コンタクトセンター最前線(第82回):応対品質を改善してCSを向上 お客様の声から売り上げにつながる新サービスを発掘

(株)ケンウッド

ホームオーディオやカーオーディオなどで親しまれている(株)ケンウッド。同社では2000年8月、お客様相談室をカスタマーサポートセンターとして再構築し、CTIの導入や同社ならではの人員構成でCSの向上に努めてきた。その一方で、お客様の声を重視。お客様の声から生まれた新サービスは評判が良く、売り上げにも大きく貢献している。

全ケンウッド製品の問い合わせを受け付け

 “ 新鮮な驚きや感動で人々に幸せな気持ちを創ろう。”という企業ビジョンの下、製品作りやサービスの提供を推進する(株)ケンウッド。同社・横浜事業所内にあるカスタマーサポートセンター(CSC)は、ショールームと並んでお客様と同社をつなぐ重要な顧客接点として位置付けられており、すべてのケンウッド製品に関する問い合わせを受け付けている。
 受付チャネルは、電話とe メールを使用。電話窓口には、NTTコミュニケーションズ(株)のナビダイルを導入している。ナビダイヤル番号には、親しみやすく覚えやすいよう、下6ケタに「音いいよ(0570−010−114)」という同社らしい番号を採用した。受付時間帯は、月曜から金曜日の午前9時30分から午後6時までと、土曜日の午前9時30分から午後5時30分まで(ただし、土曜日の12時から午後1時までは休憩)。日・祝日は休業となっている。
 席数は最大25席。スタッフ数は、一次受付を担うオペレータが9名、二次受付を担う技術者が9名の18名。このほか、5名の技術者が18名をサポートするために控えている。
 基本的に、電話での問い合わせにはオペレータが対応するが、内容が専門的な場合は技術者に対応を代わる。eメールへの対応は二次受付を担当する技術者が兼務しており、2営業日以内に90%の返信を目指している。

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カスタマーサポートセンターの告知は、パンフレットやWebサイトで行っている。Webサイトでは、運転中に携帯・PHSから問い合わせる場合は、安全な場所に停車してから連絡するよう注意を促している

CSアップに向けて受付体制の改善に着手

 CSCの発足は2000年8月。それ以前は、東京と大阪の2カ所にお客様相談室を開設しており、技術者が直接、対応に当たっていた。当時は、技術者がひたすら電話を受けるという状態が続いており、平均応答率は40%と低迷。豊富な専門知識を持つ優秀な人材が対応していたにもかかわらず、残念なことにお客様満足度の高いセンターとは言えない状況だった。さらに、電話がつながりにくいだけでなく、東京と大阪で回答が異なるといった対応のバラツキも満足度を下げる原因となっていた。ちょうどそのころ、業種を問わずCS(Customer Satisfaction)向上を目指す取り組みが活発化。同社においても、CSへの意識が高まっていたことを契機に、単に問い合わせを受け付けるだけでなくお客様に満足していただけるセンターを目指そうと、受付体制の改善に着手したのである。

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大きめのデスクを使用し、ゆとりを演出しているカスタマーサポートセンター。右奥の壁には過去の製品も含めた取扱説明書が、向かって正面の壁にはカーナビゲーションなどの製品が置かれている。オペレータたちは、必要に応じて確認のために足を運ぶ

技術者がマン・ツー・マンでオペレータを指導

 まず同社では、お客様相談室を1カ所に集約して名称をCSCに改めると同時に、一次受付にオペレータを起用。技術者は二次受付に当たるという現在の人員体制を構築した。
 一言で製品に関する問い合わせ受付と言っても、同社のそれは難易度が高い業務である。なぜなら、ケンウッド製品は、カーオーディオ、カーナビゲーション、ホームオーディオ、ポータブルオーディオ、電話機・無線機など複数カテゴリーに及ぶ。加えて、受け付けの対象は見込客と購入客の双方で、問い合わせ内容も購入前相談、購入後の取扱方法、製品の取り付け方、故障診断、苦情、直販サイト「ECダイレクト」のテスト用トランシーバー無料貸出受付と多岐にわたるからだ。さらに、豊富な専門知識を必要とする技術的な問い合わせが多いことも、応対の難易度を高める大きな要素となっている。
 こうした事情を踏まえ、CSCではオペレータと技術者のマン・ツー・マン体制を採用した。一般的にお客様には、オペレータは質問に応えて当たり前という認識が少なからずある。そのプレッシャーに負けず自信を持って応対するには、専門知識を持った技術者の手厚いサポートが必要と同社は考えたのだ。大勢の技術者を雇用するメーカーだからこそ実現した人員構成と言える。マン・ツー・マン体制の効果はオペレータの勤続年数に現れており、5年以上勤めるオペレータも珍しくない。

ハード面からも運営を改善

 さらに、コンタクトセンターシステムの機能も向上した。具体的には、CTI(Computer Telephony Integration)を導入して端末画面に表示した「応答」「切断」「保留」などのボタンで電話機能を制御するソフトフォン機能、過去6カ月以内の修理履歴データベースの閲覧機能を持たせた。このほか、コールをエスカレーションする際にオペレータ端末に表示している情報を技術者に引き継げるようにもした。
 また、CSCではサービスの均一化を目的に、2005年4月にNTTコミュニケーションズ(株)のナビダイヤルを導入した。CSCは1拠点で運営していることから、発信地域によってお客様が負担する通話料に違いが生じる。そこで、通話料の負担を等しくするために、発信者(お客様)と着信者(ケンウッド)で通話料を分担できるナビダイヤルを採用。発信地域にかかわらず全国一律市内料金の負担のみで問い合わせていただける環境を整えたのである。また、移転しても同じナビダイヤル番号を継続利用できる点も、導入の決め手になった。
 以上のように、さまざまな角度からセンター運営の改善を図った結果、CSCではスピーディーで的確な情報提供が可能になり、応対品質の均一化と平均応答率の向上につながった。現在、平均応答率は80%に達しており、電話がつながらないことに対するクレームは以前に比べて少なくなっている。

伸びる平均通話時間

 CSCに寄せられる1カ月当たりの問い合わせ件数は9,000件。このうちeメールが2,000件。双方を合わせて年間で約11万件の問い合わせが寄せられる。問い合わせ内容は、取扱方法と商品・技術説明の2項目で全体の約半数を占める。製品ジャンル別の問い合わせ件数比率は、図表1の通り。

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 平均通話時間は5〜10分。近年のメモリーオーディオの普及に伴い、それまで2〜3分だった平均通話時間が倍以上に伸びた。お客様の中にはパソコンに関する知識が少ない方もいるため、このところCSCでは、パソコンのテクニカルサポートさながらのやり取りが見られるという。

お客様の声から売り上げに貢献するサービスが誕生

 お客様から寄せられる問い合わせの中に、製品作りやサービス改善に役立つ情報が潜んでいると考える同社では、お客様の声を重視。CSCと同様にお客様の声収集機能を持つショールームと連携して、開発、ECダイレクト、マーケティングなどの部門へ情報をフィードバックしている。
 現在、CSCで受付業務を担っているECダイレクトのテスト用トランシーバーの無料貸出は、お客様の声から生まれたサービスである。飲食店やアミューズメント施設、各種イベントや学校などで利用されているトランシーバーは、免許や申請の必要がなく、購入後すぐに使える手軽さを特徴としている。しかし、トランシーバーは通話品質が使用環境に左右されることから、購入しても使えなかったらどうしよう……と、不安を抱くお客様が多い。そこで、実際の使用環境でトランシーバーを試せるよう、テスト用トランシーバーを無料で貸し出すサービスを始めたのである。同サービスは好評で、利用者の6〜7割が購入につながるほど効果的な販促手法となっている。着実に申し込み件数が増えていることから、CSCではさらなるトランシーバーの売上拡大を期待しているところだ。

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お客様の声を基にスタートしたECダイレクトのトランシーバー無料貸出サービス

課題は製品知識の習得とスキルの標準化

 電話ではお客様の顔が見えないため、オペレータは声や話すスピード、会話の間からお客様の気持ちや状況を察して応対しているが、それは逆に、オペレータの声からお客様が感じ取る情報もあることを意味する。従って、十分な製品知識を持たないオペレータが応対すれば、お客様はオペレータの自信のなさを察知して不安感を覚えるかもしれない。CSCでは、どのオペレータがどんな内容の問い合わせを受け付けても、自信を持ってスピーディーかつ的確な対応ができるよう、人材育成にも力を注いでいる。
 CSCの特徴とも言えるオペレータと技術者のマン・ツー・マン体制は、オペレータを手厚くサポートするだけでなく教育にも有効だ。万一、オペレータの回答に間違いがあった場合、技術者が即座に指導することができる。さらに実践を通じて得たスキルは、そう簡単には忘れないものだ。
 新製品に関する教育には、企画・設計者のレクチャーを取り入れている。製品スペックに加えて、コンセプト、開発意図などを企画・設計者に語ってもらうほか、実際に音を聞くことで、製品への理解を深めているのだ。1回のレクチャーは数時間に及び、企画・設計者の業務負担も大きい。しかし、オペレータが開発の背景を知ったり、音を体感したりすることはとても大切で、こうした経験があるからこそ、例えばクラシック好きのお客様には「バイオリンの高い音がきれいに出ていた」というように適切な情報を伝えることができるようになるという。製品知識の習得は一朝一夕にはなし得ない。それだけに、CSCにとって永遠の課題とも言える。
 もうひとつ、CSCを悩ませていることがある。それは、感性に近いスキルの継承と標準化である。CSCの離職率は低いが、それでも結婚や出産を理由に退職するオペレータがいる。中でもベテランオペレータが退職すると、何年もの歳月をかけて培ってきたオペレータ固有のスキルまで失ってしまうのだ。こうした事態を回避するために、CSCでは、オペレータ固有のスキルを標準化し、継承していく方法を模索している。

費用対効果を見ながらシステム導入を検討

 CSCでは、問い合わせ対応が終了した時点で、お客様に不満点を尋ねている。回答の集計結果を見ると、待ち時間が嫌だと答えた人が40%と最も多かった。待ち時間のイライラを緩和するには、待ち時間をアナウンスする、コールバックサービスを導入する、IVRによるセルフサービスを提供するなど、システムによる施策が考えられるが、ただ闇雲にシステムを導入するだけでは効果は期待できない。CSCでは、さまざまな事例に学びながらCS向上に寄与するシステム導入を検討していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年9月号の記事