アナログ感覚で温もりのある街作りをフランキー・オンライン

フューチャー・パイレーツ(株)

アナログ的な“味”にこだわる

 ミュージックビデオや CF、ゲーム、CG など、常に最先端のメディアをクリエイトしてきたビジュアル・ディレクター、高城剛氏が 1993 年 4 月に設立したフューチャー・パイレーツ(株)は、デジタル技術を駆使して独自の世界を作り上げるハイパーメディア・クリエイティブ集団。クリエイターたちの平均年齢は約 23 歳。変容する時代の要請に応えられる“やわらかい集団=ソフト・ハウス”をモットーに、ひとつのメディアにこだわらないユニークな事業を展開している。常に時代を先取りしてきた同社だが、あくまでもアナログ的な“温もり”と“親しみ”のある表現を追求している。
 同社が 1995 年 6 月にスタートした「フランキー・オンライン」は、CD-ROM とインターネットを融合させた“次世代パソコン通信”の先駆けであり、その動向はサービス開始当初から国内外の注目を集めてきた。
 トップ画面では、ホストキャラクターのフランキー君が毎日違う挨拶で出迎えてくれ、同社からのインフォメーションを伝える。また、角川書店とのタイアップで提供しているデジタル情報誌『Tokyo Walker』『Game Walker』『ザ・テレビジョン』には毎日新しい情報がアップロードされるなど、街は常に変化し続けている。雑誌の広告や、都市内の建物、看板などは各企業のホームページとリンクを張っている。

Franky OpneingTalk

ガイド役の“フランキー君”と街の入口

 “アナログ”へのこだわりは相当なもの。画面が無機質にならないよう、特に音と動画に注意を払う。“生きた”街を再現するため、いたるところに動くキャラクターが配置されている。キャラクター作成は、まず紙に手作業で緻密なコンテを描くことからはじまる。これを CG 化した後も、T シャツやステッカーなどの“アナログ”作品でキャラクターをアウトプットすることによって、会員にとってより身近な存在になるよう心がけている。音響面では、コンピュータの“打ち込み”ばかりでなく、生の音を録音することによって、リアリティを高めている。またフランキー・オンラインの街は、地質、気候などまで考慮した都市計画をもとに作られ、建物は一級建築士が設計、インテリアデザイナー、インテリアコーディネーターが内装を担当している。

Banana KARAOKE

アナログな世界をデジタルで再現する「フランキー・オンライン」

密度の濃いコミュニケーションを実現

 現在の会員数は約 6 万 7.000 人。会員には 3 カ月ごとに新しい街を収めた CD-ROM が送られ、会費は月 500 円、2 時間まで無料でアクセスでき、それを越えると 1 分 10 円の料金がかかる。毎月 15 時間以上利用するヘビーユーザーも約 1.000 人いるという。会員の年齢層は若く、中学生~ 20 代が 7 割を占め、居住地域では東京、名古屋、大阪の大都市圏集中型。女性は約3割となっている。利用傾向を見ると、日中の時間帯は気の向くままに散歩をする人が多く、夜間はじっくり雑誌を読んだり、ナイト・カフェでチャットを楽しむ人が多くなる。
 会員は入会時にユーザーアドレスを決め、個人情報をオープンにしていいかどうかを申し出る。個人情報をオープンにした人のデータは「フランキー・オンライン市役所」で閲覧できるので、それをもとに会員同士のメールのやり取りがはじまることも珍しくない。メールは「フランキー・オンライン郵便局」から送ればいい。さらに参加企業に対しても情報をオープンにした会員には、各企業からダイレクトメールやパンフレット、アンケートなどが届けられる。また街には随所にアンケート BOX が設置されており、企業はこれを活用して、新製品の色、パッケージなどについての市場調査を行うこともできる。会員からの声は、ほかにメール、電話、FAX で同社サポートセンターに寄せられる。同社ではこれらの会員情報を、参加企業に提供。このほか参加企業は自社の情報を見た人の年齢、利用時間など、マーケティングを行う上で貴重なデータを得ることができる。
 プロモーションは参加企業とのタイアップによるものがほとんど。定期的なプロモーション活動は行っていないが、口コミなどで、会員は着実に増え続けている。
 「エンターテインメントとしてみんなが楽しめるコンテンツ作り」にこだわるフランキー・オンラインのコンテンツは、毎号、CD-ROM の容量ぎりぎりまで使っている。「現在のメディアの中では CD-ROM しか自分たちの作品を伝えるものがないが、CD-ROM の 6 ~ 8 倍の容量がある DVD が普及すればすぐさま切り替えたいです。」(古田 亘氏)というのが、同社のいつわらざる心境だ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年7月号の記事