営業現場で活用できる顧客情報管理システムを構築

日本ユニシス(株) 

“HOT”な情報をスピーディにフィードバック

 CTIシステム「Tiny Call Center」やCAM(Customer Asset Management)アプリケーション・ソフトウェア「Vantive」などを取り扱う日本ユニシス(株)CTIソリューション室では、1998年1月、実際にこれらの製品を使った顧客情報管理システム「INTIMA(インティマ)」を構築し、営業活動の効率化を図っている。
 「INTIMA」という名称にはIntimacy(親密な)の意味がこめられている。顧客、見込客とのより親密な関係を実現するために、営業やマーケティングの現場で、必要な時にすぐ、顧客情報を引き出したり更新したりすることのできるシステムが「INTIMA」なのである。
 「INTIMA」稼働にともなって、CTIソリューション室には「Sales Opportunity Generation Center (SOGC)」が設置された。電話、インターネット、ダイレクトメールなどのメディアを介した見込客とのインターフェースであるSOGCの最も大きな役割は、ここで得られたセールス・リードの中から“HOT”な営業情報を選り分け、確実に営業チームにバトンタッチすることだ。「Tiny Call Center」を用いて、特定多数の見込客との情報の受発信、および情報処理をわずか数名のスタッフがこなしているという。
 たとえばマーケティングチームがセミナーを企画すると、SOGCでは、このセミナーの目的に合った見込客をデータベースから抽出。宛名ラベルを出力し、ダイレクトメールを送付する。同時にインターネットのホームページにも案内を掲載する。電話やFAX で参加申込が入ると、SOGCはその情報をVantiveサーバに入力。インターネットでの申し込みは自動的にVantiveサーバに登録される仕組みだ。申込者に対しては受講券が発行され、送付手続きがとられる。このリストはリアルタイムで公開されるので、営業担当者は自分のお客様の参加状況を確認し、重要な見込客には直接電話をして申し込みのお礼を述べたり、申し込みがなければ参加を促すことができる。
 セミナーや展示会の来場者、資料請求者など、CTIソリューション室がこれまでに獲得したセールス・リードは、現在のところ約2,000件。この2月18日に行われた「Tiny Call Center 発表記念セミナー」の際には、このうち一定条件にかなう1,030件をセグメントしてダイレクトメールを送付した結果、その後2週間で、200人の定員を大きく上回る299人からの申し込みがあった。「いかに質の良いリードが蓄積されているかを、実証できたと思っています」と、ソフトウェアビジネス部 CTIソリューション室 主任 福盛田結花氏は語る。
 セミナー会場では必ずアンケート用紙を配布、回収している。SOGCがこの回答をシステムに登録すると、あらかじめマーケティングチームが設定した基準にしたがって、リードは“HOT”“WALM”“COOL”の3ランクに振り分けられる。このうちシステム・プラン、導入時期が明確になっている“HOT”な見込客情報は、ワークフローの機能を使い、自動的かつ即座に営業チームに伝達。購入意向がはっきりしない“WALM”な見込客には、SOGCのスタッフがアウトバウンド・コールを行い、要望を確認する。“COOL”な見込客にはその後、定期的にセミナーや新製品の案内を送付し、頃合を見てアウトバウンド・コールで購入意向をリサーチするといった手順になる。

INTIMA システム

システマティックに商談を管理・進行

 “HOT”と判定された見込客に対しては、営業担当者がつき、商談を開始することになる。
 商談にはプレゼンテーション、見積書提出などいくつものステップが存在しており、そのプロセスは製品によって、また、官庁かメーカーかといった見込客の属性によって違いがある。マーケティングチームによって設計されるそれら何種類ものセールス・プロセスは、あらかじめシステムにプログラムされており、営業担当者は顧客情報などを入力するだけで、営業案件の進捗状況や、次のステップを確認することができる。そのひとつひとつのステップについての目的、アピールすべき点、提出資料、収集しなければならない情報なども画面に表示されるので、ベテラン営業マンでなくとも自信を持ってスムーズに次の行動に移ることができるわけだ。これによって「営業品質の均質化を目指す」(ソフトウェアビジネス部 CTIソリューション室 課長代理 渡部弘毅氏)と同社では期待している。
 個々の見込客との対応履歴はすべてVantiveサーバで一元管理され、仮に営業担当者の不在時に見込客から連絡が入っても、スムーズな対応が行える。その結果はサーバに新たに蓄積され、営業担当者には電子メールで通知される仕組みだ。優良見込客は複数企業と同時に接触を図っているケースが大半。競合他社に遅れをとることは許されない。チームが一体となった緊密な連携プレーは、営業の優位性を保つために不可欠の要素なのである。
 商談中の見込客がすでに他部署の既存顧客である場合、あるいは、他部署が取り扱う製品と組み合わせてプランの提案をする場合には、CTIソリューション室の担当者と当該製品の担当者が連携し、営業活動を進めることになる。現在のところ「INTIMA」は CTIソリューション室内のみで稼働しているため、他部署の担当者とはイントラネットを介して電子メールで連絡をとり合っている。
 契約が成立して見込客が顧客となった後も、その情報は継続的にVantiveサーバで管理される。CTIソリューション室内にはユーザー・サポートを担当する情報技術部SEチームがあるが、ここで行われるテクニカル・サポートにも、同一のデータベースが活用されているわけだ。
 このように、一元化されたデータを、それぞれのチームがそれぞれの必要に応じて加工・活用できるのがCAMの大きな利点だ。たとえば営業チームの管理者は、全営業案件の進捗状況を把握したり、正確な売上予測を立てるためにVantiveサーバの情報をフルに活用しているし、マーケティングチームではアンケート結果などを分析して、次のイベント企画に役立てている。
 「INTIMA」は段階的に機能を拡張しており、モバイル・コンピューティングも含め、全社レベルでVantiveサーバの情報共有化を実現する第三フェーズで完成をみる予定だ。

トラブル対応に「ナンバー・ディスプレイ」を活用

 同社では、ユーザーの問い合わせやトラブルに対応するカストマーサービス部門においてもCTIを活用している。
 現在、同社のアフターサービスの対象となるユーザーの数は、事業所単位で約6,000。製品情報、パーツ情報、保守契約情報のほかに、これらのユーザー情報もすべてデータベース化されている。同社ではこれらのデータベースと電話とを統合した「On-Call Assist system (OCA)」を構築し、的確、かつ迅速な電話応対を実現した。スタッフが電話を受け、企業名や住所を入力するだけで、各種情報マスターから一定のインターバルで最新情報がダウンロードされている「OCAサーバ」から、詳細なユーザー情報が即座に画面に呼び出される。OCAサーバには、使用機器、保守契約内容、対応履歴はもちろん、「サービス・エンジニアは何時に到着するのか」といった質問に答えるために、ユーザーの事業所があるビル名や、そこまでのアクセス経路、所要時間も登録されている。
 トラブル対応はスピードが命。「一刻も早くトラブルを解決したいと思っているユーザーに使用機種などをいちいち尋ねていては、顧客満足は得られない。また、実際にコンピュータを使用している客先エンドユーザーが、保守サービス内容まで把握しているとは限らない。できるだけ質問事項を減らし、本題に入るまでの時間を可能な限り短くしたいと考えました」とカストマーサービス推進室 カストマーサービス管理室 部長 山田和夫氏は語る。
 また、状況を正確に把握するためにもユーザー情報は必要だ。パニックに陥ったユーザーに、的確な状況説明を求めるのは酷かもしれない。だが、万が一にもここで誤った情報がインプットされれば、修理に当たるサービス・エンジニアやパーツを出荷するマテリアルサポート部署など、何人ものスタッフが無駄な動きをすることになり、その結果、トラブル解決までに時間がかかってしまうのだ。基礎情報があれば、コール受付部署はこれをもとに、必要十分な情報を聞き出すことができる。
 さらに同社では、使用製品別、あるいは保守契約をしているか否かによって、何種類かの問い合わせ受付の電話番号を使い分けている。どの番号にかかってきた電話かによって、コールを最適なグループにルーティング。第一報からスペシャリストが受けることによって、トラブル解決までの時間短縮を図っている。
 話の本題に入るまでの時間をより一層短縮するための方策として、同社はNTTが提供する「ナンバー・ディスプレイ」をいち早く導入した。まず97年3月から、同サービスの企業モニターとして、名古屋にある中部カストマーサービス・センターでテストを開始。この結果が良好であったことから、今年2月から、残る東京、関西2カ所のカストマーサービス・センターでも同様のシステムを稼働させた。電話が入った3秒後には、電話と同時にユーザー情報がスタッフの画面に転送される。
 B to Cのビジネスの場合、問題となるのが「ナンバー・ディスプレイ」の有効性。と言うのも、一般生活者は個人の取り引きであっても昼休みに会社から電話をすることもあれば、携帯電話から電話をかけることもある。発信電話番号が一定ではないために「ナンバー・ディスプレイ」利用の効果は未知数だという意見が多勢を占める。
 しかし同社の場合にはユーザーのほぼ100%が企業。しかもトラブルを訴えるユーザーは現場から電話をかけているケースがほとんどであるため、「ナンバー・ディスプレイ」の効果は期待通りに上がっているという。名古屋での実験期間に、発信電話番号が通知された割合は約86%。そのうち約70%が同社が保有するユーザー情報と整合した。電話番号が通知されているにもかかわらずデータベースとヒットしないものは、登録されているのが企業の代表番号であるなど、正しいユーザー情報が収集されていなかったケースがほとんど。問い合わせを受けた際にデータの修正を行ってきた結果、現在では発信電話番号が通知される限り、データベースとのヒット率はほぼ100%に近いという。
 コール数は提供製品数の増大にともない増加傾向にあり、現在、東京カストマーサービス・センターの場合で、問い合わせや質問を含めると月に4,000〜5,000件。しかし、一般生活者をターゲットとしたパソコン110番のように“電話がつながらない”という事態は持ち上がっていない。
 センターのスタッフは電話応対、およびサービス・エンジニアの応対結果をシステムに入力。その内容を定期的に、あるいは必要に応じて、担当営業者に「コンタクト・レポート」として電子メールで報告する。また、あらかじめ定められた“注意すべき事項”については、通知が入った30分後にこれこれの状況だった場合には営業担当者に連絡、1時間後にこれこれの状況だった場合には××担当者に連絡…といったように対応方法が定められている。それ以外にも“重要”と判断された報告については、営業を含む関連部署に随時、エスカレーション・レポートが届けられる。
 同社といったん取り引きを開始した顧客は、継続的に製品を購入する割合が高い。カストマーサービス部門は、顧客とのコミュニケーションを継続するという重要な役割を担っているのだ。
 リード・ジェネレーション、営業活動、成約、カスタマー・サポート、そして次の営業活動へ…。理想的なループを完結させるために、同社の各部署で最先端のコンピュータ・システムが活躍している。これらのシステムがどのように連携を深め、より効率的・効果的な企業活動を実現していくのか。今後の動きがますます注目されるところである。

INTIMA システム

日本ユニシスの東京カストマーサービス・センター


月刊『アイ・エム・プレス』1998年3月号の記事