コンタクトセンター最前線(第34回):電話応対業務を集約して業務効率とCSの向上、コスト削減に成功

(株)クォーク

コールセンターを開設して各支店で対応していたお客様からの各種問い合わせを1カ所に集約することで、業務効率の向上とコスト削減、さらにはCSアップまで実現した (株) クオーク。 同社がコールセンターを開設するに至った経緯、現状、そして今後の取り組みについて話を聞いた。

BPRの推進によりコールセンターの必要性が浮き彫りに

 車や楽器、呉服、宝飾品などの個品割賦を主業務とする信販会社として、お客様の夢の実現をサポートしている(株)クオーク。同社では2003年7月に、全国のお客様からの電話を一手に担う、コールセンターを大阪に開設した。
 コールセンター開設の理由は2つ挙げられる。
 ひとつ目は、ビジネスプロセスの再構築(BPR)により、コールセンターの必要性が生じたこと。以前の組織体制は、全国60カ所の支店に、それぞれ加盟店を回る営業部隊、クレジットの審査を行う審査部隊、債権を管理する管理部隊の3つを有していた。この体制を見直してスリム化を図ることによって、より競争力を高められると考えた同社では、営業部隊のみ支店に残し、審査部隊を東西2カ所に、管理部隊は全国10カ所に集約した。これにより、業務効率は大幅に改善したが、困ったことに、各業務のはざまにあったお客様からの問い合わせに対応する受け皿がなくなってしまったのである。
 もうひとつの理由は、顧客満足(CS)の向上。同社の従業員数は1,800名に及ぶ。全社員に同様の研修を実施しても、各支店に戻るとローカルなやり方に戻ってしまうケースが散見された。業務フローに限らず、例えば、明るい声で対応するというようなことでも均一のレベルを徹底することは努力のいることだ。いつでも、どの支店でも均一なサービスを提供することの難しさを痛感した同社では、電話応対業務の集約が必要と判断したのである。
 同社では、既存顧客を対象としたクレジットに関する問い合わせや早期完済の申し出、諸届け変更、ダイレクトメールに関する問い合わせなどを受け付けるコールセンターを大阪に開設。2002年4月から西日本の支店のお客様を対象にテスト運営を開始し、2003年7月に本格的稼働に踏み切った。以降、順次エリアを拡大し、2004年8月現在、約9割の支店の電話応対業務の集約を終えている。

「手の空いている人が対応」から「積極的に対応」へ変化

 現在は、順調にコールセンターを運営している同社だが、当初は不安もあった。というのも、これまでは手の空いている人が対応するというレベルだったために、コールセンターの構築および運営のノウハウがなかったからである。コミュニケータは何人必要なのか、電話は何回線必要なのか見当もつかず、予算も見えない。そこで同社では、トランスコスモス(株)(テレマーケティング・サービス・エージェンシー)へのアウトソーシングを決めた。
 コールセンターの開設に当たって同社が留意した点は、わかりやすく丁寧な対応ができるということである。同社の顧客は年齢層が広く、中高年者も多い。また、一般には馴染みのない専門用語も多数あるため、わかりやすくなければかえって混乱を招くと考えたのだ。
 また、苦労した点としては、応対マニュアルの作成やエスカレーションなどのルールを決めることと、それを普及・徹底させることである。センターの開設に当たって同社は、全国の支店へ足を運んでセンター開設の目的や役割を説明して回った。さらに開設後に再度足を運び、理解の浸透に努めた。

フリーダイヤルでコールセンターの利用を促進

 社内の理解に努める一方で、お客様の電話をコールセンターに誘導することも不可欠である。同社では、認知を高めると同時にセンターの利用を促進する環境作りに努めた。
 前者の取り組みとしては、お客様に送付する書面やWebサイト、広告などを活用した、コールセンターの告知が挙げられる。各メディアに、問い合わせ先としてコールセンターの電話番号を記載している。
 後者の取り組みとしては、通話料着信者払いのフリーダイヤル(NTTコミュニケーションズ)を採用した。導入に当たり、企業側が負担する通話料を危惧する向きも多い。しかし同社の場合、テスト運用中の平均通話時間が約2分30秒とそれほど長くなかったことが、導入を後押ししたと言えるだろう。
 フリーダイヤルの導入は、遠方のお客様の通話料金の負担をなくすだけでなく、全国のお客様への均一なサービスの提供を支えている。

月間約 4 万件のコールに対応

 同社のコールセンターの受付時間帯は、午前9時から午後5時30分 まで。日・祝日は休業となっており、受付時間外には営業時間を伝えるアナウンスを流している。
 図表1は、コールセンターのイメージである。これを見るとわかるように、お客様がフリーダイヤル番号をダイヤルした場合は、コールセンターへ直接入るが、既存の電話番号にかかった場合はいったん各支店を経由してからボイスワープでコールセンター(トランスコスモスのコンタクトセンター)へ転送。クオークでの対応が必要な場合は、そのお客様を担当する支店やお客さま相談室へエスカレーションする。

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 コールセンターのスタッフ数は総勢約80名。内訳は、コミュニケータ約70名、スーパーバイザー2名、クオリティコントロール1名、チームリーダー6名、マネージャー1名となっている。席数は46席で、時間帯別の予測コール数に応じてコミュニケータのシフトを組んでいる。
 受付状況を見ると、月間コール数は約4万件。このうち、約7割がクレジットに関する問い合わせ、入金失念の連絡、早期完済の申し出、住所や引き落とし口座などの諸届け変更となっている。ボーナス月はコール数が若干増えるが、放棄率8〜9%を維持しているという。
 コールセンターの稼働状況は、CTMS(コンピュータによる電話管理システム)で管理している。同社では、CTMSで得られるデータで作成されたレポートを基に、運営の改善に努めている。また、よくある質問を取りまとめた FAQ集を作成し、スピーディーで正確な応対を実現している。

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いつも明るく、活気に満ちているコールセンター。大阪という地域性が表われているのだろうか

数々のメリットを実感

 コールセンターの開設により、同社にどのようなメリットがもたらされたのだろうか。
 まず、電話のたらい回しがなくなり、応対のスピードアップを図れたことが挙げられる。コールセンター開設以前は、自分の仕事の手を休めて電話を取ってお客様に対応していたため、丁寧に対応しなければという気持ちはあっても、そうは事情が許さないケースもあった。用件によっては、電話を保留にして離れた場所にある業務端末でお客様の情報を照会してから再度電話口に戻ったり、電話を切った後で用件を担当する部署に引き継ぐなどしており、対応に時間がかかっていたのである。
 次に、電話応対のプロが対応することで、応対品質を高めることに成功した。同社では、これらがCSの向上に結びついているものと見ている。
 また、仕事を中断されることがなくなったため、業務の効率アップももたらされた。このほか、情報の集約が容易になったり、業務の波を知り、必要な時に、必要な人員を投入できるようになったことで、無駄なコストの削減も実現した。
 さらに、収集した情報をマーケティングに活用することも可能となった。これまではダイレクトメールのレスポンスも支店ごとに受け付けていたためコール数が少なく、お客様の声がつかみにくかったが、コールセンターで一手にレスポンスを受けることで、文章がわかりにくい、封筒に魅力がないといった反応がつかめるようになったのである。同時に、レスポンスへの対処法を早期に打ち出せるようにもなった。こうした取り組みはスタートしたばかりだが、同社では今後も継続的に、販促や新サービスの提供に関与していきたいとしている。

スクリーン-1

Web サイトでは問い合わせ窓口をわかりやすく告知している。また、よくある質問を紹介することで受付時間外でもお客様をサポート

守備範囲の拡大とマーケティングへの関与を目指して

 コールセンターの本格稼働から今日に至るまでの約1年間は、同社にとってまさに激動の1年だったと言える。同社が行ったBPRの効果は、これからますます期待されるところだ。同社では、どこまで業務の効率を高められるかを課題としており、現状の業務に付随するものでコールセンターでの対応が望ましいと思われる業務は積極的に取り込み、守備範囲を拡大していきたいとしている。
 さらに、電話というキーワードで見た場合には、アウトバウンドの展開も視野に入れているという。例えば、ダイレクトメール送付後にフォローコールを実施し、見たか見なかったか、見なかった理由などをヒアリングする。入金日に入金がなかったお客様にその旨をお知らせするといった具合だ。後者については、すでに実施に向けて準備が進められている。
 しかし、これらを実現するには教育がカギになる。現在の教育体制は、採用から導入研修までをパートナーのトランスコスモスが担い、その後の法規や業務に関する専門知識についてはクオークが担うといった役割分担をしている。同社では、トランスコスモスの教育に満足しているため、今後もこの体制で教育を行う方針だ。
 同社にとってコールセンターは会社の“玄関”。継続的に、わかりやすく丁寧な対応に努めることで、お客様の利用を促進していくという。CS向上はもちろん、さらなる情報の収集、業務の効率化、マーケティングへの関与といったメリットを拡大する意向だ。同時に、コールセンターでの対応を通じてファンを作ることにより、クレジットを組む際には「クオークで」と指名されることを期待している。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年10月号の記事