コンタクトセンター最前線(第134回):“ママさんコミュニケータ”強みは生活実感 シニア客に好評

(株)ライトアップショッピングクラブ

60歳代の団塊世代をメイン・ターゲットに、カタログやWebでの通販事業を展開する(株)ライトアップショッピングクラブは、お客さまからのコールを一手に引き受けるコールセンターを多摩地区の八王子市南大沢で運営している。同社では、コールセンター業務を“接客”と位置付けて、お客さまとのコミュニケーションを重視する。コミュニケータとして活躍するのは地元の主婦たち。生活実感に富んだ気配りの応対が、好評を博している。

60歳代の団塊世代がボリュームゾーン

 (株)ライトアップショッピングクラブの前身に当たる(株)CBS・ソニーファミリークラブは、音楽レコードの通信販売事業を担うCBS・ソニーレコード(株)の100%子会社として、1971年に設立された。設立後は「非音楽商品」の取り扱いを徐々に増やし、ダウンジャケットや圧力鍋などのヒット商品を創出。1983年には、服飾品や生活・趣味雑貨など“世界中のいいモノ”を幅広く扱う高級路線のカタログ誌『LightUp(ライトアップ)』を創刊している。
 その後1994年には、ソニーがCBSを買収したことに伴い(株)ソニー・ファミリークラブに社名変更。さらに2006年にはソニー・グループから離脱するとともに、フラッグシップ・カタログである『LightUp』の名を冠した現社名に変更、今日に至っている。
 現在、定期発行している主なカタログには、『LightUp』をはじめ、国内の逸品を販売する『Zekoo(ゼクウ)』、メンズアパレルの『BOGARD(ボガード)』、レディスアパレルの『BigTi me(ビッグタイム)』、食品の『食彩倶楽部』など8媒体があり、年間に100種類以上のカタログやDMを製作している。
 会員は、60歳代の団塊世代が中心。こうした層には、同社の通信販売に古くから親しんできた会員が目立つ。少子高齢化の進展を受けてにわかにシニア層を狙う新興の通販会社とは、一線を画している。カタログ・ブランドごとに嗜好やライフスタイルなど、ターゲットを細かくセグメントしており、団塊ジュニア向けの新たなブランド開発にも力を入れている。
 販売チャネルは、紙媒体のカタログやDMがメインだが、Webサイトの展開では、30~40代男性向けのセレクト商品を扱う『BEYES(バイズ)』が好調という。また、同社の顧客は、シニア世代であっても概してインターネット・リテラシーが高く、一般の同世代よりもWebサイトの利用に対する抵抗感をあまり持っていないのも特徴とされる。
 チャネル別の売上構成比を見ると、カタログおよびDMが全体の約7割を占めており、Webサイトと新聞掲載のSA(スペース・アドバタイズメント)がそれぞれ1割程度。このほか、『LightUp』や『BEYES』などのブランドについては、東京や大阪に5店舗を開設している。カタログやWebの通販チャネルとリアル店舗の相乗効果の創出を目指しているのだ。
 このような同社の事業環境の中で、お客さまからの注文や問い合わせといったすべての電話を受け付けるコールセンターが、八王子市南大沢のカスタマーサービスセンターである。

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60歳代の団塊世代を中心顧客とする同社の売上高の7割はカタログやDMによりもたらされている

コミュニケータの在籍期間は3年以上が過半数

 カスタマーサービスセンターの開設は、2002年。それ以前は静岡県の物流拠点に併設するコールセンターで対応していた。しかし、当時はIT環境が現在のようには整備されておらず、本社内にあるカタログの企画制作やMDを担う部門との間でコミュニケーションが思うように取れないことや、受付時間の拡張、受注件数の拡大への対応が、課題となっていた。多摩ニュータウン一帯はコールセンターが多く立地することで知られ、コミュニケータの人材確保の面でもメリットがあった。そこで、約1年間の準備期間を設けて、静岡のコールセンターから段階的に業務を移管。2002年に全面的に稼働を開始している。
 カスタマーサービスセンターは、京王電鉄相模原線の南大沢駅から徒歩5分ほどの距離にあるオフィスビルに入居している。約330坪のフロアは、最大で約120人が勤務でき、休憩や打ち合わせ用のスペースも充実している。
 カスタマーサービスセンターの人員は、2012年10月末現在で総勢約100人。コミュニケータの平均年齢は40歳代となっており、近郊に住む女性が主力を担っている。全員が同社の直接雇用であり、家事や育児などライフスタイルに応じた勤務形態を選んでもらうなど、働きやすい環境を整えるように配慮している。
 コミュニケータを勤務形態別に見ると、フルタイムとパートタイムが半数ずつで構成されている。コミュニケータの定着率は高く、在籍3年以上のスタッフが全体の過半数を占めており、うち在籍5年以上のスタッフも40人に上っている。

応答率は99%をキープ「お客さまを待たせない」

 カスタマーサービスセンターの業務には、各種カタログやWebサイトを見たお客さまからのコールを受ける「受注」と、商品の返品や修理、問い合わせを受ける「アフターサービス」の大きく2つがあり、コールの8割が受注、2割がアフターサービスとなっている。
 受注への対応時間は、平日が午前9時から午後9時で、日祝が午前9時から午後6時。アフターサービスは、平日、日祝ともに午前9時から午後6時。
 いずれも、受付電話番号には、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤルを採用している。受注用は、カタログ向けと新聞掲載のSA向け、VIP会員向けの3番号を使用。カタログごとに異なる番号を用意したり、IVRにより分岐させたりすることは行っておらず、原則として1人のコミュニケータが、すべてのカタログに対応している。一方、アフターサービス用は、「商品配送等について」「お支払いについて」「Web用」の3番号。
 受注とアフターサービスの業務にはそれぞれ、コミュニケータの人員を3対1の比率で配置している。ただし、ACDにより、それぞれの電話番号に入ったコールをスキル設定に応じて、担当業務の枠を超えてコミュニケータに振り分けることで、運営の効率化を図っている。KPIとして採用する応答率は、目標を99%と極めて高く設定してはいるものの、すでにこれをおおむね達成できているという。
 特に、受注では、購入を思い立ったお客さまからのコールへの迅速な対応を重視する同社の方針もあり、99%台の中盤をコンスタントにキープしている。受注のコールは、会員向けカタログ発行やSA出稿のタイミングで大きく跳ね上がるが、長年のセンター運営のノウハウを生かしたコール数の予測に基づき、コミュニケータのシフトを適切にコントロールして、コールの増分を吸収している。

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多摩ニュータウンの南大沢にあるコールセンターでは、近郊に住む女性を中心に約80人がお客さまからの電話に対応している。右上はコミュニケータ用の休憩スペース

当意即妙、臨機応変な応対は腕の見せどころ

 受注の大まかな受付フローは、まず会員登録の確認に始まり、次に、お客さまの接触媒体を確認した上で、注文商品を聞くという流れ。コミュニケータは端末を操作して、会員情報や商品情報のデータベース、およびカタログや広告の画像データを参照しながら、個々のコールに対応している。
 ただし同社では、こうしたオペレーションを単なる受注処理ではなく、“接客”として位置付けている。コールを機械的に処理するのではなく、電話口のお客さまとのコミュニケーションの質を重視しているのだ。
 そのため、会員情報のデータベースは、住所や氏名などの属性情報をはじめ、受注履歴、商品に対する満足度、会話の内容など、お客さまへの対応に役立つあらゆる情報をテキストベースで登録できる仕様となっている。個々の会員に対応するコミュニケータがコールのたびに代わっても、データベースの会員情報に基づき、一貫性のあるきめ細かな対応を可能にしているのだ。
 一方、商品情報については、すべての商品の仕様書が登録されており、商品の細部にかかわる問い合わせにも、スムーズに対応できるように工夫されている。それでも即答できない情報については、担当部署やメーカー側に照会した上で、お客さまに電話をかけ直すことになるが、こうした情報も随時、データベースに追加され、以降の問い合わせ対応に生かせる仕組みとなっている。
 同社の取扱商品は幅広く、新商品も随時追加される。お客さまのニーズも多様であることから、お客さま対応の奥は深い。商品に対するお客さまの疑問や関心に注意深く耳を傾けることはもちろん、時には、当意即妙の受け答えや、購入をためらうお客さまに対するアドバイスも大切になってくる。こうした臨機応変な対応は、コミュニケータの資質に左右される部分が大きく、生活実感に富み、女性らしい繊細な感性を持つ“ママさんコミュニケータ”の腕の見せどころとなっている。

コミュニケーションが活発で一体感のある職場

 コミュニケータの人材は、欠員などが生じた場合に、地元のフリーペーパーに掲載する求人広告を通じて募集している。採用後、新人コミュニケータは、主に端末操作の習得を中心とする10日ほどの研修を経て着台し、以降はOJTを通じてスキルを身に付けていく。
 フォローアップ研修は特に体系化されてはおらず、日常的な職場のコミュニケーションや先輩コミュニケータの対応ぶりを見習って、接客のテクニックやノウハウを自然と身に付けてもらう仕組みとなっている。
 職場のコミュニケーションは概して活発で、プライベートで友だち付き合いをするケースも少なくない。シフトが過密になる年末など繁忙期には、コミュニケータが気を利かせて、シフトを組みやすいよう勤務の就業希望日数を多めに提出してくれているといったことからも、職場の円滑な人間関係がうかがえる。
 センターの運営体制を見ると、受注では、管理スタッフの社員を中心に6人のリーダーがおり、その下に一般のコミュニケータが配置されているのに対して、アフターサービスでは、ベテランのコミュニケータ一人ひとりが顧客対応のスペシャリストとして、会員からのコールに対応している。商品の返品や交換、修理といったコールに限らず、顧客自身の生活体験や慣習に基づくイメージの相違や、これに伴う不満など、取り扱いが微妙なクレームも少なくない。時には、お客さまの気分を害さぬように、やんわりといさめる技量も要求されることになる。
 センター運営のKPIとしては、唯一、応答率を採用しており、前述の通り、99%の高水準がキープされている。“接客”の品質向上に各コミュニケータが専念できるようにとの配慮から、応答率以外の数値的な目標やノルマはあえて課していない。また、常連のお客さまには60代を中心とした年配者も多く、コミュニケータとの触れ合いを楽しみにしている方も少なくない。そのため、応答時間を短縮するべく機械的な対応に終始するのではなく、むしろお客さまに会話を楽しんでいただくことに重きを置いている。ちなみに、受注の平均応答時間は3分程度。コールに対応するコミュニケータが、電話口のお客さまと談笑する姿は、カスタマーサービスセンターでは、日常的な光景となっている。

日々、500~600件の応対記録に目を通す

 男性向け通販市場の開拓など、他社に先駆けて独自の事業展開でお客さまの心をつかんできた同社ではあるが、近年では、後発の事業者の参入も相次ぎ、営業環境は厳しさを増している。こうした中、お客さまの声に耳を傾ける顧客接点としてのカスタマーサービスセンターの役割も、その重要性を増しつつある。
 カスタマーサービスセンターで受電し、コミュニケータによってテキスト化された主な応対記録については、応答品質の改善活動の一環で、所長ら管理スタッフが、翌日には、そのすべてに目を通すことにしている。1日当たり500~600件に及ぶ応対記録の中から、サービス改善の貴重な“気づき”が得られることも少なくなく、日次で本社の全社員にフィードバックしている。
 こうした地道な取り組みを積み重ねることで、お客さまとのコミュニケーションの質を一層高め、顧客本位のきめ細かなアップセリングなど、オペレーションの高度化につなげていきたい考えだ。


月刊『アイ・エム・プレス』2013年1月号の記事