お客様の声を各部門で徹底活用

(株)資生堂

コンシューマーズセンター
主事
田中 亮成氏

コンシューマーズセンター
主事
滝沢 隆氏

お客様の意見を全社で共有

編集部: コンシューマーズセンターの役割についてお聞かせください。
田中: お客様の声を収集し、社内に伝える情報発信基地です。お客様窓口としての活動は30年以上前から行ってきましたが、 1988年にコンシューマーズセンターと改称したのを機に、お客様の声を企業活動に活かすことを目的に、情報解析システムを導入しました。
編集部: どのようなシステムですか?
田中: 私どもは定性情報を重視していますので、お客様との対話内容をできるだけ加工せずに蓄積します。これを3階層、合計約900パターンの条件で、検索できるシステムです。大分類はたとえば「商品」 「宣伝」 「店舗」というように分かれており、 「商品」なら 「パッケージ」か「中身」か、「中身」ならば「香り」なのか「色」なのか「成分」 なのか・・・といった具合にほしい情報を絞り込んでいくわけです。
 ただ、ホスト系のシステムだったために、解析を行うためにはかなり高度なコンピュータの知識が必要でした。マニュアル片手に操作しなくてはならないような状況だったので、あまり活用されていなかったのが実状です。
 そこで、 1995年4 月から東芝(株)と共同で操作性の高いWindows系のシステム「ボイスネットC」 の開発に着手し、1996年4月に完成、本格稼働させています。現在この端末数は約150。商品開発、施策、宣伝、研究所、工場、教育の各部門と、 5支社に設置していますが、以前とは比較にならないくらい、よく利用されています。
編集部: 定性情報から重要なヒントを導き出すには、高度なノウハウが必要だと思いますが?
田中: 各部門のスタッフがすべての情報を読むことはなかなかできませんので、コンシューマーズセンターのスタッフが重要と思われる情報にチェックを入れておき、この情報だけを引き出すこともできるようにしています。
滝沢: 「ボイスネットC」には解析システムだけでなく、情報入力システムや、商品情報が蓄積された相談支援システムも統合されています。紙ベースの商品資料をその都度、棚から探して来るという作業が不要になり、即答率が上がると同時に、均質な対応が実現しました。また、以前はオペレータが対話内容を記入した受理票を見て、別のスタッフが入力していましたが、「ボイスネットC」では電話を受けた本人が入力するため、言葉のニュアンスまで、正確に記録できるようになりました。
編集部: 96年6月、窓口にフリーダイヤルを導入されたのですね?
滝沢: はい。これによって、 95年度に年間約3万2,000件だった相談件数が、96年度には約7万2,000件になりました。 97年度は9万件の受け付けを見込んでいます。
編集部: 「ボイスネットC」の導入は、通話時間の短縮にもつながっていますか?
滝沢: フリーダイヤルはお客様に通話料金のご負担をおかけしませんので、ご満足いただけるまで丁寧に商品説明や美容アドバイスをすることを心がけています。ですから通話時間は、逆に若干長くなっています。平均して約3分半といったところです。

資生堂「ボイスネットC」のシステムフロー

「ボイスネットC 」の二次開発に着手

編集部: 個々のお客様情報も蓄積しているのですか?
田中: 商品についてのお問い合わせをいただいたお客様には、できるだけサンプルをお送りし、お名前をうかがうようにしています。その方々に後日、新製品のサンプルとアンケートをお送りし、このアンケートにご回答いただいた方はモニターとして登録しています。現在、モニターは約 1,500人です。
 お客様情報が残っていると、お電話をいただくたびに、より深いコミュニケーションがとれるようになります。 1 度きりのお話ではヒントが聞き出せなかった場合にも、コミュニケーシヨンを繰り返す中で“宝”を見つけ出せることも少なくありません。
編集部: CTI導入のご計画は?
田中: 現在、「ボイスネットC」の操作性をより高めるために、二次開発を行っている最中です。これが完了する 98年以降に、 CTI導入を考えています。具体的には、あらかじめ用件別、事業部別に電話を振り分けて、最適なオペレータ・グループに電話を転送するという仕組みです。
 「ナンバー・ディスプレイ」の活用も計画しております。
滝沢: 店頭、電話、インターネットなど、お客様と私どもの接点はさまざまですが、お客様はこれらの接点を上手に使い分けていらっしゃいます。
 コンシューマーズセンターは一方で、店頭の販売活動の支援という役割も担っていますが、店舗機能の補完という意味合いを超えて、お客様との新しい接点を創造するという姿勢で業務に取り組んでいきたいと思っています。そのひとつがお客様のモニター化でもあるわけです。
 いずれテレビ電話などが普及すれば、窓口のスタッフはもともとビューティーコンサルタント(美容部員)の出身者がほとんどなので、お客様に自宅にいながらにして、店頭同様の美容相談を受けていただける時がくるかもしれませんね。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年11月号の記事