オフィス向け納品業務を出発点に通販展開地域を全国に拡大

(株)アサヒ商会

全国5拠点から日本全国に翌日配送

 群馬県高崎市に本社を構える(株)アサヒ商会は、1947年の創業。地域密着型の文具店として開業した後、徐々に事務用品の取り扱いを増やし、高崎市役所や地場の企業などに主要メーカーの商品カタログを配布して電話で受注、配達する納品業務で好調に業績を伸ばしてきた。
 納品は人手のかかる業務だ。顧客数、注文数が伸びるにつれ、業務量や必要な人員数もこれに比例して増えていった。しかし無尽蔵に“人”を増やし続けるわけにはいかない。そこで同社では93年1月、独自のカタログを作成し、通信販売を開始した。「それ以前もカタログを使って注文をとっていたのだから、我々のやっていたことははじめから通信販売だったと言うこともできます。しかしそれにもかかわらず、通信販売のシステムが未整備だったために、余計な手間がかかっていたわけです」。当時を振り返って同社社長の広瀬洋一氏は語る。
 “翌日配送”をうたうカタログ通信販売、「オフィス エキスプレス」は、まず東日本エリアでスタート。その後、全国各地への出荷センター設置にともなって、本州全域から四国、九州、北海道、さらに沖縄へと徐々に展開エリアを拡大していった。現在では全国5カ所の出荷センターで、全国を隈なくカバーしている。関東、東北、北陸、東海を含む23県からなる「本州東部エリア」を担当するのは同社の運営による出荷センター。ほかの4カ所のセンターは、それぞれの地域のパートナー企業が運営している。
 新規顧客を獲得するのは、全国36社のFC(フランチャイジー)の役割だ。FCになっているのは、ガソリンスタンドを展開する出光グループ、オフィスにコーヒーを配達しているダイオーズなど、企業ユーザーを数多く抱える企業。ちなみに文具店はひとつもないという。FCは企業ユーザーにカタログ『オフィス エキスプレス』を配布し、配付先企業が『オフィス エキスプレス』で商品を購入する都度、一定の手数料を取得する仕組みだ。
 『オフィス エキスプレス』は年1回、1月の発行。発行部数は、FC数の伸びに比例して、92年の300部から、5,000部、2万部、4万部、11万部と年を追うごとに鰻登りに伸びてきた。98年版の第8号は、すでに15万部を配布済みである。
 カタログの利用には、まずコンピュータ登録が必要。登録を終えて会員となった顧客の情報は同社が一括して管理。次号からのカタログは、FCを通さず直接、同社から送付する。この会員数は現在、約7万件。規模、業種ともにさまざまで、平均像を描くのは難しいが、自社でビルを構えている大企業よりは、「中」規模以下の企業、あるいは、大企業のブランチなど、比較的こじんまりとしたオフィスが中心になっている。

カタログ『オフィス エキスプレス』はA4判・約120ページの見やすく選びやすいサイズ。ニーズに応えてエコロジー商品(左下)や特価品(右下)のページが増えている。誌面には商品をおすすめするメーカー担当のコメントが、顔写真とともに散りばめられ、「生」の商品情報が伝わってくる。同様の情報は同社のホームページにも掲載されている カタログ『オフィス エキスプレス』はA4判・約120ページの見やすく選びやすいサイズ。ニーズに応えてエコロジー商品や特価品のページが増えている。誌面には商品をおすすめするメーカー担当のコメントが、顔写真とともに散りばめられ、「生」の商品情報が伝わってくる。同様の情報は同社のホームページにも掲載されている

カタログ『オフィス エキスプレス』はA4判・約120ページの見やすく選びやすいサイズ。ニーズに応えてエコロジー商品や特価品のページが増えている。誌面には商品をおすすめするメーカー担当のコメントが、顔写真とともに散りばめられ、「生」の商品情報が伝わってくる。同様の情報は同社のホームページにも掲載されている

2万アイテムの翌日配送が可能

 現在、注文はFAXとインターネットで受け付けているが、主経路はFAX。同社では通販開始以前から受注にFAXを活用しており、フリーダイヤルFAXの日本第1号のユーザーでもある。現在は、全国5カ所の出荷センターごとにフリーダイヤル番号を使用。フリーダイヤルの全国共通番号サービスを利用し、ひとつの電話番号で5カ所のセンターに振り分けることも可能だが、あえて地域別に5つの番号を設け、それをカタログの表紙などに一挙に掲載することで、ひと目で全国展開していることを知らせる効果を狙っている。FAX用には合計で約30回線を確保。月〜金曜日の営業で、午後3時までの受注分は全国どこでも翌営業日に配送する。受注件数は曜日では月曜日が比較的少なく、年間を通して見ると3月、9月に集中する傾向がある。
 1回1万円以上の購入なら、配送料は無料。5,000円以上1万円未満の場合には200円、5,000円未満の場合には400円の送料がかかる。送料無料のハードルが比較的高いこともあって、平均客単価は8,000円以上。月に1度、まとめて注文するというのが、会員の典型的な利用パターンだ。
 約120ページのカタログには、OA用品、文具、伝票から、洗剤やコーヒーに至るまで、オフィスで日常的に使用する商品、2,000数百アイテムが掲載されている。直取引のあるメーカーは約200社、メインの仕入先だけでも約50社に上る。最近の人気商品は、ミネラルウォーターやお茶など、持ち帰りが不便な飲料類だという。
 掲載商品は過去の売れ筋上位2,000アイテムを核に、自社の売り上げだけを頼りにしてはMDに偏りが出るとの配慮から、文具市場におけるメーカー各社のシェアを加味して決定する。これ1冊で日本のオフィスの平均的ニーズは満たせるという意味で、『オフィス エキスプレス』には「文具標準カタログ」というサブキャッチが付いている。オフィス用品と言えども流行はあるが、要望されるものは「自然と標準化されてくる」(広瀬氏)というのが同社の考え。93年に第1号を発行して以来、『オフィス エキスプレス』の掲載アイテム数はほぼ一定で、これ以上増やす計画はない。「もともとメーカーが作成している分厚い商品カタログが使いにくいという意見に応えて『オフィス エキスプレス』が生まれたのだから、掲載商品数を膨らませたら元の木阿弥」(広瀬氏)というわけだ。
 しかし同社は創業以来、文具店を営んでおり、そこには常時約2万アイテムの商品がストックされている。『オフィス エキスプレス』では、カタログに掲載されていない商品の注文も受け付け、同社、および各地域の出荷センターの運営を担うパートナー企業がストックしているものについてはカタログ掲載商品同様に翌日配送、そうでないものについてもメーカーから取り寄せてできる限り迅速にユーザーに届けるというサービスを行っている。『オフィス エキスプレス』の価格は原則的にメーカー希望小売価格の20%引き。半値以下のものも多い。カタログにないオーダー品についても、最低でも20%引きの価格が保証される。

文具の「amazon.com」を指向

 問い合わせは各出荷センターで、フリーダイヤルの電話により受け付けている。受付時間帯は、平日の午前8時30分から午後5時30分まで。問い合わせの中で最も多いのは、「こんな商品はありますか?」「カタログに載っている商品とは別の色のがほしいんですが…」といったカタログ掲載商品以外の商品についてのものだ。受け付けられた問い合わせの内容は、オンラインで同社に集約され、次のカタログのMDや商品・サービス開発に生かされる。
 たとえば「環境にやさしい消しゴムはありますか?」といった質問が数多く寄せられたのをきっかけに、カタログに「エコロジー商品」のページを設けたり、プリンターのトナーのリサイクルを推進しているのもそのひとつの例だ。また、昨今のディスカウント指向に応えて「40〜50%off」の商品を揃えた「特価品」のページ数は、号を追うごとに増えている。
 オーダー商品やサービス商品が充実しているのも『カタログ エキスプレス』の特徴。各種スタンプや印鑑付きボールペン、名刺や封筒の作成も行っている。最近では書籍の取り扱いもはじめた。
 同社はこれまで、マイクロ写真やコピーサービスなどの新しい技術を、常に他社に先駆けて導入してきた。この姿勢は、インターネットについても同様。これに関わるサービスを専門に手がける関連会社を設立し、インターネット用に1,000回線を確保している。このインフラを活用して、同社では数十万アイテムの文具、オフィス用品の中から必要なものを検索、注文できるバーチャル・ショップを設置するという壮大な構想を描いている。
 高崎発世界。同社の新たな挑戦がどのような成果を生み出していくのか、今後の動きに注目したい。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年6月号の記事