センター最前線(第43回):テクニカルチームとサポート部門を集結しワンストップでのITサポートを提供

(株)大塚商会

1961年の創業以来、 情報化による業務効率の向上を支援してきた (株)大塚商会。 同社では1990年からメーカーや製品にとらわれないサービス&サポートの体系化に着手。 各テクニカルチームとサポート部門を集めてトータルαサポートセンターを開設し、全国のお客様のトラブルにスピーディーに対応している。

突然の「困った」をワンストップのサポート体制で解決

 情報システムの複雑化、高度化が進む中、本来の業務に注力するために、その運用や保守をアウトソーシングする企業が増えている。こうした時代を予見した(株)大塚商会では、いち早く特定のメーカーにとらわれないマルチベンダ対応と、オフィス用品からIT機器全般まで幅広く提供するマルチフィールドに対応するサービスとサポートの体系化に取り組み、体制を整備。1990年より、全国のお客様への情報提供やサポートをワンストップで提供するサービスを開始した。その後、インターネットの急速な普及やシステム環境の変化に合わせてサービスとサポートを拡充し、会員制の総合サービスウエア・プログラムへと発展したのが「トータルαサポート21」である。
 トータルαサポート21では、システム導入前のコンサルティングから構築、導入後の運用支援、保守、リサイクルまで、過去の経験と実績に裏付けられたサービスおよびサポートメニューをラインナップ。豊富なメニューの中から必要なものを選択してオリジナルプランを作成し、お客様に最適なサービスを提供している。突然発生するシステムトラブル、どうしたらいいかわからない操作など、お客様の困り事に対するスピーディーな解決が評価され、これまで順調に契約数を伸ばしてきた。2005年6月現在の契約数は、全国で約32万件に達している。
 トータルαサポート21の拠点となるのが、会員を電話でサポートする専用窓口、トータルαサポートセンターだ。同センターの開設は1994年。トータルαサポート21のスタート当初は、全国各地の拠点で電話を受け付けて情報提供やエンジニアの派遣を行っていたが、テクニカルスキル重視の対応であったため、これを改善しようと、トータルαサポートセンターの開設に至ったのである。
 その当時は、今ほどコールセンターの活用が進んでいなかったため、同社では米国の事例を参考にしながらセンターを構築。2年後には、東京都江東区にある現在のビルへセンターを移転した。ここにコピー・ファックス・PC・CAD・業務ソフトなどの専任テクニカルチーム、ライセンス管理・アセット管理などのアウトソーシングサービス、データリカバリーセンターなどの専任テクニカルチームとサポート部門を集結。導入後の運用支援や保守、各種情報提供を行っている(図表1)。

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月間10万件の対応を可能にする受付体制とコール予測

 同センターのミッションは、お客様の目線に立った対応で問題解決、業務効率化を支援することと、お客様の業務を円滑に進めるための情報発信の中心的な役割を果たし、お客様満足度向上を目指すことの2つ。「親切・丁寧・正確・迅速」をモットーに日々の対応に臨んでいる。
 コミュニケータは約420名、回線数はNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを約100回線使用。お客様満足度を高めるために、フリーダイヤルのオプションサービスのひとつであるカスタマーコントロールを利用して、PBXに入る前に拒否したコール数を把握している。月間サポート件数は約10万件に及ぶ。
 コールフローは図表2の通り。お客様からの電話が着信すると、まずお客様情報を確認。次に問い合わせ内容を確認してから、ナレッジデータベースより解決の糸口を探り回答する。訪問による対応が必要な場合は、エンジニアの携帯端末に情報を送信し、出動を指示する。

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 月間約10万件もの問い合わせに対応するには、豊富な人員と回線数を確保するだけでなく、コール予測に基づく適切な人員配置が不可欠である。同センターでは、過去の実績やカレンダー情報からコール数を予測し、必要なコミュニケータ数を割り出している。
 また、システム面でのオペレーションサポートも重要だ。同センターのコールセンターシステムは、PBXはNECのAPEX、CTIミドルウエアはジェネシスのT-Server、CRMパッケージはアムドックスのClarify、知識管理支援ソフトはPrimusで構成。ClarifyとT-ServerのCTI機能により、瞬時にお客様情報を表示することで、確認作業の軽減を実現している。加えて、コミュニケータは、一元管理された顧客データベースに保存されているお客様の保有製品や過去の問い合わせ履歴を参照できるため、お客様との会話をスムーズに進められる。
 さらに、エスカレーションも容易にできる。お客様の問い合わせが技術に関する内容の場合などは、後方担当者が二次対応を行うが、その際、顧客情報画面とともに相談内容を後方担当者に転送。受付情報を正確に伝えられる仕組みを採用している。そのため、お客様は繰り返し同じ説明をする必要がない。

電話受付業務を補完するインターネット

 電話によるサポートの場合、お客様が直面している状態を言葉だけでうまく説明することができず、コミュニケータが状況を把握するまでに時間がかかるケースがある。迅速かつ正確にお客様の状況を把握することが、お客様満足度と業務効率の向上につながることは言うまでもない。同センターでは、お客様のPC画面を共有して問題を視覚的に把握し、スピーディーな問題解決を実現するリモートメンテナンス・サポートプログラムを提供している。これはWebコラボレーションとも言われ、エンジニアの訪問までに要する時間や費用面での問題、またリモートメンテナンス対応でネックとなる通信環境の制約を解決してくれる機能である。
 このプログラムの利用に当たって留意する点は、お客様のネットワークへアクセスしなければならないため、事前に了承を得る必要があること。同センターでは、セキュリティを重視して、ソフトウエアの利用同意のように画面で説明し、同意ボタンをクリックすることで、双方の担当者のみが確実に画面を共有できる方法を採用している。
 一方、Webサイトを活用したセルフサポートにも注力している。Webサイトの名称は「QQ-Web」(図表3)。ここでは、前出のPrimusの内容を反映させたQ&A集や、便利な使い方を紹介するワンポイントを公開。そのほか、アプリケーションのダウンロードや修正ファイルが得られるパッチ情報、セキュリティ情報、読み物などのコンテンツを満載している。

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 Q&A、パッチ情報、ワンポイントでは、質問したいことをそのまま口にするように文章入力して検索できる自然文検索を採用している。キーワード検索はキーワードを知らないと検索できないが、これは言葉のゆらぎを含めて検索条件に類似する記事を探し出すため、かなり高い確率で必要な情報にたどり着くことができる。
 さらに、お客様が必要とする情報に素早くアクセスするために役立つ情報や画面表示をカスタマイズできるMy Pageも用意している。

“顧客満足”から“顧客感動”へ

 精度の高いコール予測やコールセンターシステムによるサポート、そしてセルフサービスの活用といった数々の取り組みにより、同センターの応対レベルは向上していると言える。
 2002年から2004年までの3年間の放棄率、20秒以内の応答率、平均応答時間の実績を見ると、2002年は順に3.2%、86.1%、11.8秒、2003年は2.7%、86.8%、12.0秒、2004年は1.8%、93.1%、7.1秒で、年々着実に放棄率が減少。2003年から2004年にかけては、3項目すべてに大きな改善が見られた。
 これにはもうひとつ、サービス品質管理課の取り組みも寄与している。同課は、トータルαサポートセンターの応対品質向上をミッションとして設置された。以来、内外から一流と言われるコールセンターを目指して日々活動している。
 具体的な活動内容は、現状把握・分析、分析に基づく応対品質改善、各サポートセンターに関連するイントラネットのホームページの運営、コール予測の4つ。応対品質管理課メンバーと各センターのCS委員、マネージャーが連携して品質向上に取り組んでいる。当初はテクニカルスキルを重視していたが、現在は感じの良い応対の実現に努めているという。なぜなら、業種・業態を問わずコールセンターが活用されるようになった今、他社のコールセンターで感じの良い応対を経験したお客様が同センターにも同様の対応を期待しているからだ。
 コミュニケーションスキルの向上については、スーパーバイザーが日々モニタリングを行うほか、半年に1度は外部機関にモニタリングを依頼。第三者による客観的な評価を行っている。この結果が良かったコミュニケータは、グッドコミュニケータとして表彰し、賞状などを進呈する。表彰回数が多いコミュニケータは、さらに上の大塚商会全従業員を対象にした社長賞に該当するケースもある。
 同センターでは、2002年に、日本オフィスオートメーション協会の「Best Helpdesk of the Year 奨励賞」を受賞。翌年には、国内で初めて国際ヘルプデスク協会の「HDI組織認定」を取得した。HDIでは、「顧客満足」と「サポート資源」で高い評価を受けたが、同センターではこれに満足することなく、さらに一歩進んで、お客様に感動を与える応対を実現できるよう努めていく意向。それにはお客様の声をよく聞き、市場の変化に敏感であることが不可欠である。高品質なサポートを提供していると自己満足に陥らないよう、これからも業種・業態を問わず、優れたセンターの良いところを取り込み、一歩進んだサポートセンターを目指したいとしている。              

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10階のPCサポートセンターと修理受付センターのオペレーション風景。コミュニケータは中央に設置された電光掲示板で入電状況を確認しながら対応に当たる(写真左)/コミュニケータがログオンすると、月間改善項目や電話応対のワンポイントが表示される。月間改善項目は、終了後もカラー出力をセンター内に掲示し、継続的な取り組みを促している(写真右)


月刊『アイ・エム・プレス』2005年7月号の記事