4回送付するダイレクトメールを通して会員を募集。カタログ「ベスト」で、関東甲信越地域を中心にオムロン製品を販売し、2年間で会員数を1万4,500件に伸ばした。
 さらに1997年4月からは、メーカー30社とタイアップしてオムロン製品と競合しない他社製品の取り扱いも開始。これを機にサービスを本格化させ、エリアを全国に拡大するとともに、新カタログ「Just Parts」を創刊した。同時にダイレクトメールに加えて、インダストリアル系の専門雑誌への会員募集広告の掲載を開始し、1年間で2万件の新規会員を獲得。1999年3月末現在の会員数は5万1,000件となっている。
 「Just Parts」(A5判、約700ページ)は年1回発行で、初回は3万5,000部、1998年6月には5万部と現在までに第2版まで発行。第3版となる次回1999年版は、10万部の発行を予定している。オムロンの制御機器1万仕様、配線アクセサリ、盤用機材などの他社製品3,000仕様のほかに、教育関連商品やエコロジー関連商品、事務機・OAサプライと取扱商品の幅は広い。一部製品への名入れや製品の加工も請け負っている。
 同社ではカタログ以外にも、会員向けに年3~4回ダイレクトメールを発送し、新製品など、カタログに掲載されていない商品を案内している。

カタログ「Just Parts」は年1回発行。ダイレクトメールは年3?4回の割合で会員に送られる カタログ「Just Parts」は年1回発行。ダイレクトメールは年3?4回の割合で会員に送られる

カタログ「Just Parts」は年1回発行。ダイレクトメールは年3?4回の割合で会員に送られる

カタログを見て製品を選び、ホームページ(URL:http://www.omron24.co.jp)から注文することもできる

カタログを見て製品を選び、ホームページ(URL:http://www.omron24.co.jp)から注文することもできる

ユーザーのために選択肢を充実

 同社と同様の製品を取り扱い、欧州で1,300億円の売り上げを誇る英国のRSコンポーネンツをはじめ、国内外の企業がこの分野に進出してくる中で、競争激化は避けられない状況。同社はこうした分野の通販は確立されたものではなく、何がユーザーから支持されるかが明確になっていないと見ている。そのため同社では、対面営業と異なるサービスの価値が価格にあるのか、デリバリーか、あるいは取引条件か、注文のしやすさなのかといったことを、ビジネスを展開する中で見極め、製造に携わるユーザーにどれだけ役立てるか、つまり、最新のテクノロジーを駆使してどこまでサービスを提供できるかを追求していく方針である。
 製品案内に活用している媒体は「Just Parts」とダイレクトメールだけだが、受注や配送、支払いの方法にはさまざまな選択肢を取り揃えている。
 たとえば、新規会員登録と登録内容の変更はFAXとインターネットで受け付け、注文はFAXと電話とインターネットで受け付けている。FAXはフリーダイヤルで、受付時間は営業日の午前9時から午後6時まで。午後6時以降のものは、翌営業日9時の受注扱いになる。電話は一般加入回線で、受付時間は営業日の午前9時から午後6時まで、専任の電話対応スタッフ5名が対応に当たっている。インターネットのホームページは1998年5月に開設し、6月からWeb上での受注を開始した。ホームページ開設時には、カタログとダイレクトメール、広告で告知したほか、ヤフーなどいくつかのサイトでバナー広告を打っている。受注数は、FAX50%、電話45%、インターネット5%の割合。
 オムロンの制御機器の配送は、緊急度に応じて、午後5時までの受注分を翌日配達する「標準サービス」、午後6時までの受注分を翌日午前10時までに届ける「緊急サービス」(地区限定、有料)、午後3時までの受注分を当日届ける「即日サービス」(東京23区限定、有料)の3パターンを用意。これ以外の商品については、午前中の受注分を翌日配送している。このほか登録場所以外に商品を届ける「送り先指定サービス」、新幹線の主要駅や同社秋葉原オフィスでの「即日お引き取りサービス」も用意。また要望に応じて海外配送も可能だ。
 支払い方法は、代引き、銀行振込、口座引き落としのほか、各種クレジットカードも利用できる。さらに現在、コンビニでの振込対応を検討中。
 このほか会員特典として、毎月24日を感謝デーとしてFAX注文の場合に限り5%を還元。さらにポイント制度を導入し、利用頻度に応じてポイントを加算。ポイント数により受付時間の優遇やサービス料の割引、締め日に合わせた請求などの特典が受けられる。また『日経ビジネス』『週刊ダイヤモンド』などの年間定期購読が格安になるなどの特典もある。
 オムロン(株)本体、特約店ともに土・日曜日は休業だが、同社では1997年9月から土曜日の午前中の営業を開始し、1998年からはゴールデンウィーク中やお盆の間にも営業日を設け、ユーザーの緊急時に備えている。

特約店との連携を推進

 B to B事業は特約店を通した既存販売ルートと競合する側面をもっている。しかし、同社では「ツーフォーサービス」をオムロン特約店のひとつと位置付けており、既存特約店と連携し、補完し合う関係を築いていく考えだ。
 オムロン(株)は、もともと同社が所持していたユーザーのデータベースに基づき、特約店に情報を提供してきたという経緯もあり、特約店との協力体制を組む下地はできている。
 会員の中には既存特約店の顧客である大手企業の研究・開発部門も含まれているが、ユーザー側が緊急時には「ツーフォーサービス」、通常は既存ルートと使い分けているのが現状。このほか「ツーフォーサービス」の利用が多い電気工事業、研究機関、教育機関は小口、あるいは緊急の需要が主体で、そもそも特約店のターゲットからは外れている。
 「ツーフォーサービス」によって特約店にどのような具体的なメリットを提供していくかは今後の課題には違いないが、スピード納品が望まれる小口購入に関しては、これからは特約店自体が「ツーフォーサービス」の会員として登録をするケースも増えてくるものと同社では見ている。
 「ツーフォーサービス」の売上高は1996年度2.6億円、1997年度5.2億円、1998年度5.3億円。同社では1999年度には10億円(会員数10万件)、2001年には100億円(会員数30万件)を目指す。当面は潜在顧客に働きかけ、新規会員拡大に力を入れていくが、今後は徐々にリピート率のアップにマーケティングの重点を移していく方針だ。
 さらに、これまでは綿密な打ち合わせなど、対面の必要が生じるという理由からカスタム・オーダーは行ってこなかったが、インターネットを駆使することによって実際に出向かなくても打ち合わせができるような仕組みが構築でき次第、カスタマイズ製品の受注にも取り組んでいきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年6月号の記事