“お客様のために進化する”オフィス用品デリバリーNO.1企業

アスクル(株) 

流通サービス業に徹し、お客様が求める商品・サービスを提供

 オフィスに必要なものを翌日届ける「アスクル」、つまり“明日来る”サービスは、文具・オフィス家具メーカーのプラス(株)の一事業として、93年3月にスタートした。利用企業は94年11月に5万社を突破、95年12月に10万社、97年3月には20万社となり、売上高もこれに比例して94年5月期の2億円から1年ごとに6億円、19.4億円、56億円と鰻登りに増えてきた。97年5月、アスクル事業部はプラス(株)から独立し、アスクル(株)として再スタートをきっており、98年4月末日現在の利用事業所は32万カ所以上。98年5月期の売上高は105億円を超える見込みだ。オフィス用品のデリバリーでは、日本でNO.1の規模である。
 「アスクル」は従業員10人未満のスモール・オフィスをターゲットとしてスタートした、流通サービス事業だ。従業員30人以上の中規模以上の企業には出入りの業者があり、営業担当者がこまめに御用聞きに訪ねてくる。10人以上30人未満のオフィスは、必要な時に電話で注文して荷物を届けてもらっている。しかし、日本の全660万事業所のうち約95%を占める従業員10人未満のオフィスで働く人々は、仕事の合間を縫って店頭に足を運び、商品を購入して持ち帰るのが普通であった。「アスクル」は、これらのスモール・オフィスに、大企業が受けているフルサービス以上のサービスを提供しようと考えたのだ。だが現在では、中小事業所をはじめ、大規模事業所の利用も急増している。
 現在、配布されている『アスクル 1998年春・夏号』に掲載されているのは、OAサプライ、ファイル、紙製品、オフィス家具などに加え、洗剤やコーヒーまでを含む約4,500アイテム。オフィスで使うものをこれ1冊にまとめ、“ワンストップ・ショッピング”を提案している。現在のところ掲載商品数は号を追うごとに増えているが、同社では決して取扱商品が多ければ多いほど良いとは考えていない。利用者の利便性を追求した見やすく選びやすいカタログ作りのために、厳選した商品のみを掲載する方針だ。
 メーカー系列であっても、自社製品にこだわっているわけではない。誌面には、ぺんてる、ゼブラ、キングジム、3M…と親会社の“ライバル”製品がずらりと並ぶ。商品の仕入先は約200社におよんでいる。カタログは3月と9月、年2回の発行だ。
 サービスの信条は、まずスピード。単に「速い」だけではなく、約束した納期を守ることが重要だ。注文はフリーダイヤルのFAXとインターネットで24時間受け付けているが、FAXの場合は午後3時まで、インターネットの場合は午後5時までの受注分が翌日配送。土曜配送も可能だ。東京23区内ならインターネットでの午前0時までの注文も翌日中に、また、午前0時以降朝10時までの受注分は当日中に届く。さらに急ぎの場合は、1梱包当たり300円のサービス料金がかかるが、平日の午前8時から午後6時までに専用のフリーダイヤルの電話で注文すれば、翌朝10時までに届けてくれる。
 また、現物を手にとって確かめることができないという通信販売のデメリットを補完するサービスとして、60日間の返品保証を実施している。

『アスクル』カタログ。右は、機能だけでなくデザインにもこだわった、オリジナルのオフィス家具のページ 『アスクル』カタログ。右は、機能だけでなくデザインにもこだわった、オリジナルのオフィス家具のページ

『アスクル』カタログ。右は、機能だけでなくデザインにもこだわった、オリジナルのオフィス家具のページ

パートナー企業とのネットワークで“無駄”を省く

 FAXで直接注文、翌日配送、しかも低価格。このシンプルかつ合理的なシステムを実現しているのは、同社と仕入先、運送会社、システム・ベンダー、あるいは金融機関など数多くの企業とのネットワークだ。同社ではこれを「大アスクル」と呼んでいる。各々が得意分野を生かすことでコストや時間の無駄を省き、商品の価格を下げることによって利用者に利益を還元しようというわけだ。
 この「大アスクル」の一員に「エージェント」がある。このエージェントになっているのは、全国約1,400店の文具店。独自にチラシを配布するなどして新規会員を獲得したり、既存会員の利用を活性化するために情報提供を行うことが主な役割だ。これによって同社は、広告費を抑えることができる。請求書の発行・送付は同社が代行するが、代金決済はエージェントを通して行われる仕組みだ。
 同社では新規会員獲得のため、昨年12月に日本経済新聞に通販広告を出稿した。また、雑誌などにパブリシティが掲載されると、その問い合わせ受付用にFAX BOXを設け、利用申込方法などを案内している。このようなルートで同社が直接、獲得した会員にも必ず担当エージェントをつけ、エージェントを経由して売り上げが計上される。エージェントと同社の広告・広報活動によって、新規会員は月に約1万社ずつ増え続けている。
 「アスクル」を利用するためには、事前に利用申込が必要。この新規登録のほか、各種問い合わせを受け付ける「お問い合わせセンター」の受付時間帯は、平日の午前8時から午後6時まで。フリーダイヤルの電話で対応している。
 インターネットによる受注を開始したのは97年3月。ホームページ上(http://www.askul.co.jp)にはカタログ同様、約4,500アイテムの商品を掲載したインターネット・カタログもあるので、あらかじめ『アスクル』カタログで購入商品を決めておかなくてもその場で商品を選び、注文することができる。インターネットでの注文には別途メンバー登録が必要だが、この利用は急速に増えており、現在、総受注件数の数パーセントに達しているという。
 注文は、FAXによるものは受注センターのFAX-OCRサーバで受け、デジタル化されたデータを本部に転送。インターネットによるものは直接本部のインターネットサーバで受け付けられる。膨大な件数に上るこれらの受注データは、埼玉県にある物流センターにオンラインで送られ、コンピュータ技術を駆使したデジタル・ピッキングにより、正確、かつ迅速に出荷準備が整えられる。配送料は2,700円以上の購入については無料。これに満たない場合は300円となっている。

お客様のために“進化”する

 同社は、常にお客様の声に耳を傾け、お客様のために進化を続けることを事業の基本姿勢としている。カタログには必ず商品やサービスについての意見を聞くアンケート用紙を綴じ込み、また、モニターとして組織している数百社のユーザーへの定期的なアンケートやグループインタビューによってニーズや満足度をリサーチ。これをカタログ企画などに迅速に反映させたり、カタログ誌面でも紹介している。
 お客様の要望の多い商品が市場にない場合には、オリジナル商品を開発。低価格で紙詰まりしないコピー用紙、厚みがあり使いやすい「お掃除シート」、機能だけでなく美しいデザインにこだわったPCデスクなど、数十種類のオリジナル商品が販売されている。オフィスで大量に使うコピー用紙は、通常5冊が1セットのところを10冊セットにするなど、提供方法に工夫をほどこして低価格化を進めてきた。
 また、個々のニーズにきめ細かく対応するサービスとして、少人数のオフィスに適したサイズのコーヒー・パックをコーヒー専門メーカーと共同で開発。要望に応じて作るスタンプも、午後1時までの注文なら翌日に届く。
 さらに「社会のために」という視点からエコ商品の開発にも積極的だ。再生紙を使用したコピー用紙やファイル、再生発泡スチロールを使ったボールペン、また、12種類のレーザープリンタ用トナーカートリッジのリサイクル・サービスも行っている。
 価格や機能はもちろん、お客様の声に応えて“プラスα”の商品・サービスを提供するアスクル(株)。同社がどんな“進化”を遂げていくのか、今後がますます楽しみである。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年6月号の記事