コンタクトセンター最前線(第56回):問題解決に全力を尽くし高い顧客満足度を獲得

グラフテック(株)

神奈川県東戸塚に本社を構え、計測器や情報機器の開発・販売を手掛けるグラフテック(株)。 同社では、かねてよりカスタマーサポートの充実に着手しており、2006年2月にはこれを担当するカスタマーセンターを社長直轄の部門へと昇格させた。現在、「お客様の視点で考え行動する」「ムダを省きサービスの質の向上を図る」「 売り上げ、利用拡大を念頭におき行動する」の3つをモットーに、日々の業務に臨んでいる。

社長直轄の部門として心機一転を図る

 1949年の創業以来、計測機器を出発点としてさまざまなコンピュータ周辺機器の提供に取り組んできたグラフテック(株)。現在では、計測器に留まらず、設計図や測量図、ポスターなどのペーパー情報を電子データ化して出力するイメージング製品、カットしたいデータの入ったコンピューターソフトからの出力に従い、いろいろな材質のメディアを切り抜き、諸々の目的に活用できるカッティング製品といった情報機器の開発にも参入して、製品ラインアップを拡大。全社員の創意により、夢のある、そして信頼される企業を目指している。
 お客様の信頼獲得において大きな役割を果たすもののひとつに、カスタマーサポートがある。カスタマーサポートには、購入を検討するお客様に対して必要な情報を提供するプレサポートと、購入後のお客様に対して操作方法の提供や修理を行うアフターサポートの2つがあるが、同社ではこの双方を担うカスタマーセンターの体制整備と応対品質の向上に注力。もともと本社(神奈川)と全国各地の営業所に点在していたお客様窓口を、15年ほど前にインフォメーションセンターとして統合した後、品質保証部門などを経て、2006年2月にカスタマーセンターに改組。社長直轄の部門として心機一転を図り、カスタマーサポートのより一層の充実に向けて新たなスタートを切った。
 また、この5月には、同じ本社内にある消耗品などの注文を受け付ける「受注センター」および東日本地区のお客様からの商品の注文や見積もり依頼に対応する「東日本エリア担当」の営業部とカスタマーセンターを同じフロアに移転。各部門と隣接することで、以前にも増してスムーズな連携を実現した。
 図表1のように、カスタマーセンターは、3つの部門で構成されている。ひとつ目は、修理と保守の管理を担当する「サービス管理センター」。修理を外部委託しているため、顧客満足度の維持・向上を目的に委託先の窓口としての管理業務と保守契約やサービスパックの管理業務を担っている。2つ目は、見込客からの製品に関する問い合わせや購入者からの製品の使用方法に関する問い合わせの受け付け、さらに故障か否かを判断して修理が必要であればカスタマーエンジニア(CE)の派遣をコーディネートすることを主業務とする「コールセンター」。そして3つ目が、CEのサービス技術向上やクレーム対応を通じて、前出の2部門をサポートする「営業技術課」である。

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 スタッフ数は、順に7名、7名、6名にカスタマーセンター長を加えた計21名。部門間で連携を図りながら、①お客様の視点で考え行動する、②ムダを省きサービスの質の向上を図る、③売り上げ、利用拡大を念頭におき行動する、をモットーに日々の業務に励んでいる。

IVRで用件に適したチームにつなぐ

 カスタマーセンターの中でも、コールセンターはお客様からのファーストコンタクトを担う中心的存在として機能している。
 お客様とのコンタクトチャネルには電話、FAX、eメールを使用。電話には、NTTコミュニケーションズのナビダイヤルを採用している。ナビダイヤルを使えないお客様のために、一般加入回線も用意して、お客様の利便性向上とコールの取り逃し防止を図った。また、FAXには電話と同様に NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを使用している。
 窓口の告知媒体には、自社のWebサイト、取扱説明書、会社案内、パンフレットを活用。Webサイトには、電話、FAX、eメールすべての告知がなされているが、パンフレットなどの販促物にはすべてナビダイヤルを記載し、この利用を推進している。
 電話窓口の受付時間帯は、月曜日から金曜日の午前9時から午後7時まで。土日・祝日およびお盆と年末年始は休業となっている。受け付けが平日のみであることは、同社のように法人を対象とするコールセンターの場合、特に珍しいことではない。しかし、土曜日の着信がまったくないわけではなく、わずかながら着信が確認されているため、今後、様子を見ながら営業日の拡大を検討する意向だ。
 図表2はコールフローである。お客様からのコールを着信すると、IVRによってガイダンスが流れ、お客様に用件に合った窓口の番号を選択してもらう仕組みになっている。これにより、コールを用件に適したチームにつなぐことができるため、スピーディーで的確な対応を実現することができるのである。

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 このほか、専門性の高い特殊な機器や新製品については専用のフリーダイヤル番号を設置し、お客様の満足度を下げるたらい回しの防止や、見込客情報の把握に努めている。
 なお、コールセンターではeメール対応も担っている。eメールの場合、電話と違って何度もやり取りが必要になるケースが多いが、少しでも早くお客様の問題を解決できるよう、Webサイトのサポートページにeメールでの問い合わせの際に必ず記載して欲しい項目(OSやソフトウエアの種類など)を掲示している。

社内への情報発信と取扱説明書の改善が業務への意欲を高める

 コールセンターには、お客様への応対以外に、社内への情報発信と取扱説明書の改善という大切な業務がある。
 どちらもコールセンターでなければできない業務で、特に、後者はエージェントのモチベーション向上とストレス解消にも役立っているという。
 同社では、取扱説明書のコピーライティングは開発者が担っている。そのため、専門用語やある程度の知識がある人でなければわからない表現が多くなりがちで、お客様に親切な作りになっているとは言いがたいというのが正直なところだ。これを、日ごろからお客様に接しているエージェントがチェックし、改善案を提案するのである。
 自分たちの提案が受け入れられ、成果物として形に表れることは、エージェントのやりがいや充実感につながり、業務への意欲を高める。また、こうした業務は応対の合間に行われるため、単調になりがちな応対業務に程よい変化を与えているのだ。

一番大切なのは問題を解決すること

 お客様から寄せられる具体的な問い合わせ内容は、製品仕様、製品の操作方法、製品とPCとの接続に関すること、メンテナンス、クレーム、ユーザー登録など。中でも多いのは、製品の取り扱いや接続に関する問い合わせで、全体の48%を占めている。次に、修理や保守に関する問い合わせが35%と続く。ちなみに、この数字はIVRのデータに基づくもので、図表2にある「9」を選んだケース(14%)は上記に含まれていない。従って、製品の取り扱いや接続に関する問い合わせも、修理や保守に関する問い合わせも、実際にはもっと高い割合と考えられる。
 また、こうした問い合わせ内容をひとつずつ見ていくと、製品の操作方法ひとつとっても膨大な種類があることがわかる。中でも、特に難易度が高いとされているのが接続に関する問い合わせである。お客様のPC や購入製品に対して持ち合わせている知識にばらつきがある上、社内のネットワーク環境について詳細に把握しておらず、それが応対を難しくしているのだ。当然、通話時間が長くなるケースもある。
 カスタマーセンターでは、このように、応対方法もお客様の知識レベルによって決まり、かつコール内容の予測が立てにくいというオペレーション環境の中で上手く運営していくには、コールセンターの役割を忘れずに応対に臨むことが不可欠であると考えている。コールセンターの役割とは、平たく言えば「お客様の問題を解決する」ことである。もちろんセンター運営には効率が求められるわけだが、コールセンターでは1コールに30分、1時間を要したとしてもお客様の問題点を解決することが重要であり、そのことが全体効率にも貢献するというスタンスで、例えばお客様がPCに詳しくない場合には、懇切丁寧にひとつずつ操作を指導。全力を尽くして問題解決へと導いている。

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Webサイトや取扱説明書、パンフレットへのコールセンターの記載は他社でも行っているが、同社では会社案内にもコールセンターのナビダイヤルを記載している

さらなる応対品質向上に向けた新たな取り組み

 懇切丁寧なコールセンターの応対は、お客様の満足度向上につながってもいるようだ。同社がユーザーを対象に毎年1回実施している満足度調査の結果を見ると、コールセンターの応対について「大変満足」「満足」との回答が80%と、まずまずの数字を記録している。また、修理などサービスについても同じく85%となっており、カスタマーセンターのモットーがユーザーに伝わっているようだ。そのためか、次回購入意思も高く、「ぜひ購入したい」「してもよい」が96%に達している。
 しかし、これらの結果は常に過去のもの。今も、またこれから先も同様の評価が得られる保証はない。カスタマーセンターでは、現状に満足せず、さらなるレベルアップに取り組む姿勢を見せている。
 コールセンターにおける新たな取り組みとしては、すでに「ハイブリッド体制」による応答率アップに着手している。現在、エージェントはすべて自社の社員が担っているが、ITベンダーのコールセンター・ソリューション専門会社からの派遣スタッフも起用し、応答率90%以上という目標を常に達成できる強固な運営体制の構築を目指しているのだ。これまで、コールセンターではエージェントを社内で育成してきたため、より一層のレベルアップを図るためにも、お客様対応のスペシャリストのノウハウを得ようとしているのである。
 一方、カスタマーセンターの取り組みとしては、ユーザー登録を推進している。なぜなら、ユーザー登録の際に収集する、お客様が使用しているPCのOSなど自社製品を取り巻く環境に関する情報が、サポートの際に役立つからだ。
 現時点でのユーザー登録数は、実売数の約5割に留まっている。未登録の場合の無償サポート期間は購入後3カ月間で4カ月目からは有料となるが、登録すれば無償の期間が1年間に延長される。登録への理解を深め、将来的には登録率100%を目指す。
 自社でやるべきことと専門家の力を借りるべきことを見極め、応対品質の向上に努めるグラフテックカスタマーセンター。新たな取り組みの成果に期待したい。

コールセンター

移転後のコールセンターには、さわやかなライムイエローのパーティションが取り付けられた。これでエージェントがほかのスタッフの声にオペレーションを妨げられることがなくなった


月刊『アイ・エム・プレス』2006年7月号の記事