コンタクトセンター最前線(第75回):買い物相談を通じて売り上げに貢献しプロフィットセンターとしての地位を確立

トステム(株)

住宅用アルミサッシ・ドアの国内シェアNo.1のトステム(株)。同社では、お客様の“安心・安全・満足”を第一に考え、より質の高い商品・サービスが提供できるよう、お客様との直接的な接点であるお客様相談室の対応力と、そこで得られたお客様の声を各部門へフィードバックする体制の強化に努めている。また、お客様相談室では売り上げへの貢献度を把握し、社内に示すことでプロフィットセンターとしての地位を確立。相談員のモチベーションアップも実現している。

お客様に喜ばれる受付窓口のかたちを追求

 トステムのお客様相談室は、エンドユーザー、工務店、設計事務所、販売店といった同社におけるすべてのお客様を対象とした問い合わせ窓口である。役割別に3つのグループに分かれており、「商品相談グループ」では商品の購入や使い方に関する相談、資料請求などに対応。「部品修理相談グループ」では、部品修理などの相談に対応。そして「運営企画グループ」では、両グループの研修と社内へのフィードバックを担当している(図表1)。

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 同社がお客様相談室を開設したのは1996年11月。さまざまな企業のコールセンター開設時期と比較すると後発組だ。しかし、開設後は常にお客様に喜ばれる窓口のかたちを考え、受付体制を整えてきた。1999年にはNTT コミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを導入。顧客満足の観点から、国内のどこからでも無料で問い合わせをしていただける体制を整えた。後に、同様の観点から携帯電話・PHSからの着信も可能にし、お客様の利便性を高めている。2001年2月には、それまで商品ごとに設けていた問い合わせ窓口を統合。2002年3月には修理受付窓口も統合し、すべての問い合わせ窓口を1本化した。さらに2003年4月には、平日の受付時間を拡大するとともに土日・祝日の受け付けをスタート。その後、修理受付窓口のあり方を再検討し、2006年8月に部品修理ご相談センターを開設。現在に至っている。

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相談員の机の幅は広めで、机上には商品カタログがずらりと並んでいる

お客様相談室の有効性を示しプロフィットセンターとなる

 お客様相談室の受付体制を拡充するに当たっては、当然のことながら費用が発生する。そのためお客様相談室では、自らの有効性を示して経営層の理解を得ながら、お客様に喜ばれる受付窓口の実現に取り組んできた。
 説得材料として挙げられるのが、買い物相談の割合と直接エンドユーザーに情報を提供する意義である。
 同社の調べによると、消費財メーカーや家電メーカーのコールセンターに寄せられる問い合わせのうち、買い物相談の割合は全体の数%から20数%程度。これに対して、同社お客様相談室に寄せられる買い物相談の割合は54%で、カタログ請求を加えると65%に及ぶ(図表2)。

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 また、問い合わせてくるお客様の属性を見ると、エンドユーザーが42%で最も多い。インターネットの普及により必要な情報を手軽に入手できるようになった今、工務店任せでなく自分で商品を調べて決定するエンドユーザーが増えており、特にシステムキッチンは指名買いが多く見受けられる。お客様相談室を通してエンドユーザーに直接情報を提供すれば、商品の理解を深めると同時に、エンドユーザーとの距離を短縮。工務店におけるトステム商品の指名買いに一役買うことができると考えたのだ。
 このように、お客様相談室の対応は営業的要素が強い。そこで同相談室では、自らの対応が売り上げに貢献していることを客観的データを用いて証明。プロフィットセンターとしての地位を確立したのである。これは、実際に対応に当たる相談員のモチベーション向上にもつながっている。
 さらに、エンドユーザーへの情報提供が工務店などのサポートに役立っている点も、お客様相談室の有効性を表している。工務店は複数のメーカーと取り引きするため、各社の商品情報を備えていなければならないが、頻繁にモデルチェンジが行われたり、新商品が発売されたりする状況において、全商品の詳細を把握することは難しい。そのため、工務店に代わってエンドユーザーに詳しい商品情報を提供しているのである。また、工務店などからの問い合わせに対応することで、その対応次第ではトステム商品の採用にもつながる。

用件別フリーダイヤル番号で適切な相談員に着信

 お客様相談室と部品修理ご相談センターは、東京本社内(東京都江東区)にある。本社にはショールームが併設されており、例えば、引き出しの内側の寸法といったカタログに掲載されていない情報を調べることが必要な場合に、相談員がショールームに足を運び迅速に確認することもできる。
 受付時間帯は、月曜から金曜日の午前9時から午後6時30分までと、土日・祝日の午前9時から午後6時まで。夏期休業と年末年始の休みを除いて土日・祝日も窓口を開設し、正確・迅速・親切な対応を心掛けている。
 電話窓口には、前述の通りフリーダイヤルサービスを導入。お客様相談室と部品修理ご相談センターとで異なるフリーダイヤル番号を設けることで、適切な相談員に電話をつないでいる。さらに、お客様相談室においては、アルミサッシ・ドア、住器・リビング建材、エクステリア・ビル建材と、商品ごとにグループ分けがなされており、問い合わせ内容に応じて担当者にコールを転送。迅速・正確な対応に努めている。
 また、eメールでも問い合わせを受け付けている。この対応方法は、まず運営企画グループのスタッフが内容を確認。用件ごとに担当者に振り分け、各々の担当者から受付当日のうちに回答している。

お客様の声を活かす3つの取り組み

 全体の受付状況を見ると、問い合わせ件数は年に約15%の割合で増加している。2000年度には年間約7万件だった問い合わせ件数が、受付時間を拡大した2003年度には約15万件に到達。その後も勢いはとどまることなく、2006年度には約20万件に達した(図表3)。受付内容の内訳は、冒頭で紹介した通り買い物相談が最も多いことは現在も変わらない。

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 お客様相談室に寄せられる問い合わせの中には、同社のビジネスに役立つ情報が多数含まれている。そこでお客様相談室では、お客様の声を社内に発信するために、次の3点に取り組んでいる。
 ひとつは、お客様満足度調査の実施である。年に数回、カタログ請求のあったエンドユーザーと設計事務所に対して、アンケート形式の満足度調査を実施。結果を社員に公開している。
 もうひとつは、お客様ニーズの明確化である。お客様相談室に寄せられたご意見・ご指摘を商品別・内容別にとりまとめて、関連部門にフィードバックしている。
 そして最後は、お客様ニーズへの対応支援である。お客様相談室に頻繁に寄せられる問い合わせ内容を参考に資料を作成。これを関連部門が必要に応じて利用しているのである。例えば、秋冬は結露に関する問い合わせが増えるため、あらかじめ結露発生の仕組みや対処方法などに関する資料を作っておけば、お客様から問い合わせがあった際、迅速に対応することができる。資料は社内で広く活用されており、利用件数は月間600〜700件におよぶ。
 このほか、住まいのお手入れに関する小冊子も作成し、お客様に配布している。

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お客様の声を参考に作られた小冊子『住まいのメンテナンスQ&A』。ドア・サッシ・電動式窓シャッター版と、キッチン・洗面化粧台・バスルーム版を用意している

お客様相談室の有効性を測定

 お客様満足度調査の結果には、興味深いデータが隠されている。それは、お客様相談室の有効性の証明につながるデータだ。
 図表4は、自社商品採用者のお客様満足度調査結果である。自社商品採用者、未定、他社商品採用者の別に、お客様相談室の対応の満足度を調べたところ、自社商品採用者35%のうち、「良い」と「やや良い」の合計は83%であった。
 さらに、図表4の「未定」と回答した方に半年後に追跡調査を行ったところ、「採用」者は42%であった。これに、初回調査で「採用」と回答した方(35%)を合わせると、自社商品の採用に至った割合は全体で59%となった(図表5)。お客様相談室では、この数字をもとにお客様相談室の売上貢献額を算出し、お客様相談室の効果を客観的に測定している。

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お客様相談室をお客様にとってより身近な存在に

 現状の体制でお客様対応を始めてから約1年が経過した。具体的な数字をもってプロフィットセンターであることを社内に示すことができ、相談員も意欲的に受け付けに当たっている様子を見ると、もはや改善点はないかのように思える。しかし、お客様相談室では、より一層お客様に喜ばれる窓口を目指して、今後も改善に取り組んでいく意向である。
 具体的には、現状、工務店などのプロユーザーにもエンドユーザーにも同じ窓口で対応に当たっているが、実際にはお客様の属性ごとに問い合わせ内容が異なることから、今以上に一人ひとりのお客様に最適な対応を行うことができる方法を模索している。
 これが実現した後は、さらなる改善活動として、お客様に相談窓口をより身近に感じてもらえる活動に取り組む計画。特に、部品修理ご相談センターにおいては必須と見ている。その理由は、お客様の困りごとを解決する部品修理ご相談センターとお客様との距離が縮まれば、安心感の提供につながるからである。信頼関係の構築、ロイヤルティの向上にも貢献すると考えられる。
 しかし、いくらお客様相談室の形を整えたところで応対品質のレベルが低ければ、100%の効果は発揮されない。お客様相談室では、相談員一人ひとりの応対品質の向上にも注力していきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2008年2月号の記事