通信ネットワーク最前線(第59回):コンタクトセンターを新設し「真の顧客中心型ビジネス」を追求

ダイキン工業(株)

ダイキン工業(株)では、2001年5月7日より東京と大阪の2カ所に「ダイキンコンタクトセンター」を開設。顧客情報から技術情報までの一元管理を行い、顧客から寄せられる問い合わせや相談への的確、かつ迅速な対応を目指している。

東京と大阪にコンタクトセンターを開設

 空調・冷凍機などを取り扱うダイキン工業(株)。同社では、空調関連のすべての問い合わせや相談に対応する「ダイキンコンタクトセンター」を、2001年5月7日より東京・大阪の2カ所に開設した。
 同社では従来、顧客(エンドユーザーと販売店)から寄せられる年間約130万件にもおよぶ空調に関する問い合わせに対し、サービスフロントセンター3拠点、エアコンお客様センター2拠点、パーツセンター2拠点、エアネットコントロールセンター1拠点、サービスステーション60拠点、販売会社相談窓口20拠点の全国88カ所の窓口で対応していたが、顧客にとっては、問い合わせ先がわかりにくかった。また、ITの発展によって、インターネットや携帯移動端末の重要度が高まり、顧客対応窓口にもあらゆるメディアを採り入れることが必要不可欠となってきた。このような背景から、あらゆるメディアからのアクセスを可能にし、「真の顧客中心型ビジネス」を追求する「ダイキンコンタクトセンター」の開設に踏み切ったのである。コンタクトセンターの開設と同時に、顧客情報から技術情報までの一元管理を行うことでCRMを推進。全国の顧客から寄せられる問い合わせや相談への的確、かつ迅速な対応を目指している。

コンタクトセンター5つの特徴

 同社では、「ダイキンコンタクトセンター」の特徴として、以下の5つを挙げている。
 まずひとつ目は、24時間・365日の有人対応を実施していること。24時間であることの理由は、病院のほか、コンビニエンスストアや飲食店 など24時間営業している顧客が多いためである。加えて、昨今の傾向して、業種を問わず営業時間はおしなべて長時間化する傾向にある。
 2つ目は、全国共通のフリーダイヤル番号による窓口の一本化。前述の通り、対外窓口を統合する以前は、用件ごとに6種類の窓口があったため、顧客にとってはどこに電話をかければいいのかがわかりにくいという現状があった。そこで同社では、NTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを導入。オプションサービスのひとつである、全国共通番号サービスを利用して番号を一本化することにより、わかりやすく、かつ覚えやすくしたわけだ。
 ちなみに全国共通番号サービスとは、全国共通のひとつのフリーダイヤル番号にかかってきた電話を、発信地域によってあらかじめ指定した受付先につなぐサービス。ひとつの電話番号で一元的なPRをしつつ、複数の拠点で受付業務を行うことができる。同センターでは、この機能を活用して自動的に東京と大阪にコールを振り分け、効果的かつ効率的な受付業務を実施している。
 また、携帯電話・PHSからの着信を可能とすることで、顧客の利便性を高めている。
 続いて3つ目は、IVRにより用件に合ったオペレータに接続していること。顧客からの電話が着信すると、まずIVRで対応。用件に合わせて担当のオペレータに接続し、迅速・親切・的確な対応を実現している。
 4つ目は、すべての対応履歴をデータベース化していること。CTIとナンバー・ディスプレイを活用して着信と同時に顧客情報をオペレータ端末にポップ・アップすることで、的確でスピーディーな対応を実現している。
 そして5つ目は、e-SWAT(イースワット)システムの導入だ。e-SWATとは、最新の情報通信技術を駆使したモバイルコンピューティングシステムで、同社では全サービスエンジニア(SE)にモバイル端末を配備。コンタクトセンターでは、地区別にSEひとりひとりの行動予定を把握しており、修理を受け付けるとその中で一番早く訪問できるSEを検索。修理依頼内容をSEへ送信したり、現地のSEへ修理に必要な技術情報を提供している。また、SEがサービス状況や結果を現地で入力することにより、コンタクトセンターでリアルタイムに状況を把握し、修理を依頼した販売店へFAX、またはeメールで自動的に報告できる仕組みになっている。

西日本ダイキンコンタクトセンターのオペレーション風景

西日本ダイキンコンタクトセンターのオペレーション風景。
パーティションで規則正しく仕切られている


ヒット率8割を誇るナンバー・ディスプレイ

 受付内容は、大きく分けて①修理に関する問い合わせ、および修理受付、②SEや販売店からの技術相談対応、③パーツに関する問い合わせ、および注文受付、④製品カタログの請求受付や苦情・要望などその他相談対応の4つ。これらの用件ごとに4つのグループを設け、簡単な問い合わせから専門的な相談まで用件に応じた専門のスタッフが24時間・365日フルタイムで対応している。
 受付窓口には、電話、FAX、インターネットを活用。両センターの電話による受付体制を見ると、まず、東日本ダイキンコンタクトセンター(以下、東日本)の席数は100席。コールの状況に応じて、48~100名が対応に当たる。所在地は東京で、担当エリアは神奈川、長野、新潟を境いに以東、北海道までの全17都道県となっている。
 一方、西日本ダイキンコンタクトセンター(以下、西日本)の席数は東日本の約1.5倍の143席。こちらもコールの状況に応じて、86~143名が対応に当たる。所在地は大阪で、担当エリアは、富山、岐阜、愛知、静岡より以西の全30府県となっている。
 コールセンター・システムにはCTIを導入。NTT東西地域会社のナンバー・ディスプレイサービスを利用することにより、電話番号をもとにデータベースを検索。着信とほぼ同時に顧客情報をオペレータ端末にポップ・アップさせ、スピーディーで的確な対応を可能にしている。気になるヒット率だが、番号を非通知に契約している顧客に対して、番号を通知する「186」を頭に付けてダイヤルしていただくようお願いすることで、7~8割という高いヒット率を実現している。

すべての受付内容の一元管理を実現

 コンタクトセンターのシステム概要は図表1のようになっている。
 まず、フリーダイヤルで着信したコールは、IVRで用件に応じて担当グループに振り分けられ、電話番号で顧客を認識できれば、オペレータに着信すると同時に共通画面が端末にポップ・アップされる。共通画面には、顧客の氏名、住所、電話番号のほか、過去の受付履歴が表示される。オペレータはこれをもとに顧客に対応。専門知識を必要とする高度な内容の場合には、専門スタッフに電話を転送している。この時、顧客情報・対応履歴の画面も同時に転送される。受付システムは、各業務ごとに必要な全履歴管理システム、修理対応システム、部品対応システム、技術相談システムの4つのシステムで構成されている。中でも部品対応システムは高度な検索機能を備えている。100万点におよぶ部品情報が登録されているが、それを製品の展開図を使ったイメージ検索でスピーディーに検索することが可能だ。技術相談対応システムには、販売店へ提供している技術関連資料の約13年分のデータが蓄積されている。受付後は、修理依頼受付の場合は、e-SWATシステムでSEへ自動的に出動指令を出し、部品注文の場合は、オンラインでパーツセンターに出荷依頼をする。
 FAXで受信した場合は、用件ごとに担当オペレータが修理受付画面に入力し、確定ボタンを押すと、自動的に修理依頼者にFAXで受付結果報告が送られる仕組みとなっている。その後は電話の場合と同様である。
 インターネットで受け付けた用件は、オペレータが内容を確認し、確定ボタンを押すと、あとは自動的に処理され、処理状況を逐次監視している。
 インターネットでは修理受付、部品の注文受付を行っているほか、販売店を対象に会員制度を設けてコンタクトセンターで保有する技術情報や対応履歴情報を提供する「iサービス」を開始した。これにより同社では、積極的に販売店と情報の共有を図り、CRMを推進していく考えである。現在、販売店へのPRを行い、契約を募っているところだ。
 フリーダイヤル、FAX、インターネットで受け付けたすべての用件は、各システムに蓄積され、一元管理がなされている。

【図表1】

年間約130万件の受け付けを予測

 コンタクトセンターに寄せられるアクセス件数は、電話が1日平均2,500コール。最も多いコール内容は修理依頼受付で、全体の約80%を占めている。また、アクセスが最も多い曜日は休み明けの月曜日。時間帯は朝一番の9時となっている。同センターでは、1件当たりの目標対応時間を5分に設定しているが、ベテランになると4分ほどで対応できるという。
 こうした受付状況の把握にはPBXの機能を活用。刻々と変化する数値をプロジェクターでセンター中央に投影し、どの席からも現在の状況を見ることができるようになっている。
 同社が扱う商品の特性として、暑くなるとアクセス件数が増える傾向にある。西日本では、6月半ばの30度を超えた日には、1日に4,500件ものコールが寄せられたという。同センターのキャパシティを考えると、1日約8,000コールまで対応可能としており、今後1年間の受信件数を東日本で59万3,000件、西日本で71万5,000件、計130万8,000件と予測している。
 また、FAXは1日平均600件、インターネットはわずかとなっている。

アウトバウンドの実施を予定

 今回のコンタクトセンター開設によって、インバウンドの受付体制は完成した。今後同社では、次の展開としてアウトバンドコールに取り組む計画。待ちのインバウンド業務には、どうしても遊びの時間が生じてしまう。その時間を効果的に活用し、オペレータの稼働効率を高めていこうというわけだ。具体的には、コンタクトセンターに電話をしてくださった顧客を対象にサンキューコールを実施。お礼を兼ねて対応への満足度を調査すると同時に、エンドユーザーのプロファイルをヒアリングするというもの。収集した顧客情報を商品を作り込む際のターゲットの絞り込みや、ニーズの見極めに活用していきたいとしている。
 同社では、コンタクトセンターで収集した情報を商品やサービスに反映させ、CRMを推進するために、関連部署への提案力を強化していく意向だ。

ダイキンコンタクトセンターのホームページ画面

ダイキンコンタクトセンターのホームページ画面(http://www.daikincc.com/)。
用件ごとにインデックスがわかりやすく表示されている


月刊『アイ・エム・プレス』2001年8月号の記事