コンタクトセンター最前線(第7回):営業基盤・情報収集窓口としてのコンタクトセンター確立に注力

アフラックダイレクトドットコム(株)

2000年5月にアメリカンファミリー生命保険会社とNTTコムウェア(株) の合弁会社として設立された、アフラックダイレクトドットコム (株) 。 同社では、アメリカンファミリー生命の代理店として、インターネットによる通信販売を展開。 営業基盤かつ情報収集窓口としてコンタクトセンターを開設し、資料請求や各種問い合わせを受け付けている。

ビジネスの変遷

 1999年秋に、アメリカンファミリー生命保険会社(以下、アメリカンファミリー)の一部門としてインターネットを介した保険商品の販売をスタート。翌2000年5月に同社から独立し、同社とNTTコムウェア(株)との合弁会社として設立されたアフラックダイレクトドットコム(株)(以下、アフラックダイレクト)。
 アメリカンファミリーがホール(団体)市場にウエイトを置いていたため、大手企業に勤める男性の契約者が多く、中小企業や個人事業主、専業主婦へのアプローチが難しかったこと。最近では男性だけでなく女性のネットユーザーが増えていること。また、実際に家庭で保険を検討するのは主婦であること。日本の多くの生命保険会社では、かねてよりセールスレディーと呼ばれる女性を起用しており、経験者も多い。そのため、女性の方が保険に馴染みがあるものと考えられること…。
 こうした数々の理由から、アフラックダイレクトでは「個人」「20~40代の女性」をターゲットにビジネスを展開。マルチチャネルコンタクトセンター、ICO(インターネット・カスタマー・オフィス)を開設し、電話とeメールによる商品に関する問い合わせや資料請求の受け付けを開始した。
 新たな市場にターゲットを絞ったこと、女性系サイトとのタイアップや女性誌への広告出稿など積極的なPR活動に注力したことが功を奏し、順調に契約を獲得。その後、2001年2月には、アメリカンファミリーが10年ぶりにがん保険をリニューアルし、保障内容のセミ・オーダーメードが可能となった「21世紀がん保険」が登場。これに併せて、アフラックダイレクトのWebサイト上でもこの「21世紀がん保険」の保障内容をセミ・オーダーメードする「自由設計」という仕組みを開発、これが人気商品のひとつとなった。さらに同年7月、アメリカンファミリーとアフラックダイレクトのサイトを統合。アメリカンファミリーのほぼすべての商品の取り扱いを開始すると同時に、男性もターゲットに加えることで、より多くの契約者を獲得することに成功した。
 このようにアフラックダイレクトのビジネスは順調な成長を遂げている。現在、電話やインターネットによるコンサルティングの要素を取り入れたセミオーダーメード型販売スタイルの確立を目指している。

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お客様に合った商品を提案する「あなたに“ぴったりフィット・ナビ”」の画面(左)。自分の現況に近い項目をクリックするとアドバイスが表示され、さらに商品の詳細説明(右)へと移行する。さらに自由に商品を設計し、保険料を試算することもできる。商品説明画面下にはICOのフリーダイヤル番号が掲載されている

ネット通販の要となるコンタクトセンターは社内に

アフラックダイレクトのビジネ スの概要は、図表1の通り。

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 取扱商品を問わず、ネット通販の両輪をなすのがWebサイトとコンタクトセンターである。これらが相乗効果を発揮することで、はじめて顧客を満足させ、購入へと促すことができる。ICOは、サイトと同様にアフラックダイレクトのビジネスに不可欠な存在なのだ。
 ICOのミッションは2つ。営業基盤であることと、情報収集窓口であること。ICOへの問い合わせは営業のチャンスととらえて成約に導くとともに、ICOに寄せられた声をマーケティングに反映させようというのである。
 立ち上げ当初よりコンタクトセンターの重要性を認識していた同社では、センター業務をアウトソーシングせず、社内に設置。カスタマーリレーション部の管理のもと、スーパーバイザー(SV)とオペレータは某テレマーケティング・エージェンシーからの派遣スタッフを起用する、インソーシングのスタイルをとった。その後、取扱商品数の拡大に伴い、2001年秋より、完全にインハウス化。現在、トレーナー1名、SV1名、オペレータ3名で対応に当たっている。
 受付チャネルは電話とeメール。全オペレータが電話、eメールの双方に対応している。
 電話による受付時間帯は、平日の午前9時から午後6時まで。土日・祝日は休業となっている。
 受付窓口には、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルサービスを採用。保険の購入は、洋服などの購入に比べ敷居が高い。お客様の通話料負担をなくすことで少しでも敷居を低くし、アクセスしやすい環境を整えることが狙いだ。
 センターシステムには、NTTコムウェアのASPサービスを利用。eメール対応ソフトにはeGainを使用している。ASPサービスのメリットは、低コストでリードタイムが短いこと。ICOでは、約2カ月でシステムを構築した。
 eメールでの問い合わせの場合、1通のメールにいくつもの質問が書かれているなど、難易度にばらつきがある。そこでICOでは、eGainにFAQを登録。オペレータをサポートし、効率的・均一的なオペレーションの実現に努めている。

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パーティションは使わず、開放的な雰囲気のICO。
顔が見えるので、スタッフ間のコミュニケーションが取りやすい

もどかしいeメール対応

 eメールには、通信コストが安いなどメリットがある反面、eメールならではの対応の難しさがある。
 特に生命保険の場合には、さまざまな専門用語がある。例えば、「保険金」と「保険料」はよく似た言葉だが、意味がまったく違い、使い方を間違えると意味が通じなくなってしまう。専門用語を正確に理解しているお客様は少ないため、記述内容がお客様の意図することと異なっていたり、用件が理解できなかったりするのである。 こういった場合には、用件を推測し、お客様に質問の意図を確認してから回答している。このため、電話のようにその場で確認をして、適切な回答ができないところに歯がゆさを感じるという。
 また、電話以上に個人の特定が難しいのがeメールである。従って、ICOから発信するeメールには、個人情報は一切記載できない。そこがもどかしいところでもある。
 今後は、個人情報もやりとりできる高セキュリティー環境を設けることも検討していきたいとしている。

新商品の投入と契約者増で受付件数が急増

 ICOはeメール中心のコンタクトセンターであるが、このところ電話の受付件数が増加。2001年冬から3倍に増えている。
 電話の受付件数が増えた理由としては、次のことが挙げられる。
 まず、終身型の「特約MAX21」や、2002年2月に発売した終身医療保険「一生いっしょの医療保険EVER」がお客様の注目を集め、問い合わせや申し込みが増えた。
 次に、契約者の増加に比例して、既契約に関する問い合わせが増えたことが挙げられる。資料請求から契約までの問い合わせにはeメールが使われることが多いが、契約後は、その場で回答が得られることから、電話での問い合わせが多くなっているという。
 スタート時は、e メールでのコンタクトが主体となることを想定していたため、システムにe Gainを採用した。しかし、電話での受付件数がeメールを上回ってきているのが現状。今後は、システム投資を行い、電話対応に則したシステムを作り上げていきたいという。

資料請求から21日間が勝負

 ネット通販のメリットは、営業員を介さず、お客様が好きな時に、自由に商品を検討できることにある。しかし、資料請求の後、申込書を送付しなければ契約は成立しない。一般的に資料請求日から21日間が勝負と言われており、これを過ぎてしまったお客様は、成約率が著しく低下するという。資料請求を確実に契約につなげるためには、申し込みを決断させるだけの動機づけの仕組みが必要だ。ICOではこの3月より、企画部門と共同で、がん保険の資料請求者を対象に、eメールを活用したフォローメールの送付を拡大した。
 フォローメールには、いくつかのパターンある。以下に代表的なものを4つ紹介しよう。
 ひとつ目は、資料送付日に送付する「これから発送します」という内容のeメールを皮切りに、「資料は届きましたか」「資料を見ていただけましたか」「検討していただけましたか」といったeメールを順に送るパターン。2つ目は、資料請求日から7日間にわたってがん保険にまつわるエピソードを面白おかしく書いたメールマガジンを送るパターン。そして3つ目は、資料請求日から数日後にがん保険に関するFAQをまとめたものを送付するパターン。最後に4つ目は、資料請求日以降、あえて何のアクションも行わないパターン。 (資料1)

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【資料1】 フォローメールひとつ目(左)と2つ目(右)のeメール・サンプル

 まだ実施期間が短いため、結果がでるのはこれから。ICOでは、フォローメールパターンごとに成約率の違いをウオッチし、より効果的なアクションプランの作成に役立てていくという。

スムーズなセンター運営実現の後に浮上した課題とは

 ICOの立ち上げから2年が過ぎ、スムーズな運営が可能になったところで、新たな課題が見えてきた。それは、応対品質の向上とお客様の声の活用方法である。
 継続的にビジネスを成長させるためにも、応対品質の向上は欠かせない。ICOでは、オペレータを増員しつつ、応対品質を高めていく意向だ。
 応対品質向上の要となるのは、教育である。研修プログラムの体系化はなされていないが、社内に教育担当者を置いていることと、少人数であるメリットを活かして、充実した研修を実現している。フォローアップ研修を例に挙げると、まず、オペレータにアンケートを行い、日々の業務における不明点を収集。それに基づき、週に1度、研修を実施している。
 次に、お客様の声の活用だが、これはICOがプロフィットセンターとなるためにも注力すべき点である。現在ICOでは、お客様の声をどのように分析して、どうビジネスに反映させていくのか模索中だ。

価値ある情報提供とアウトバウンドを推進

 今後ICOでは、お客様がWebサイトで迷ったり疑問が生じた場合、単に問い合わせに回答するのではなく、専門知識を活かしてアドバイスを行ったり、より適した商品を提案するなど、付加価値を付けることで、満足度の高いサービスを提供していく意向。ICOに問い合わせて良かった、アフラックダイレクトで契約して良かったと思っていただける対応を目指し、何かあったらICOに電話しようと思われる、いつもお客様のそばにいる存在になりたいとしている。
 また、今後はアウトバウンド業務も手がける意向。具体的には、現在Webマーケティング部で行っている新商品のお知らせを、顧客情報に基づき、契約時期を見計らって発信するというもの。対象は、既契約者で別の商品に関する問い合わせのあった方。お子さまの入学・進学のタイミングに合わせて学資保険を紹介するといった具合に、一人ひとりのお客様に最適な情報を発信していきたいとしている。
 ブロードバンドの普及も進み、一般家庭におけるネット環境はますます向上してきた。また、インターネット利用者が増えていることから、アフラックダイレクトではまだまだ市場を拡大できるものと見ている。市場拡大のためにも、ICOの充実は不可欠である。


月刊『アイ・エム・プレス』2002年7月号の記事