テレマーケティング会社のノウハウを業務改革に活用

NTTテレマーケティング(株)

セールス・プロセスの標準化を実現

 NTTテレマーケティング(株)は、テレマーケティングの受発信、インハウス・コールセンターの課題解決や立ち上げのコンサルティング業務、コールセンターへの人材派遣などを行っている大手テレマーケティング・サービス・エージェンシーである。
 数年前からセールス・プロセスの標準化が経営基盤の強化につながるという観点から、井関雅夫社長直轄でセールス部門を中心とした業務改革を推進するプロジェクトが結成され、以降、その実現に向けて、セールス担当者はもとより、セールス・マネージャー、関連部門社員から会社トップに至るまでの意識改革、および業務改革を推進してきた。その具体的な方法は、同社の本業であるテレマーケティングのノウハウ(リードマネージメント・プロセスエンジニアリング)を、セールス・プロセスの開発に取り込むことである。そして、プレセールス(見込客管理)、セールス(営業の商談支援、管理)、アフターセールス(受注後のお客様とのコンタクト管理)の一連のセールス・プロセスを標準化し、それぞれのフェーズごとに関連部門が連携して業務を行う流れを作り上げたのである。
 現在、問い合わせ受付や見込客発掘のためのキャンペーンの展開などといったプレセールスをマーケティング担当が、顧客へのソリューションの提案からクロージングまでのセールスをセールス担当が、クロージング後のアフターセールスをセールス部門と各プログラム実行部門が担当している。
 こうした中で、一連のセールス・プロセスに携わるこれらすべてのスタッフが、顧客に関する情報を共有できるような環境の整備が強く望まれていた。それを実現する手段を模索している中でSFAに注目。同社では、このシステムを活用することで、従来から進めてきたセールス・プロセスの体系化を強化できると判断し、導入に踏み切ったのである。さらに営業日報をデータベース化することによって、今までは売り上げだけでしか評価することができなかったセールス活動の質的評価が実現し、それを標準化することで、効率ばかりでなく、セールス活動そのものの向上を図ることができるという期待があった。

NTTテレマーケティング(株)が提供する各種サービスのリーフレット NTTテレマーケティング(株)が提供する各種サービスのリーフレット

NTTテレマーケティング(株)が提供する各種サービスのリーフレット

 1997年6月に導入を決定した後、同社の業務に最適なシステム構築に向けてのカスタマイズについて検討を開始。同年10月に完成、稼働を開始した。システム導入の決定に当たっては、アプリケーション・ソフトの完成度、拡張性、カスタマイズの容易さなどからコールセンター用のCTIパッケージソフトとして定評のあるSCOPUS(現在は日本シーベル)の導入を決めた。
 このシステムにより、現在、マーケティング担当、セールス担当、関連部門の約120名のスタッフ全員が情報を共有。また同じ情報を、社長をはじめとする経営層もリアルタイムでチェック、経営情報としても活用している。

情報は貴重な経営資源

 同社が現在、重点的に活用しているのは、システムにコンタクト履歴を蓄積し、情報を共有する機能、商談段階を把握できるセールス・プロセス管理機能、次のアクションを策定するためのデータ分析機能などだ。
 導入の効果としてまず挙げられるのは、情報の共有化が実現し、スタッフの間に情報化の有効性と商談をマネジメントする認識が浸透してきたこと。
 また、システム導入後には、誰もが容易に全体のプロセスを見渡せるようになり、明確に状況を把握できるようになった。たとえば、マーケティング担当ではプレセールス段階でリード・ジェネレーションを行い、ホットな状態まで押し上げた見込客をセールス部門へ引き渡すが、これまでは把握しにくかったこれらの見込客のその後の動きが、リアルタイムで共有できるようになった。さらに成約となった案件、あるいは途中で商談が中断したり、結局、成約には至らなかった案件の要因分析が可能となり、セールス活動のどのプロセスにどのような問題があるかが目に見えるようになったため、見込客に対して蓄積されたデータに基づいた成約率の高いアクションが取れるようになった。こうしたデータを蓄積していくことで、成約のためのノウハウが確実に継承されていくことになる。
 システム開始から1年半。同社では十分な情報の蓄積はできつつあるとして、今後は蓄積した情報をいかに活用していくかに重点を移していきたいとしている。そのためにシステム面では、より機能的に使いこなせるように操作性に改善を加えていくほか、このSFAのシステムを、ほかの社内システムとより機動的に連動させていくことも検討中である。たとえば、コールセンターにおけるオペレーションの品質管理部門でオペレーションの品質をデータ化して、データをもとに標準化を図る一方、オペレーションの品質データと営業データを掛け合わせて分析していくことで、さらに取引先の満足度を向上させるような活用法も構想している。
 同社は1999年4月1日付けでNTT東北テレマ(株)、NTTテレコール信州(株)、NTT新潟コミュニケーション(株)と合併。新たなスタートをきった。今後は3社から引き継いだ業務にも、こうしたSFAシステムを導入し、全社をあげて効率的、かつ効果的なセールス活動を展開していく意向である。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年5月号の記事