セールス、マーケテイングの生産性を向上

日本ヒューレット・パッカード(株)

 米国に本社を置くコンピュータ・メーカー、日本ヒューレット・パッカード(株)は、見込客にランクを付け、それぞれのニーズに合った情報をタイミング良く提供することで、成約率のアップを実現している。
 この業務を担当するのが、顧客サービスの向上とセールスおよびマーケティングの生産性向上を目的に設立された、カストマサービスセンタである。
 見込客情報を獲得し、成約につなげていく過程で途切れることなく継続していくコミュニケーションは、「クローズドループ」と呼ばれる。この始まりに当たるのが、年に1回開かれる同社の展示会、HPワールドだ。毎回3万人を超える来場者に対して、会場で簡単なアンケートを実施、その結果からコンピュータへのニーズ、購買決定権の有無などを読みとり、優良見込客リストが作成される。その数はおおよそ、アンケート回答者の 10%程度である。
 次にこれら見込客に電話をかけ、来場のお礼を申し上げると共に、再度ニーズの確認を行う。その回答によって、見込客はさらに3 ランクに分類される。 A ランクの見込客情報は直ちに営業部門にフィードバック、見積書の作成や訪問といった次の営業活動につなげる。「少し考えたい」というB ランクの見込客には、 3 カ月のサイクルで電話をかけ、要望を聞く。「購入は考えていない」Cランクの見込客情報もデータベース化し、定期的に開催しているセミナーの案内や新製品情報などを 1年間にわたり送付。こうしたコミュニケーションの継続によって、当初まったく購買の意志がなかった見込客が、数カ月後に購入を決めるケースも珍しくない。
 HPワールドや新製品の広告展開は、新聞、テレビ、雑誌などで行われるが、同社ではここでも積極的に見込客情報を収集するため、 FAX送信票や返信ハガキを添付したダイレクト・レスポンス広告を増やしている。
 レスポンスの内容は、資料請求、技術的な質問、最寄りの販売代理店の紹介依頼など。このうち資料請求についてはオンライン・システムで川崎市にある同社カタログセンターに、自動的に宛名ラベルが打ち出される仕組みを採用している 。午後3時までに受け付けたものについては当日中に発送手続きを完了するという素早さだ。さらに 、資料送付の際はより詳しい資料の請求、見積もり依頼などの要望を書き込むリプライカードを同封しており、そのレスポンスは半数近くに上っている。
 同社では今後、電話を活用したより積極的な営業活動を展開していきたいと考えている。営業担当者と電話応対を担当するスタッフが密に連絡を取りながら、スムーズに成約までこぎつけることが目的だ。成約までの聞に、営業担当者が見込客を 10回訪問することが必要であるとするならば、このうち7回を電話でのコンタクトに切り替えていきたいとしている。実際に、訪問活動を 1度も行わずに、成約に結びついたケースもでてきており、効果は上がっている。
 何が何でも営業マンが訪問しなければ、セールスは成り立たないと考える時代はもう終わった。むしろ、DMや電話、 FAXなどのメディアを有効に活用することで、訪問活動ではフォローしきれない顧客や見込客とのコミュニケーションが可能になり、ひいては生産性の向上が実現されるのだ。


月刊『アイ・エム・プレス』1996年2月号の記事