コンタクトセンター最前線(第69回):CSCの正確な状況把握と的確な指示が顧客満足度向上につながる

NECフィールディング(株)

NECフィールティング(株)では、 全国の拠点で対応していた故障受付業務を統合。 2001年に、カスタマサポートセンターを開設した。 以降、同センターでは、保守拠点、部品倉庫と三位一体となり、迅速で的確なサポートサービスを提供している。 その結果、 顧客満足度は向上した。しかし、同センターの顧客満足の追求は終わらない。 現在、さらなる満足度の向上を目指し、変化するニーズに対応している。

各拠点の故障受付窓口を統合してCSCを開設

 現代社会に不可欠な情報技術は、コンピュータやネットワークの進歩により、高度で複雑な活用が進んでいる。こうした中、多くの企業に求められているのは、高い技術力と機動力に基づくITサポートサービスである。
 1957年に設立されたNECフィールディング(株)は、パソコンからスーパーコンピュータに至る各種コンピュータ、およびネットワーク機器について、企画、設計から導入、構築、運用、保守に至るすべてのフェーズでサポートサービスを提供する、国内最大級のITサポートサービス会社として広く知られている。
 同社のメイン事業であるサポートサービスの受付業務を一手に担っているのが、カスタマサポートセンター(以下、CSC)である。CSCの開設は2001年。全国の保守拠点ごとに電話受付からカスタマエンジニア(CE)の派遣まで行っていたサポート体制を一新し、故障受付窓口を集約するかたちで開設された。以降、24時間・365日、東京と大阪の2拠点で、全国のお客様からの故障受付に対応している。
 CSCを東西に分散した目的のひとつに、災害対策が挙げられる。受付拠点の二極化と同時に、電話回線とデータベースを二重化。東京と大阪のデータベースを5分ごとにバッチ処理することで、リアルタイムに近い状態で情報を共有している。こうすることで、万一、一方のセンター機能が停止しても、もう一方で受付業務を継続することができる体制を整えた。
 電話窓口には、NTTコミュニケーションズ(株)のフリーダイヤルサービスを導入している。加えて、同サービスのオプションサービスのひとつである、全国共通番号サービスを使用して、受付電話番号はひとつでありながら、東日本地域から発信された電話を東京で、西日本地域から発信された電話を大阪で受け付けている。
 受付件数が最も多い機器はプリンタで、全体の35%を占める。以降、PC、POS、PCサーバ、その他と続く。

CSCが迅速・的確なサポートサービス提供のカギを握る

 ここで、故障受付から修理までの流れを紹介しよう。
 お客様にトラブルが発生すると、まずCSCに電話が入る。CSCでは、トラブル発生時の経緯や症状を細かく聞き出し、対策を立てる。トラブルの原因が部品の故障で、部品交換が必要であることが判明すると、お客様を担当する保守拠点に、CE出動と必要な部品の手配を指示する。CSCでは、お客様との通話を全件録音しており、出動指示を受けたCEがお客様を訪問する前にi-modeで聞けるようにしている。
 保守拠点には、スケジューラと呼ばれるCEに作業指示を出す担当者がいる。スケジューラはCSCからの出動依頼を受けて最適なCEを選定し、i-modeメールで出動指示や具体的な作業内容を送信する。
 CEは、i-mode画面でトラブル状況を把握してからお客様先へ訪問。CSCで交わされた会話を聞いているため、同じ内容を繰り返し尋ねる必要はなく、すぐ部品の交換作業を行うことができる。またCEは、i-mode画面で出動から作業終了までの状況をタイムリーに報告する。
 このようにCSC、部品倉庫、保守拠点が一体となったサポートネットワークを、同社では「カスタマサポートフォーメーション」(図表1)と呼んでいる。 

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 同フォーメーションにおいて、迅速かつ的確なサポートサービスを提供するには、まず、お客様のトラブルを正確に把握することと、的確な対処法を指示することが必須となる。つまり、CSCが迅速かつ的確なサポートサービス提供のカギを握っているということだ。
 加えて、CS調査の結果、お客様が求めているのは窓口対応の迅速さであることがわかった。そのため、電話応対スタッフにはCEの起用を決定。全国の保守拠点から5年以上のCE経験を持つ社員を集めた。そして、お客様の地域の保守拠点出身CEが対応に当たることで、地域密着型の窓口対応をCSCで再現している。
 現在のスタッフ数は、総勢285名。一次受付を担うコールアドバイザーと、後方部隊として専門性の高い二次対応を担うテクニカルサポートで構成されている。センター規模は東京のほうが大きく、コールアドバイザー71名、テクニカルサポートが78名。大阪は、コールアドバイザーが62名、テクニカルサポートが47名となっている。東京のテクニカルサポートがコールアドバイザーより多く配置されているのは、海外業務も担っているためである。

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東日本CSCでのオペレーション風景。もともとコールアドバイザーとテクニカルサポートは部屋が分かれていたが、現在は同じ部屋で業務を行っている。そのため、よりスムーズな連携が可能になった

ナレッジシステムで一次受付の技術力を補強

 CSCでは、PBXに受電すると、電話が鳴る前にコールアドバイザーの端末にお客様情報が表示される。端末へのお客様情報の表示は、CTIとお客様情報ナレッジにより可能となる。CTIシステムは、Genesys Frameworkを使用している。
 端末に表示されるお客様情報は、会社名、連絡先、地図、ネットワーク環境などの基本情報。このほか、直近の対応履歴も表示される。通話開始前にコールアドバイザーがお客様の基本情報を得ておくことは、スムーズな対応に役立つのだ。
 一方、コールアドバイザーの対応力を高めるために、同社では独自に開発した事例検索システムを使用している。これは、超高速検索エンジンを用いた検索システムで、1万件の事例を0.1秒と驚異的な速さで、しかも自然語で検索することができる。
 電子ハンドブックも、迅速で的確な対応に欠かせないナレッジである。各種マニュアルを電子化し、写真やイラストとともに保管しておくことで、お客様に電源の位置などをきめ細かく伝えることができる。また、マニュアルの長期保管が容易になり、古い機種への対応も可能になった。CSCでは、技術力のある社員を起用しているが、上記のようにナレッジシステムを充実させることで、その技術力を補強しているのである。
 CSCでは、充実したナレッジとCTIにより、1コール当たりの平均処理時間の短縮を実現している。2002年には12分かかっていたが、2004年には9分を記録し、3分の短縮に成功した。その後は、9分前後で推移している。
 ちなみに、CSCでは、10秒以内に85%のコールに対応し、放棄率を3%以下に抑えることを目標としている。このサービスレベルは、月曜日や長期連休明け以外は、達成できているという。その秘訣は、コール量の予測精度にある。CSCでは、月間平均コール数にコールの傾向とその月の特徴を掛け合わせてコール量を予測しており、経験とともに精度は高まっているという。

S-MAXとモニタリングで「気づき」を得る研修を実施

 コールアドバイザーが一次受付において的確な判断をするには、技術力に加えて、お客様の気持ちを感じ取れるコミュニケーション能力も求められる。そこでCSCでは、(社)日本能率協会が提供するS-MAXという感性を高める教育プログラムを実施。センター内で対応パフォーマンスの高いコールアドバイザーの様子を撮影し、この映像をグループで見た後、応対マナーや話法について良かった点を指摘している。これにより、自分自身で気づいたことと、第三者が気づいたことの両方の「気づき」を得ることができる。
 S-MAXが良かった点だけにフォーカスしているのに対して、主に悪かった点にフォーカスしているのがモニタリングである。モニタリングでは対応マナーのみならず処理プロセスも評価している。26の評価項目を100点満点で採点し、結果から個々の社員を評価。同時に、CSC全体の傾向も見る。
 最近では、コールクオリティと顧客満足度に相関関係が見られるようになってきた(図表2)。顧客満足度はCSCが直接マネジメントできる数値ではない。だが、改善活動との相関関係を見つけることができれば、顧客視点で目標値を設定することが可能となるのだ。

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 CSCでは、S-MAXとモニタリングのほかに、eラーニングも導入。製品情報などの教育を行っている。CSCのスタッフは社員なので、パートのようにコールが集中する短時間のみ勤務させることが難しい。eラーニングは、コールの少ない時間帯の有効活用にも一役買っている。

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S-MAXを実施している様子

モチベーション向上策はコンテストと表彰制度

 CSCでは、スタッフのモチベーションを高める施策のひとつとして、表彰制度を採り入れている。表彰制度は、四半期ごとに実施。サービスの改善につながった提案や、取得した資格などで審査される。表彰者には、図書カードなどの賞品が贈られる。
 また、ベストフィールディングコンテストという全社のイベントもある。これは、部門ごとに技術力を競うコンテストで、コールセンター部門は年に1度開催される。他の部門と異なり、CSCは2カ所しかないため、東西で対決する。こうしたコンテストも、モチベーションを高めていると言えよう。

変化するニーズに応えさらなる顧客満足度の向上を目指す

 CSCの開設から5年が過ぎた。開設当初と比べると、CSCの応対能力はシステム、人材ともに格段に高まっている。現在、CSCでは「もっとメインフレームに関するアドバイスが欲しい」というお客様の要望に応えるべく、改善活動に取り組んでいるところだ。
 お客様の期待、つまりニーズは常に同じではない。CSC開設当初は、窓口対応の迅速さが求められた。しかし、これが改善されると、状況把握の正確さが求められるというように、これまでもニーズは変化してきた。CSCでは、今後も顧客満足度調査を通じてニーズを把握し、期待に応えていく構え。
 今日のビジネスに欠くことのできない情報技術。CSCではそれを支える使命感の下、顧客満足度の向上を目指し、日々の活動に励んでいる。今後も、CSCの活動に注目していきたい。


月刊『アイ・エム・プレス』2007年8月号の記事