インパクトのあるプレゼントで顧客層拡大を狙う「LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン」

ブラウン&ウィリアムソン・ジャパン・インク

自由でワイルドなアメリカのイメージが定着

 「LUCKY STRIKE」は米国 Brown & Williamson Tabacco Corporation の、日本市場における「KENT」に次ぐ第 2 位のブランド。日本では 1985 年に正式に発売され、1987 年の輸入タバコの関税撤廃以降、順調に売り上げを伸ばしてきた。
 「LUCKY STRIKE」の特徴は、フルフレイバーと呼ばれるタバコ本来の味と香り。ターゲットは 20 代の男性だ。日本上陸以来一貫して、アメリカの荒野をバイクに乗って駆け抜ける男性を広告に使用し、いまや商品イメージはすっかり定着している。このイメージ広告とともに、ファン拡大に寄与してきたのは、年に 2 回、それぞれ約 3 カ月間を目安に毎年実施してきたクローズド・キャンペーンである。
 今年 4 月 1 日から 6 月末日まで展開した「LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン」は、タバコのパッケージに付いている「LUCKY STRIKE」のロゴマーク 3 ? 20 枚で「スカイダイビング体験」「パラグライダー体験」「オリジナル G-SHOCK 時計」「オリジナル折りたたみ自転車」のプレゼントに応募でき、はずれた人の中からオリジナルの「ポータブル・アッシュトレイ」が当たるダブルチャンスが付いている。
 タバコの場合、業界の自主規制によって、広告展開にはいくつかの制約が課せられる。たとえば広告を掲載する雑誌は、読者の 50%以上が男性で、同じく 50%以上が 20 歳以上でなければならない。また、テレビ CM ではキャンペーンの告知はできないといった具合だ。そこで「LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン」の告知は、キャンペーンのスタート時期に集中して出稿した新聞広告と、『週刊プレイボーイ』『Tokyo Walker』『ぴあ』など約 10 誌に掲載した広告、および、店頭や自動販売機に設置したポスター、ステッカー、応募ハガキで行われた。
 同社のそれまでのキャンペーンはすべて“アメリカ”“バイク”“荒野”といった広告の統一イメージを下敷きにしていた。しかし今回のキャンペーンでは、より幅広い喫煙者層のトライアルを促進するため、あえて従来のイメージを前面に押し出すことを避けた。プレゼントの内容も、従来イメージに縛られずに若い男性に幅広くアピールするものをラインナップ。メインにインパクトの強い「スカイダイビング体験」を据えた。
 応募資格は 20 歳以上の喫煙者。応募方法は、専用ハガキ、または官製ハガキに住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号、吸っているタバコの銘柄、キャンペーンの認知媒体と希望の商品を記入し、パッケージのロゴマークを貼付して投函する。同社が用意した専用ハガキは数十万枚。期間中はキャンペーン事務局内に電話窓口を設置し、専任のスタッフがキャンペーンに関する問い合わせに午前 10 時から午後 5 時まで対応した。
 より多くの若者の目を惹きつけ、「LUCKY STRIKE」のトライアルを促進するのがこのキャンペーンの目的。その狙い通り、キャンペーンは予想を上回る応募数を獲得し、期間中の「LUCKY STRIKE」の売り上げは著しく伸びたという。

LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン

メイン・ビジュアルにスカイダイビングのイメージ真

12種類のオリジナル商品を有償提供

 「LUCKY STRIKE チャレンジャー・キャンペーン」がトライアル促進を目的としているのに対し、前回、1996 年 11 月から 1997 年 1 月末日まで実施した「ラッキーストライク コレクション・プレゼント」キャンペーンでは、「LUCKY STRIKE」のブランド・ロイヤリティの向上を狙った。キャンペーンは、独自に開発したレザージャケット、T シャツ、バンダナなどのオリジナル商品、全 12 種類を、規定枚数のパッケージのロゴマーク、プラス現金で手に入れるセルフ・リクイデーションの「STRIKE コース」と、ロゴマークを 5 枚集めて送ると 12 種類のいずれかが合計 2,700 人に当たるクローズド懸賞の「LUCKY コース」の 2 本建てで設計された。「STRIKE コース」の場合、たとえばレザー・ジャケットはマーク 200 枚と 1 万円、バンダナならマーク 50 枚のみで手に入る。一番人気はマーク 100 枚と 3,000 円で申し込めるオリジナルのクラシック・ジッポーで、7,000 件以上の注文があったという。

 キャンペーンの告知は「チャレンジャー・キャンペーン」同様、雑誌広告を中心に行われた。だが、広告で 12 種類のオリジナル商品をすべて紹介するのは無理。応募にはまず、カタログを手にとってもらう必要があることから、このタイプのキャンペーンでは特に、販売店との連携体制が成否を分ける鍵になる。期間中はキャンペーン・ダイヤルを設けてカタログ請求や問い合わせに応じる体制を整えたが、カタログの 90%以上は店頭経由で配布された。
 応募総数は公表していないが、ユーザーには大変好評で、期待通りのレスポンスを得られたと同社では評価している。

パーソナル・データ活用の可能性は?

 キャンペーン応募者のデータは、年齢 、性別、地域別などに集計され、営業活動やプロモーションの企画立案に生かされる。売り上げの拡大とともに、キャンペーンへの応募者数は回を追うごとに増えているが、20 代男性が圧倒的に多いことについては 1985 年以来、変化がないという。
 また同社は、約 2 年前に業界で唯一のフリーダイヤルによるお客様相談室を設け、この電話番号をすべての商品のパッケージに明示していることでも注目される。ここでも日々、貴重なマーケティング・データが収集・蓄積されているだろう。
 一方で、パーソナル・データの活用についてはこれからの課題。キャンペーンの応募ハガキには「将来(同社から)ダイレクトメール等が送付される場合がある」ことを了解するか否かのチェック欄が設けられており、了解した人はデータベースに登録される仕組み。アメリカでは新製品のサンプルを送付するなどのアプローチがとられているというが、日本ではまだ具体的な活用はされていないのが現状だ。コミュニケーションをとろうにも日本では郵便料金が高いこと、また、顧客の年齢が若いために引越しをするケースも多く、データ・メンテナンスが容易でないことなどが、その主な理由として挙げられている。
 同社では「20 ~ 30 代の喫煙者における『LUCKY STRIKE』のシェアはまだまだ伸ばせる」と見る。その踏み台として、キャンペーン応募者データベースが活用される日も、おそらく近いのではないだろうか。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年8月号の記事