データマイニング・ツールで顧客動向を分析

英・Savacentre社

全社で情報を共有

 Savacentre社は、英国唯一の大型スーパーマーケット・チェーン。スーパーマーケット、銀行、DIY専門店など5つの企業を保有するJ Sainsburyの傘下にあり、従業員数は約1万人。英国内にある13のスーパーマーケットで、16万アイテムの商品を販売しており、年商は7億5,000万英ポンドである。
 同社では、顧客動向に関する情報を収集し、これらのデータから製品販売、および顧客ロイヤルティ育成計画のために有用なデータを抽出し、分析。この結果として、キャンペーンにかけるマーケティング・コスト削減を実現している。
 同社の業務部門は、顧客や製品についての、より精度の高い情報を必要としていた。国内、および余暇事業部門がMIS(情報システム)を構築し、さらにマーケティング部門がこの情報を活用して顧客ロイヤルティの育成を推進するという2つの主要なプロジェクトのスタートを機に、同社は双方のプロジェクトで使用できるSASのデータマイニング技術の採用を決定した。ソフトウェアの選択に当たって重視した点は、オールラウンドな機能性と、データベースとリポーティング・ソリューションを備えていること。これによって、データベースを再構築する必要がなくなり、システム開発やトレーニングにかかる時間や費用を大幅に削減できるからだ。
 1996年、同社はIBMのSP2サーバによりデータウェアハウスを構築した。これが同社で稼働した最初のSASを用いたアプリケーションであった。データウェアハウス構築の最大の利点は、中央システムが保持している企業データの一部に、実際にデータを活用する現場のスタッフが直接アクセスできること。データは実際には社内の各部門に分散しており、プラットフォームが異なる場合もあるが、スタッフはSASを通じてそれらすべてのデータを取得することができる。まずマーケティング部門で、続いて国内および余暇事業部門でこのシステムを導入。各部署では、いちいちシステム部門の力を借りる必要なく、オンラインでデータを取り出し、報告書を作成したり、疑問を解決することが可能になった。

顧客情報の収集によって効果的なキャンペーン展開を実現

 顧客情報は主に、同社が発行する「ロイヤルティ・カード」によって収集されている。
 このデータをもとに、マーケティング部門では、たとえば近隣に競合店が開店した際に、顧客の購買動向を分析して離れていった顧客を識別する。そして、引き止めておくべき重要なグループを特定し、これをターゲットにしたマーケティング・アプローチを実施する。
 また顧客情報は、より効率的なキャンペーン展開を可能にした。たとえば制服や学校用具を提供する「Back to School」キャンペーンの際には、学童年齢の子どもがいる家庭だけにターゲットを絞り込んでアプローチできるといったことだ。
 SASのデータマイニング技術は、ずばり「どの地域に」「どのタイミングで」プロモーションすべきかについての回答を導き出す。そればかりでなく、適正なストック量と、それをどこに配置すべきかも明確になった。
 また同社は、コア顧客のロイヤルティをさらに高めるために、全社レベルでのリストラに取り組んできた。その施策として、「ホーム&レジャー」「クロージング」「フード」の分野別事業部に加えて、「クック・ショップ」「趣味・娯楽」「ベビー&トドラー」といったカテゴリー別事業部を設置。たとえば「ベビー&トドラー」では、おもちゃは「ホーム&レジャー」から、ベビーフードは「フード」から仕入れる体制を作り上げた。このようなリストラのための戦略的思考も、SASのソフトウェアによって導かれたものであるという。
 同社の各事業部門のスタッフは、現在ではシステムで“できること”を完全に理解し、システムを存分に活用して、マーケティング・コストの削減など、目に見える成果を上げている。いまや同社はJ Sainsburyグループの中で最も利益率の高い企業となり、親会社からの大規模な投資を得て、さらに売り上げを拡大しようとしている。同社はデータからより深い原因や関係を探るために、システムのバージョン・アップも計画中だ。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年10月号の記事