コンタクトセンター最前線(第107回):修理受付の集約により拠点の業務負荷軽減と応対品質の向上を推進 顧客満足度の向上を目指す

三和シャッター工業(株)

三和シヤッター工業(株)では、2009年10月に全国の拠点に分散していた修理受付とお客様相談受付を一手に担うカスタマーセンターを新設した。これにより、各拠点の業務負荷を軽減させることに成功。現在は、応対品質を向上させ、顧客満足度を高めることに注力している。

お客様相談センターと修理受付を統合しカスタマーセンターを開設

 三和シヤッター工業(株)は、1956年に創業したスチール建材のトップメーカーである。「安全・安心・快適を提供し社会に貢献する」ことを使命とし、社名にあるシャッターだけでなく、ビル・マンションドア商品、間仕切り商品、窓まわり商品、住宅ドア商品、エクステリア商品、ガレージ商品などを提供。商品設計から生産、施工、メンテナンスまでをトータルで管理することで、顧客の信頼を獲得している。
 今回紹介するカスタマーセンターは、商品に関する問い合わせ・意見・要望への対応、カタログ請求および修理受付を行う、コンタクトセンターである。下記の4つを目的に、2009年10月に開設された。
 目的のひとつは、修理受付業務の集約である。もともと修理受付は、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル・サービスを利用して、全国共通のフリーダイヤル番号で受け付け、発信地域により沖縄を除く全国195カ所の拠点に振り分けていた。この受付体制には、既存のインフラを有効活用できる、地域密着型の対応ができるといったメリットがあるのだが、その反面、各拠点の業務負荷が大きくなる、拠点ごとに応対品質にバラツキが生じるといった課題が生じていたのだ。
 2つ目は、顧客満足度の向上である。修理受付業務を一元化することで、応対品質のバラツキを解消して応対レベルの底上げを図り、顧客満足度を高めようというのだ。
 3つ目は、顧客情報の共有化である。これまで修理受付に関する情報は、拠点ごとにアクセスで管理しており、その共有には時間と手間がかかっていた。そこで、CRMシステムを導入し、顧客情報を全社で共有することを目指したのである。
 そして4つ目は、VOCの社内発信である。問い合わせ・意見・要望を蓄積・集計・分析して社内に発信することで、苦情の再発防止や商品開発に役立てることが狙いだ。

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手前と奥のパーティションのあるブースが、一般修理受付課とお客様相談受付課。中央には、主にエスカレーション対応を行う社員が控えている

CS 推進室を発足させ集約に挑む

 修理受付の集約に向けて、同社では2009年4月にCS推進室を発足。コールセンターシステムの検討・導入やオペレータの採用・教育などを行い、東京・板橋の本社内にお客様相談センターと全国の修理受付を集約するかたちでカスタマーセンターを構築していった。
 スムーズな集約を行うために、同センターでは、まずは首都圏の受け付けからスタート。その後、東日本エリア、西日本エリアへと順次、対象エリアを拡大していき、2010年6月23日に195カ所の完全統合を実現した。
 今回の集約は、オペレータの採用から教育、システムの導入と、ゼロからセンターを立ち上げたようなもので、CS推進室のメンバーにとっては初めての経験。社内ではさまざまな苦労があった。しかし、全国共通のフリーダイヤル番号で修理を受け付けていたため、受付拠点が変わってもお客さまの混乱を招くことなく、対外的には非常にスムーズに集約を行うことができたという。
 なお、現在同センターは、2010年4月に行われた組織変更に伴い品質保証部の下で運営・管理されている。

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商品ガイド(上)やWebサイト画面(下)で、一般修理およびお客様相談の受付番号を告知している

専任チームでの対応により迅速かつ的確な対応を実現

 カスタマーセンターのスタッフ数は、社員、派遣、パートタイマーを合わせて45名。受付内容ごとにチーム分けがなされている。具体的には、①エンドユーザーおよび設計事務所や建設会社などから寄せられる商品に関する問い合わせ・意見・要望に対応するお客様相談受付課、②エンドユーザーを対象とした一般修理受付課、③主にハウスメーカーを対象とした窓修理受付課、④窓修理手配課、⑤明治アルミ修理受付課で、おのおの専任のスタッフが対応することで、迅速かつ的確に対応することに努めている。
 同センターは、基本的に本社内に設けているが、⑤は栃木と大阪で受け付けている。
 電話窓口には、お客様相談受付は一般加入回線、一般修理受付は前述の通りフリーダイヤル・サービスを利用。その他の修理受付には、おのおの専用の番号を用意している。
 同社が一般修理受付にフリーダイヤルを導入したのは1980年代後半で、建材メーカーの修理受付窓口の中では、いち早く導入した。番号は、0120-303017(さんわさんわい〜な)という語呂の良い番号で、カタログに印刷したり、Webサイトで告知したりすることで、顧客への周知に努めている。
 受付時間帯は、お客様相談受付が月曜から金曜の9時から17時まで。修理受付は、一般修理受付が24時間・年中無休で、窓修理と明治アルミ修理受付が9時から18時までとなっている。
 一般修理受付は、8時から18時30分までは同センターで受け付けているが、平日の18時30分から翌8時までと土日・祝日の受け付けはアウトソーシングしており、東京、岐阜、大阪の3カ所のアウトソーシング先に振り分けている。
 アウトソーシング先への入電切り替えには、フリーダイヤルのカスタマコントロールを利用している。カスタマコントロールは、パソコンでフリーダイヤルの設定を照会・変更できるオプションサービスである。これを使って、曜日ごとに決められた時間になると自動的に切り替わるよう、あらかじめ設定しているのだ。

システムをカスタマイズし地域密着型の対応を新体制でも継承

 コールセンターシステムには、(株)コラボスのASP 型CRMシステムのCOLLABOS CRM を採用している。ASP型の顧客情報管理システムを採用した理由は、限られた予算で、かつ短期間に利用を開始できるという2点にあった。
 今回の集約に当たり、同センターでは気掛かりなことがあったという。それは、従前の受付体制のメリットである地域密着型の対応がしづらくなることだった。これには、システムでサポートするのが効果的であると考えた同センターでは、COLLABOS CRMをカスタマイズ。郵便番号の入力で、住所が町名まで自動入力できる機能を付けた。
 従来の修理受付では、受付内容および作業の進捗状況は各拠点がアクセスで管理しており、全社で共有するためには時間と手間を要していたが、6月に全拠点の完全統合を果たしたことから、今後は以前よりスピーディーに修理状況を把握できるようになることを期待している。

相談受付と一般修理受付のコールの流れ

 エンドユーザーおよび設計事務所などから相談受付に寄せられた電話は、お客様相談受付課に着信。専任のオペレータが問い合わせ・意見・要望への対応、カタログ請求といった用件に対応し、応対履歴をCRMシステムに登録する(図表1)。

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 同課では、一次解決率を高めることに注力しているが、例えば、設計事務所から法規に関することなど専門的な問い合わせが寄せられた場合は、専門部署に確認の上、コールバックすることで対応している。
 苦情が寄せられた場合は、CRMシステムへの登録とは別にお客様相談受付シートを起票。至急、主管部署に連絡し、迅速な対応を促す。
 また、登録情報を集計し、問い合わせの傾向や請求の多いカタログなどを3カ月に1度レポートとして全社に配信し、顧客ニーズの把握と共有を推進。苦情については、毎週レポートを配信することで同様の苦情の再発防止に努めている。
 修理受付に寄せられた電話は、一般修理受付課に着信。オペレータが顧客の住所・氏名、使用商品や故障内容などを丁寧に聞き取り、CRMシステムに登録する。CRMシステムは全国195カ所の拠点にも導入されているため、CRMシステムに受付内容を登録した時点で担当拠点への引き継ぎが終了する。修理依頼を引き継いだ拠点がサービススタッフに修理を依頼すると、サービススタッフが顧客のもとへ出動するといった流れだ(図表2)。

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 修理対応には、受け付けから30分以内に顧客に連絡、3時間以内に修理対応、3日以内に修理を完了させるという目標があり、これに則って作業を進めている。従来は、このルールが守られているか検証・把握することが難しかったが、各拠点にCRMシステムへの入力を徹底させることで各拠点の修理状況を把握することが可能となる。今後は、ルールが守られていない拠点があれば、遅れた原因を探って問題点を解決することができるため、修理におけるサービス品質のレベルアップも図っていきたいとしている。

課題は応答率の向上

 現状の課題として、カスタマーセンターでは応答率の向上を挙げている。目標値は80%としているが、休み明けの午前中、特に9時から10時には入電が集中することから応答率が30%にまで低下してしまうのだ。この時間帯はオペレータを増員して対応しているが、取り切れないのだという。夏は台風や雷が多く、修理が増えることも応答率を低下させる一因であると同センターでは見ている。
 この解決策としては、ピーク時だけ以前のように各拠点にも入電させるという方法があるが、各拠点の業務負荷軽減のために集約したという経緯を考えると、何とも悩ましいところだ。

評価に基づいたフォローアップ研修を展開

 同センターでは、2010年7月から評価制度を導入した。評価は、オペレータひとりにつき2通話を社員がモニタリングし、チェックシートに記入していくという方法で行っている。7月に行った1回目の評価の結果に基づき、この9月からフォローアップ研修を実施する予定だ。
 さらに、オペレータのモチベーションを高めるための取り組みとして、モニタリングスコアが高かったオペレータに商品と賞状を授与する表彰制度を計画中とのこと。こうした取り組みを通じて応対品質のレベルアップを図り、より一層の顧客満足向上を目指していくという。
 そのほかの取り組みとしては、前述の通り、苦情の再発防止に注力する意向。一般修理受付に入電する苦情に対して、同センターが再発防止策を立案し、拠点の運用精度を高めていきたいとしている。
 また、VOCの共有と活用にもこれまで以上に注力していく構え。商品改善・開発の提案を行う一方、VOCを見える化する仕組みを構築し、社内フィードバック体制を強化していきたいとしている。
 完全統合を終え、新体制でスタートしたばかりのカスタマーセンターだが、すでにグループ企業の問い合わせ受付の統合も見据えている。これを実現するためには、新生カスタマーセンターの運用を成功させることが不可欠であると、同センターでは意気込んでいる。


月刊『アイ・エム・プレス』2010年10月号の記事