コンタクトセンター最前線(第84回):キャンペーンでアクセスを促進し愛用者アドバイザーがカツラに関する悩みに対応

(株)スヴェンソン

ドイツ生まれの増毛法「ヘアウィービングシステム」で美と健康をサポートする(株)スヴェンソン。同社では、2008年7月にカツラでお困りの方を対象とする無料相談窓口「カツラSOS」を開設した。受付拠点には、全国各地のスタジオを活用。カツラの使用経験を持つ愛用者アドバイザーが相談に当たることで、お客さまの視点に立った対応に努め、カツラに関する悩みの解決に取り組んでいる。

不満や不安の解消を目的にカツラSOSを開設

(株)スヴェンソンは、1984年に創業して以来、25年にわたりドイツ生まれの増毛法「ヘアウィービングシステム」(編み込み式増毛法)を提供しているカツラ・増毛メーカーである。薄毛に悩む方は昔から多いが、カツラを使用していてもそれを隠すケースが大半であるため、使用感などの情報を入手することは難しい。また、料金が不透明であることから、購入に不安を感じるお客さまも少なくない。一方、カツラユーザーにおいては、一度に複数の商品を購入しなければならなかったり、メンテナンスのたびに新しい商品を勧められたりすることを不満に思う方も多く、国民生活センターなどにも苦情が寄せられているという。
 同社ではこうしたカツラ・増毛業界にまん延する不安、不満を解消するべく、料金の開示や、定期定額制度の採用、脱スペア(複数のカツラを販売しない)の推進、カツラ使用経験を持つ愛用者アドバイザーの導入など、お客さまに満足していただける増毛法の提供に取り組んできた。こうした取り組みをより多くのお客さまに知っていただくと同時に、不安、不満のより一層の解消を目的に、2008年7月18日、カツラでお困りの方を対象とする無料相談窓口「カツラSOS」を開設。電話、eメールでの受け付けをスタートした。

キャンペーンを展開しアクセスを促進

 カツラSOSの開設に先駆けて、同社では企業イメージキャラクターにサッカー解説者の松木安太郎氏を起用。記者発表を行い、東京と大阪でテレビCMを放送したほか、全国紙に全面広告を出稿。さらに、専用のWebサイトを通じてカツラSOSを大々的に告知した。
 しかし、カツラの悩みは深刻である。誰かに打ち明けるには勇気がいる。無料相談といっても、すぐに相談していただくことは難しいと考えた同社では、相談に対する心理的障壁を低くするために、カツラの基礎知識やカツラに関する悩みをまとめた小冊子などの資料を用意。これを1万人限定でプレゼントするというキャンペーンを行い、カツラSOSへのアクセスを促進した。
 冒頭で述べた通り、カツラSOSの主な役割は、カツラに関する悩み相談への対応にある。そのため、お客さまが希望した場合を除き、自社商品のセールスは行わず、一般的なカツラ・増毛の知識の説明と悩み相談にとどめている。
 中には、相談がきっかけとなって、同社の商品に興味を持っていただけたり、件数は少ないものの契約に結び付くケースもある。しかし、同社では契約獲得に大きな期待は寄せていない。現状、カツラ・増毛の市場における同社の認知度は競合に比べて低いことから、同社ではカツラSOSを通じて自社の認知度向上が図れることを期待している。

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カツラSOSのWebサイトと資料請求画面(左・中)/新聞広告「カツラSOS始まる篇」(右)

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資料請求者に送付する「SOS GUIDE BOOK」と「カツラーの秘密」。「SOS GUIDE BOOK」は、25年間、お客さまの声に耳を傾けてきた経験を活かして作られた。「カツラーの秘密」は、作家・スポーツライターの小林信也氏が自らのカツラ経験を執筆した文庫本

全国のスタジオを受付拠点として活用し初期投資を抑える

 同社は、カツラSOSのほかに、販売を目的としたコールセンターを持っている。これとカツラSOSとは役割が異なることから、明確に差別化を図るために、同社では新たにNTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤル番号を導入。テレビCMの数秒の間で視聴者に印象付けることのできる、覚えやすい番号を採用した。
 また、フリーダイヤルに高機能な振り分け機能を備えたフリーダイヤル・インテリジェントサービス(以下、インテリジェントサービス)を利用して、全国に分散する25カ所のスタジオ(店舗)を活用した受付体制を構築した。同社では、新たな受付拠点を設けないことに加え、大きなシステム投資を行わないことにより、イニシャルコストを最小限に抑えた。
 使用回線数は、全スタジオで計60回線。東京と大阪に14スタジオあることから、回線数の約半数は2都市で使用している。最近は、固定電話を持たないお客さまもいることから、携帯電話からの着信も可能にした。

カツラ使用経験を持つ愛用者アドバイザーが対応することへのこだわり

 電話窓口の受付時間は、24時間・年中無休だが、業務内容により受付時間が異なる。相談はスタジオの営業時間と同じ、平日の午前10時から午後8時までと、土日・祝日の午前9時30分から午後6時まで。ただし、受付状況によって相談時間を延長することもある。一方、資料請求は24時間・年中無休で受け付けている。
 スタジオの営業時間内は、相談も資料請求もスタジオで受け付けるが、閉店後の資料請求についてはテレマーケティング・エージェンシーに受付業務を委託することで、24時間・年中無休の受付体制を実現した。
 相談に当たるのは、38名の愛用者アドバイザーたち。カツラSOSの開設に当たり、同社ではこの愛用者アドバイザーが対応することに強くこだわった。その理由は、カツラを検討している方やカツラで悩んでいる方の状況や心情をより深く理解し、お客さまの視点に立った対応を行うためには、同じ経験を持つ愛用者アドバイザーが最も適任であると考えたからだ。カツラSOSの開設以前より、スタジオには可能な限り愛用者アドバイザーを配置していたが、一部、愛用者アドバイザー不在のスタジオがあったため、カツラSOSの開設を機に、全スタジオに愛用者アドバイザーを配置。すべての相談に、カツラ使用経験者が対応できる環境を作った。

インテリジェントサービスで機能的なコールフローを実現

 図表1は、カツラSOSのコールフローである。お客さまからコールが寄せられると、その発信地域を担当するスタジオに自動的に着信する仕組みになっている。

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 勇気を出して電話をかけてきてくれたお客さまをお待たせしないために、最寄りのスタジオの回線がすべて話中であったり、接客中などで電話対応ができないといった状況を想定して、9カ所の転送先を設定。全回線話中の場合にはインテリジェントサービスの「話中時迂回接続」、10秒以上お客さまをお待たせしてしまう場合は同じく「無応答時迂回接続」を使用して、あらかじめ設定しておいたほかのスタジオにコールを自動転送している。これにより、迅速かつ確実にお客さまに対応できる体制を整えた。
 スタジオの受付時間外には、委託先のコールセンターに自動的に切り替わる仕組みになっている。この仕組みも、インテリジェントサービスの「受付先変更」を使用して実現した。受付時間外に相談を希望するお客さまには、後日、スタジオの営業時間内にかけ直すか、愛用者アドバイザーからコールバックするかのどちらかを選択してもらっている。
 さらに、前記のように、相談の受付時間を延長する際には「カスタマコントロール」を使用。カツラSOSを統括するMen’s事業部で、その都度、受付先を切り替える時間の変更を行っている。
 eメールの受け付けもフリーダイヤルと同じく、お客さまの最寄りのスタジオで行っている。地域ごとの振り分けは、お客さまに入力していただく郵便番号をキーにしている。

さらなるコミュニケーションの活性化に努める

 相談受付を開始する前、同社ではコールの大半が資料請求だろうと予測していた。ところが、実際に受け付けを開始してみると、予想以上に相談が多く寄せられる結果となった。
 通話時間は、コールごとにばらつきがある。資料請求の場合は数分で終わるが、相談には1件当たり30分を要することも珍しくなく、長いものでは1〜2時間に及ぶ。
 相談を通じて、カツラに関する悩みの深さを改めて感じた同社では、カツラSOSのさらなる認知度向上を目的に、8月上旬に全国紙に再び広告を出稿した。イメージキャラクターの松木氏を取り囲む言葉は、実際にカツラSOSに寄せられたお客さまの生の声である。「接着剤で頭皮がベトベトする」「使っていないカツラが家にいっぱい。ローンも大変なんです」などのリアリティーに溢れたコピーは、さらにアクセスを促進した。今後は、マスメディアを活用した大々的なPRの予定はないが、カツラSOSでの相談業務は継続していく方針だ。
 同社では今後、より一層、カツラSOSでのコミュニケーションを活性化していく意向。カツラSOSを通じて、スヴェンソン商品、他社商品を問わず、カツラをポジティブにとらえて、楽しく使ってもらえる風土が醸成されることを期待している。

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新聞広告「カツラSOS悩み気づき篇」。イメージキャラクター松木氏の周りを取り囲むように書かれているのが、カツラSOSに寄せられたお客さまの声


月刊『アイ・エム・プレス』2008年11月号の記事