コンタクトセンター最前線(第31回):高いサービスマインドを持つ“ 人間力” を武器にお客様の視点に立ったサービスを追求

ケンコーコム(株)

1994年の創業以来、 お客様の健康作りをサポートし続けているケンコーコム (株) 。 2000年5月には、24時間365日いつでもインターネット上で健康関連商品を購入できる健康メガショップ「ケンコーコム」を立ち上げ、“ 健康作り” をテーマとした新たな流通の仕組み作りにチャレンジしている。 今回は、お客様からの注文や問い合わせを受け付けるカスタマーサービスセンターを紹介する。

基幹業務を担うカスタマーサービスセンター

 ケンコーコム(株)が運営する健康メガショップ「ケンコーコム」は、国内の健康食品、海外のサプリメントなどをインターネット通販で提供する健康関連商品の専門店である。取扱商品は、健康食品、健康機器、癒し用品、化粧品など12カテゴリーにおよび、総取扱商品数は2万1,000点を上回る。取扱商品の拡充に伴い、売上高も上昇。2001年3月期の売上高は2億9,400万円だったが、2002年同月期には4億4,400 万円、2003年同月期には10億6,500万円、そして2004年同月期には22億8,200万円と、3期連続で売上増を達成した。
 このように急成長を続ける同社において重要な役割を果たしているのが、お客様の視点に立ったサービスを提供するカスタマーサービスセンターだ。
 主な業務内容は、eメールと電話による受注と問い合わせへの対応、そして注文内容の変更への対応など。問い合わせの内容は、購入前の商品に関することから、購入後の使用方法、そして配送や返品に関すること、さらに商品・サービスへの要望まで多岐にわたる。
 このように、お客様の商品購入から実際の使用までのすべてのプロセス(図表1)にわたって、お客様のニーズに合わせたサービスを提供するのがカスタマーサービスセンターの役割である。同社ではカスタマーサービスセンターを、単なる電話対応業務としてではなく、サイト作りやマーチャンダイジング、物流と並んでビジネスの柱となる基幹業務と位置付けている。

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 インターネット通販というと、インターネットというメディアの特徴からか、ハイテクだけれど非常に機械的で人間味がないような印象を持つ人も多いだろう。カスタマーサービスセンターではそんなイメージを払拭し、時間や場所にとらわれずいつでもどこでも必要な商品を購入できるインターネット通販のメリットをお客様に安全に、かつ安心して享受していただくことを目的に、正確・迅速であることに加えてハートフルな顧客サービスの提供に努めている。その効果が、同社の成長に表れていると言っても過言ではない。

ケンコーコムトップページ

ケンコーコムのホームページ(http://www.kenko.com/)

カスタマーサービスセンターはすべてインハウスで運営

 カスタマーサービスセンターは、東京・赤坂の本社内に設置されている。ここで受付体制を見てみよう。
 電話窓口の受付時間帯は平日の9時から21時までと、土日・祝日の9時から17時(12時から13時は除く)まで。総勢25名のコミュニケータが2交代制で勤務している。このほか、薬剤師を常駐させて、「妊娠中の注意点は?」「プロテインの効果的な摂取法は?」といった個々の健康に関する専門性の高い質問や相談に対応している。
 コールセンター/コンタクトセンターで対応を担うスタッフの名称は、エージェント、TSR、テレコミュニケータ、コミュニケータ、オペレータなどさまざまだが、同社では、カスタマーサービスセンターの業務の特徴から、コミュニケータと呼んでいる。
 ここで特筆すべき点は、同社のコミュニケータがすべてインハウスで運営されているということ。同社のビジネスを理解し、豊富な商品知識と応対マナーを備え、さらにサービスポリシーを受け継いだ人材を育成するには、アウトソーシングでは難しいと判断したためだ。
 また、お客様に気軽に電話をかけていただきたいと考える同社では、受付窓口に、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを採用している。
 通信販売の電話受注窓口にフリーダイヤルが導入されているケースは多いが、同社の場合、通信販売であっても注文は9割がインターネットによるもの。フリーダイヤルに寄せられるのは問い合わせなどが中心とだが、同社ではお客様の健康に関するもの、口に入れるものを扱っているからこそ、気軽に問い合わせをしていただきいたいと考えているのである。電話を掛けやすい環境作りにフリーダイヤル導入は不可欠だったのだ。

コール増に伴いシステムを強化

 受付システムには、システムベンダーと共同で開発したコールセンターシステムを活用。具体的な数字は後ほど紹介するが、昨年からカスタマーサービスセンターへのアクセス数が急増していることから、システムベンダーと共同で受付システムの強化を図ったという。
 大きな改善点は、1本のコールを終えて次のコールを取るまでの時間をコミュニケータがコントロールできるようにしたことである。
 従来のシステムでは、現在の急増したアクセス数に追い付かず、人員数を上回るコールが寄せられた場合、コミュニケータが電話を切ると、後処理をする間もなく、次のコールが着信してしまい、落ち着いて対応することができなかったのだ。
 インバウンド・コールセンターの運営上、難しい点として、入電予測と最適な人員配置が挙げられる。ケンコーコムの場合、テレビで健康食品や健康グッズが紹介されると、一気に問い合わせが増えることがある。外的要因によるコール増にも対応できるよう、TV番組をチェックしたり、eメールと電話の受付状況とコミュニケータの稼動状況をリアルタイムで把握して30分単位で最適人員をシミュレーションしたりと、さまざまな対策を講じているという。

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お客様からの問い合わせに丁寧に対応するコミュニケータたち

“人間力”を強みに過渡期を乗り切る

 ケンコーコムの認知度が高まり、商品が充実するにつれ、カスタマーサービスセンターへのアクセス数は、増加している。特に2003年初頭からの伸びは著しく、現在、受電件数は1カ月当たり約1万件となっている。2003年初頭の受電件数は1カ月当たり2,500件。わずか1年半ほどで4倍に増えた。
 受注や問い合わせなどお客様のコンタクト履歴はすべてデータベースに蓄積。同じお客様からの2度目以降の問い合わせなどには、この履歴をもとに対応することで、円滑なコミュニケーションを実現している。
 また、多く寄せられる問い合わせについては、Webサイトに「お買い物に関してよくある質問」として公開。意見や感想については、商品に同梱するコミュニケーション誌「さーの!」に掲載し、ほかのお客様にも紹介している。
 また、通話時間はコール内容によって異なるが、平均2〜3分。カスタマーサービスセンターでは、通話時間や1日に対応した件数でコミュニケータを評価することはしないという。なぜなら、通話時間の長さや件数がお客様の満足度に比例するわけではないからだ。
 件数のノルマが厳しくないことに加えて、システムの強力なサポートを得たコミュニケータたちは、限られた人員で大量のコールに対応しながら、サービス品質も維持しているという。
 もちろんこれには、“人間力”も欠かせない。インターネット通販はハイテクな世界だが、カスタマーサービスセンターはツールはハイテクでも、それぞれのお客様の視点に立ったサービスが必要なアナログな世界だ。ビジネスが飛躍的な成長を遂げる中で、カスタマーサービスセンターもまた過渡期にある。これまで質を落とさずにセンターを運営できたのも、コミュニケータ一人ひとりのスキルや資質によるところが大きく、これが同社の強みでもあるのだ。

ケンコーコムヘルプページ1 ケンコーコムヘルプページ2

Webサイトのヘルプページにある「お買い物に関してよくある質問」

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コミュニケーション誌「さーの!」。エスペラント語で「ご健康を!」という挨拶の言葉「SANO」にちなんで名付けられた

課題は人材育成と個人情報保護

 生活者の健康への関心の高まりは依然衰える様子がない。これを追い風に、同社はこの6月16日にマザーズへの上場を果たし、その勢いは、今後も衰えることはないだろう。こうした中、カスタマーサービスセンターでは、人材育成を最重要課題に挙げている。
 現在は、同社のサービスマインドを受け継ぐことができる人材、つまりお客様の視点に立った対応ができる人材を確保するため、採用時に人間性を重視。これと同時に、初期研修とフォローアップ研修にエネルギーを注いでいるものの、教育の仕組みが完全に確立されているとは言い難い。そこでコミュニケータを無意味に束縛する操作手順のようなものではなく、行動指針を示すような、同社のサービスマインドをコミュニケータが共有するためのマニュアルを早々に完成させる計画だ。
 そしてもうひとつ、大きな課題がある。個人情報保護への取り組み強化だ。2005年4月に個人情報保護法が全面施行される。カスタマーサービスセンターは、お客様の住所や電話番号、クレジットカード番号、購入履歴など、あらゆる情報が集まる、いわば情報の宝庫。それゆえに、取り扱いには細心の注意を払うと同時に、情報を漏えいさせない厳重な仕組み作りが不可欠だ。この取り組みのひとつとして、今年度中のプライバシーマーク取得を目指している。
 カスタマーサービスセンターでは、今後もすべてのお客様に満足していただけるサービスの提供と、それを実現する体制作りに邁進。センターの規模が拡大しても、現行のサービスポリシーを貫いていきたいとしている。


月刊『アイ・エム・プレス』2004年7月号の記事