日本中のうまいもの、大集合 ふるさと小包

財団法人ポスタルサービスセンター

一村一品運動の一環として

 産直と言えば、郵便局の「ふるさと小包」を忘れることはできない。
 「ふるさと小包」の誕生は 1986 年。従来、郵便局ごとに企画・実施していた産直サービスを取りまとめる形で、全国版のカタログが作成された。全国各地の名産品、特産品の販売を通じて町おこし村おこしに寄与し、同時に「ゆうパック」の取扱数拡大を図ることを目的にスタートした経緯から、参加企業は “生産者”であることが必要条件。生産者からユーザーにダイレクトに商品が届けられる、文字通りの「産地直送」サービスである。
 企画・運営に当たっているのは(財)ポスタルサービスセンターである。同センターはもともとは郵便番号の普及事業のために 1967 年に設立され、「ぽすたるがいど」の前身、「郵便番号簿」の作成などを行っていたが、現在は「ふるさと小包」を主たる業務としている。
 「ふるさと小包」の訴求媒体は、大きく 3 つに分けられるが、メインは約 480 ページにもおよぶ全国版カタログだ。毎年 4 月 1 日の発行で、翌年の 3 月 31 日まで有効。希望者は各郵便局から、850 円で申し込める。現在配布中の「平成 8 年度全国版」に掲載されている商品は 2,621 アイテムで、参加企業の数は2,444。スタート時には854アイテムであったから、10 年で 3 倍以上に膨れ上がったことになる。
 掲載申込は毎年 10 月 1 日から末日に受け付け。指定の用紙に必要事項を記入し、全国各地の郵便局で申し込む。掲載実績のある企業には、申込受付開始以前に(財)ポスタルサービスセンターから申込用紙を送付している。
 この用紙をもとに同センターで掲載の是非を審査するが、原則として、申込者が生産者であり、各地の郵便局から信頼のおける企業である旨の推薦があれば OK。しかし掲載希望者は後を絶たず、カタログ更新時には商品が 1 割落ちて、2 割増えるといった状況。カタログの厚みは増す一方である。そこで「北海道産の蟹」「紀州産の梅干し」など、産地を同じくする同一商品については掲載数を限定し、先着順で打ち切っているという。
 カタログには 1 アイテムにつき天地 7.8cm× 幅8.2cm の均一のスペースが割り当てられており、参加企業は一定のフォーマットにしたがって広告版下を作成し、同センターに届ける。広告掲載料は 1 コマにつき 13 万円。このほか手数料として売り上げの 5%を同センターに収める仕組み。申し込めるコマ数は1企業1コマに制限。配送には、もちろん「ゆうパック」の利用が義務づけられている。
 参加企業が郵便局に支払う送料は地域によって異なるわけだが、「ふるさと小包」は税・送料込みの価格設定。参加企業は、あらかじめどの地域からどれだけ注文がくるかを予測し、価格を決めなくてはならない。はじめて参加する企業にとっては悩みどころだが、2 年目以降は販売実績にもとづき、妥当な価格を設定することができる。
 「チルドゆうパック」の取り扱いは今年 8 月に開始したばかり。4 月発行の全国版カタログには一律に通常の「ゆうパック」利用の場合の価格が設定されている。生鮮品などについては、別途「チルドゆうパック」利用の場合の価格体系を設定し、別冊を作成。カタログに挟み込んで配布している。「ゆうパック」、「チルドゆうパック」それぞれで料金が異っており、申込者がどちらを指定したかは振り込まれた金額で判別できる。
 また、気候の関係で見込んだ生産量が確保できないなど、申し込みに応じられない事情が生じた場合には、随時チラシを作成してカタログとともに配布するほか、郵便振替口座を閉鎖して、混乱を招かないよう対処している。
 全国版カタログのほかに、郵便振替用紙が付いた商品ごとのチラシを配布することもできる。こちらは果物や母の日用のカーネーションなど、季節限定商品などに多く利用されており、随時申し込みを受け付けている。参加企業はチラシの制作費と、手数料として売り上げの 5%を支払うことが必要。また、産直品の頒布会も実施しており、こちらへの参加には、カタログ同様、広告掲載料と売り上げの 5 〜 7%の手数料がかかる。
 「ふるさと小包」にはこれら(財)ポスタルサービスセンターが取り扱っているもののほか、郵便局が独自に行っているものがある。この合計で、1995 年度の取扱品目は約 8,600 で前年度比 3.6%の増加、売上件数は約 2,030 万個で前年度比 4.7%の増加となっている。

数多いロングセラー商品

 一方「ふるさと小包」全国版カタログの 1995 年度の人気商品は、ランキング上位から順に越前そば(福井県)、餅のおまつり(おかき)(福岡県)、熊ざさ茶(北海道)、北信州の完熟ふじりんご(長野県)、倶利迦羅そば(石川県)、黄金漬梅干(和歌山県)、特選マスクメロン(愛知県)…と続く。人気商品の上位は、毎年ほとんど変わらないという。定番商品が「ふるさと小包」そのものの人気を支えているのである。
 価格帯では 3,000 〜 5,000 円が売れ筋。「ふるさと小包」は自家消費のウエイトが高いのが特徴で、中元や歳暮などのシーズンにかかわらず、売り上げはほぼ平均しているという。
 1997 年度からは NIFTY Serve でも商品を提供する予定で、現在試験的に 250 アイテムのオンライン・ショッピングを始動させている。こちらの参加料は 1通アイテム 2 万円。(財)ポスタルサービスセンターが注文を取りまとめ、各参加企業に通知するシステムをとる。
 商品が売れる秘訣は、一にも二にも商品力とマーケティング。カタログの写真が美しい、掲載スペースが見やすい位置にある、ネーミングに工夫がある…といったことももちろん重要な要素ではあるが、それだけでは売り上げを確保することはできない。たとえば「平成8年度全国版」カタログに、紀州産の梅干は約 40 アイテム掲載されているが、同じ産地の同じ品目であっても、売り上げには大きな差がつくのが現実。「顧客データベースを整備し、一度購入した顧客と継続的にコミュニケーションをとっているか否かが売り上げを大きく左右しているのだろう」と、赤坂郵便局郵便営業企画課の上席課長代理である鎮守氏は見る。
 いずれにしても、良心的な広告料金で全国に商品を PR できる「ふるさと小包」は、産直ビジネスの登竜門。テストマーケティング、新規参入に最適なシステムと言えよう。

「全国版カタログ」をはじめ、ギフト用のスペシャルカタログ、チラシなど、さまざまな媒体で訴求されている「ふるさと小包」

「全国版カタログ」をはじめ、ギフト用のスペシャルカタログ、チラシなど、さまざまな媒体で訴求されている「ふるさと小包」

産直ファンに嬉しい「ゆうパックの会」

 一部商品にはクレジットカード決済が利用できるが、基本的に支払い方法は郵便振替による前払い。この郵便振替の領収証が郵便で届くと、掲載企業は郵便局から商品を郵送する。注文から配送までは、平均して 7 〜 10 日。「商品がまだ届かない」「注文した商品と違う」などのクレームには(財)ポスタルサービスセンターが窓口となって対応しているが、申し込み、および商品のお届けは、掲載企業と利用者間でダイレクトに行われている。
 利用者データベースは参加企業各社がそれぞれに管理する形だが、同センターでは「ふるさと小包」ファンを「ゆうパックの会」会員として組織している。会員は首都圏、関西圏を中心に全国津々浦々に分布しており、現在約 8 万人。ここ数年、会員数は横ばいであるという。会員の男女比はほぼ半々。中心年齢層は 35 〜 60 才と非常に幅広く、何年も続けて会員になっている人も多い。
 年会費 1,000 円を郵便振替で支払うと、通常850 円の「ふるさと小包」全国版カタログが届けられるほか、月刊の会員誌「ゆう ing」が郵送される。「ゆう ing」には全国各地のうまいもの情報などのほか、毎号産直品約 100 アイテムが 5 〜 10%を割り引いた特別価格で紹介されている。また、会員からの投稿を募り誌面で紹介するページもある。

「ゆうパックの会」会員に毎月届けられる『ゆう ing』

「ゆうパックの会」会員に毎月届けられる『ゆう ing』

新たな事業にチャレンジ

 「ふるさと小包」の強みは何と言っても全国に隈無く張り巡らされた郵便のネットワークだ。(財)ポスタルサービスセンターでは、これを生かして新たなサービス展開に積極的に取り組んでいる。
 そのひとつがお中元、お歳暮需要に的を絞った年 2 回発行のカタログの「花鳥風月」。全国版カタログから人気の商品、ギフトシーズンに合致した商品を、3,000 円、 5,000 円、7,000 円、1 万円のコースごとに 15 アイテムずつ紹介している。掲載商品は全国版カタログの中から候補商品をピックアップし、参加企業の了承を得るという形で決定する。カタログ掲載料は無料、手数料は売り上げの 15%となっている。
 海外の人気商品を手軽に取り寄せることができるのが「ワールドゆうパック」。食品を中心にアメリカ、アジア、ヨーロッパ各国の名産品約 190 アイテムが一堂に並ぶ。中心価格帯は 3,000 〜 1 万円と、これもお手頃だ。
 逆に海外在住の日本人に向けて、うどんや梅干など、日本の特産品を届けようという試みが「海外ふるさと小包」。アイテム数は50と、そう多くはないが、紀州の梅干、狭山茶、札幌の「西山ラーメン」などの人気の品々がラインナップされている。
 日比谷花壇、花キューピット、草葉ナーセリーとのタイアップで展開している「フラワーレタックス」も人気だ。全国の郵便局で注文すると、4 〜 10 日で指定の届け先に、レタックスとともにフラワーギフトが届けられる。
 産直とはいささか話題がかけ離れるが、同センターでは今年、百貨店やカード会社各社のギフト券を全国各地の郵便局から申し込める「ギフト券めーる」サービスを開始。好調なスタートをきっている。
 中元、歳暮シーズンには、「ふるさと小包」とは別に、地域ブロックごとのギフトカタログも制作される。東京郵政局でも年 2 回、300 ページ余りのカタログを作成しているが、「’96 東京お歳暮特選品」は 32 万部の発行、70 万〜 80 万個の取扱数を見込んでいる。こちらには地場メーカーに限らず、百貨店、専門店、流通業者など幅広い業種の企業が参加。スタートから約 10 年が経過しているが、売り上げは依然 2 ケタ増を続けているという。
 日本一の物流網、「郵便」のネットワークの持つパワーは、まだまだ底が知れないようだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1997年1月号の記事