若者の心をとらえた“ペプシマン”  「GET!! PEPSIMAN WATCH キャンペーン」

日本ペプシコーラ社

“ブランドイメージ確立”の使命を帯びて「ペプシマン」登場!

 「ペプシコーラ」は来年、1998 年で生誕 100 年、日本上陸 40 周年を迎える。1990 年には M. ジャクソンの初来日公演に協賛、1991 年には M.C. ハマーを起用した比較広告で話題を呼び、1993 年にはインスタント・ウィンのテレプロモーションを実施するなど、ターゲットであるティーン・エイジャーの気をそらさない同社のセールス・プロモーション戦略には高い定評がある。

PEPSI MAN キャンペーン

店頭や自動販売機に設置している応募ハガキ(写真上)/人気沸騰中の「ペプシマン」(写真下)

 そして1996年3月に登場した「ペプシマン」は、チャレンジ精神とユーモア・センスにあふれたスーパーヒーロー。その実態は、「スターウォーズ」や「ターミネーター 2」を手がけた米・サンフランシスコ郊外にある映像制作会社、I.L.M. が作り上げたコンピュータ・グラフィックスである。このキャラクターを使い、現在までに放映された 5 篇のテレビ CM のうち 4 篇が CM 総合研究所の「月例好感率調査」で NO.1 に選ばれるなど、若者の人気が沸騰。その成果として「ペプシコーラ」は 1996 年、前年度比 14%増という販売数量実績を達成した。
 「ペプシマン」の使命は、「ペプシコーラ」のブランドイメージの確立。ひいては同社の C.I. の確立である。同社では「ペプシコーラ」の商品パッケージはもちろん、広告、店頭の POP、インターネットのホームページなどすべての媒体に「ペプシマン」を登場させ、認知拡大に努めた。その一環として、景表法改正後の4月1日から7月31日まで実施した「ペプシマン・ダブル・キャンペーン」が効を奏し、「ペプシマン」は一躍若者の人気者になった。
 このキャンペーンは、クイズに答えると 700 万円相当のゼネラル・モータース社製「シボレー・コルベット」96年型モデルが当たるオープン・キャンペーンと、「ペプシコーラ」に付いている応募シール、または応募券を 6 枚 1 口として応募専用ハガキ、もしくは官製ハガキに貼付して送るとオリジナル仕様の腕時計「アルバスプーン」が合計 3,000 人に当たるマストバイ・キャンペーンの 2 本建て。「ペプシマン」のイメージと重なるシルバー・メタリックのスポーツカーが話題を呼び、テレビ、雑誌、新聞などで盛んに取り上げられたこともあって、オープン・キャンペーンは 96 万 4,769 口、マストバイ・キャンペーンでは約 39 万口と、多数の応募を集めた。スポーツカーは、中心顧客層であるティーン・エイジャーに必ずしも直接アピールする景品ではないが、このキャンペーンの目的はあくまで「ペプシマン」の認知促進。「『カッコイイ』と思って応募してもらってもいいし、『カッコイイ』と思ってそれで終わってくれてもいい。キャンペーンの目標は十分に達成できた」(マーケティング本部 広報・お客様相談室マネジャー 柳瀬貴子氏)と同社はその結果を評価している。

“ブランド”に成長した「ペプシマン」

 「ペプシマンのキャラクターが付いたグッズがほしいんですが、販売していないんですか?」。同社のお客様相談室に多数寄せられた、このような声に応えて、同社では他社とのタイアップにより「Pepsiman U.S.A.」ブランドのグッズを開発。6 月 20 日にまず、 (株)ソニープラザでTシャツ8種を発売。雑貨、ゲーム、コンピュータ関連商品などにアイテムを拡大し、この秋から本格展開する予定。
 このプレ企画として、同社では今年 4 月から 9 月 16 日まで、「GET!! PEPSIMAN WATCH」キャンペーンを実施している。景品はオリジナルの LED ウォッチとキャップ。ウォッチには角形・丸形の 2 タイプがあり、各 1,500 人に、またダブル・チャンスとして、はずれた人の中から 9,000 人にキャップが当たる。応募方法は、同社の主力商品である「ペプシコーラ」「ダイエットペプシ」「セブンアップ」「マウンテン・デュー」と、今年の戦略商品「オールスポーツ」に付いている応募シール、または応募券を応募専用ハガキが官製ハガキに 6 枚貼り、住所、氏名、年齢、性別、電話番号、職業を記入して送付する。応募方法などについての詳しい案内は、音声自動応答装置によるキャンペーン・ダイヤルで、24 時間、聞くことができる。
 LED ウォッチは 1970 年代に登場したデジタル・ウォッチで、ここ数年の 70 年代ブームによって再び人気が上昇している。男性向けトレンド情報誌では春頃から競って LED ウォッチの特集記事を組んでおり、これらの記事中で紹介されたことから、「PEPSIMAN WATCH」は早くも“レアもの”として若者垂涎の的になっている。キャンペーンの告知は商品パッケージ、店頭や自動販売機に設置した POP、ステッカー、ポスター、応募ハガキで行い、「ペプシマン・ダブル・キャンペーン」のような派手なテレビ CM、雑誌広告は展開していないが、出だしはいたって好調。「ペプシマン・ダブル・キャンペーン」のマストバイ・キャンペーンへの応募数と比較しても 20 ? 30%増のペースで推移しており、同社ではキャンペーン終了までに 45 万口以上の応募を見込んでいる。

ターゲットに確実にリーチ!

 同社のキャンペーンが“当たって”いるのは、ターゲットであるティーン・エイジャーの行動、興味、文化を知り尽くし、若者の心に確実にリーチしているからにほかならない。同社では首都圏在住のティーン・エイジャーからランダムにサンプルを抽出、商品やライフスタイルについてのテレフォン・リサーチを毎月のように実施している。ただし、できる限りバイアスのかからないデータを得るために、「『調査は調査』と明確に区分して」(柳瀬氏)、キャンペーンの応募ハガキにアンケートを付けるといったことは行っていない。話題を呼ぶ高い景品、若者の参加意欲をかき立てる手法は、このような地道な情報収集によって生み出されてきた。
 たとえば、かつて実施したインタラクティブ・テレプロモーションについて、柳瀬氏は、「インスタント・ウィンは、その場で応募者に答えを返せるという点で非常に良い方法だった」と評価しながらも、「購買証明をとるために商品に付ける番号はどうしても桁数が多くなってしまうため、プッシュボタンで入力してもらえるのはせいぜい 1 つ。商品単価が低いので、約2,000円でいかに魅力ある景品を用意するか、という点に苦労しました」と振り返る。しかし「『ペプシマン』そのものがブランドとなった」(柳瀬氏)今、「ペプシマン」の力を借りて景品に付加価値を付けることが可能になっている。セールス・プロモーションがブランド力を増強し、それが次のプロモーションのコスト対効果を倍加させるという理想的な循環ができ上がりつつあるのだ。
 “愛される営業マン”、「ペプシマン」が、これからどのような活躍を見せてくれるのか。まだまだ目が離せない。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年8月号の記事