通信ネットワーク最前線(第54回):メディアの融合によりブランドの確立と販売効率の向上を目指す

(株)リプル

2000年より自社開発の敏感肌用基礎化粧品の店舗販売と通信販売を開始した(株)リプル。アナログメディアとインターネットを融合し、その相互作用によってブランドの早期確立と販売効率の向上を目指す同社の取り組みと、コールセンターについて話しを聞いた。

10カ月で売上目標を達成

 (株)リプルは、「Fit in with Future(未来と調和して)」「With all one’s Heart(真心を込めて)」「…and One to One(ひとりひとりと)」を企業フィロソフィーに、1999年4月に創業した化粧品メーカー。2000年2月より、独自に開発した敏感肌用基礎化粧品「FECICA(フェシカ)」の通信販売を開始。翌3月からは店舗販売にも乗り出している。
 「FECICA」は小児皮膚科医、山本一哉先生の「生まれたての赤ちゃんの肌には、乾燥もアトピー性皮膚炎もない」という一言をきっかけに「羊水」「母乳」から生まれた敏感肌用基礎化粧品。表示指定成分・着色料・香料・アルコールなどの不安要素を排除した安全安心設計を推進しているほか、すべてをお客様に伝えるために全成分表示を行うなど、前述の企業フィロソフィーを具現化している。
 通信販売では、カタログとインターネットを活用。一方、店舗販売では、全国の有名百貨店に出店している。同社では、2000年から2001年初頭にかけて出店数を大幅に拡大。現在ではその数約80店舗に及んでいるほか、事業開始から10カ月で初年度の売上目標であった5,000万円を売り上げ、好調な滑り出しを見せた。

申し込みメディア別にリピート・オーダー獲得策を展開

 「FECICA」のターゲットは敏感肌の25~30歳の女性。同社では、このターゲット層を深耕するべく、あらゆるメディアを活用したプロモーションを展開している。
 同社の通信販売システムは、ファッション誌や生活情報誌などの雑誌広告、新聞折り込みチラシなどのアナログメディアとホームページにより1,500円のトライアルキットの購入を促進。その後、トライアルキット購入者のリピート・オーダーを促進するという2ステップ方式を採用している。申込受付には、電話、FAX、ハガキ、インターネットを活用。また、ホームページの告知には、アナログメディアとYahoo!などの検索エンジンを利用している。
 リピート・オーダーの獲得には、各種アナログメディアからの申込者とホームページからの申込者とで異なるアプローチを展開している。
 まず、各種アナログメディアからの申込者には、トライアルキット申し込みの4週間後にアウトバウンド・テレマーケティングを実施。リピート・オーダーのない顧客には、さらにその4週間後にダイレクトメールを送付している。
 一方、ホームページからの申込者には、リピート・オーダーに至るまでのプロセスを4つのステップに分解し、自動・手動を合わせて計10回にわたるメールを配信(図表1)。トライアルキット到着確認後、4回目のメールからは4タイプのバーチャル担当者が接客。そして5回目以降は、顧客ごとにカスタマイズしたホームページを通してコミュニケーションを図っている。なお、バーチャル担当者は、顧客の年齢などに応じて使い分けている。

【図表1】

コールセンター業務はすべてアウトソーシング

 電話、およびFAXによる注文受付、問い合わせ・美容相談には三重県松坂市にあるコールセンターで対応。コールセンターは2000年2月の通信販売開始と同時に開設された。
 受け付けには、顧客の負担を軽減するために電話、FAXともにNTTコミュニケーションズのフリーダイヤルを採用。回線数は電話が6回線となっており、携帯電話、PHSからの着信も可能にしている。一方、FAXは1回線となっている。
 受付時間帯は、午前9時から午後9時まで。10名のオペレータと3名のスーパーバイザーが対応に当たる。オペレータ対応終了後は、留守番電話システム「きくまるくん」で受け付け、翌営業日に確認のコールバックを行っている。
 また、コールセンターでは、ホームページからの問い合わせや注文受付にも対応しているほか、広告出稿後のフォローコール、トライアルキット購入者に到着の確認や使用感をうかがうフォローコールといったアウトバウンド業務も行っている。詳細は後述するが、リピート・オーダーの21%はフォローコールによって獲得しているという。
 同社では、これらのコールセンター業務を(株)NTTテレメイトにアウトソーシングしている。コールセンター開設に当たり自社でスタッフを調達することも考えたが、電話応対の基本を一から教育するより、その道のプロに一任したほうがいいとの見解からアウトソーシングに踏み切った。スタッフは、営業担当者からオペレータまで「FECICA」のターゲットである25歳から30歳の女性を中心に構成。すべてのオペレータに商品を使用させ、「商品の良さ」を肌で理解することからはじめている。

敏感肌の第一人者を目指してオペレータ教育に注力

 オペレータの教育に関しては、前述の理由から、同社と(株)NTTテレメイトとで役割を分担し、共同で取り組んでいる。
 教育の内容は、会社概要や商品知識とオペレーション・スキルに大別することができるが、前者を同社が、後者を(株)NTTテレメイトが担当。
 商品知識の研修に当たっては、同社がマニュアルを作成。オペレーションに関しては、(株)NTTテレメイトに「リプルの社員としてではなく顧客側に立った対応をしてほしい」という趣旨を伝えた上で、実際のカリキュラムについては(株)NTTテレメイトに一任しているという。
 また毎月1回、本社研究室の研究員が松坂市まで足を運び、フォロー研修を実施。オペレータのスキルアップを図っている。
 同社では、オペレータに顧客と親密な関係を築けるような、顧客の心をつかむオペレーションを期待。さらに、美容に関する豊富な知識を備えることで、“敏感肌のことならリプル”という評判を築き上げたいと考えている。今後はそれを実現するためにも、オペレータの教育に注力していく意向だ。

初回はハガキによる受注を促進

 受注・各種問い合わせ・美容相談の合計月間コール数は約1,000件。同社では、電話回線数が6回線のみとなっているため、ハガキ付きの広告を出稿することで、ハガキによるトライアルキットの受注を促進している。
 2000年12月現在、トライアルキットの受注における利用メディアの構成は、ハガキが68.2%、電話(インバウンド)が21.1%、インターネットが5%、きくまるくんが2%、FAXが1.5%。
 リピート・オーダーにおける利用メディアの構成は、電話(インバウンド)が39%、電話(アウトバウンド)が21%、FAXが14.4%、ハガキが14%、インターネットが6%、きくまるくんが4%、その他が2~3%となっている。同社では、日々コールセンターに寄せられる顧客の声を社内にオープンにし、既存商品の改善や新商品の開発に役立てている。
 また、毎月本社研究室の研究員が松坂市まで出向いた際に、オペレータとのディスカッションを実施。お客様の生の声や現場の情報をより多く収集することに注力しているという。

トライアルキット

クレンジングジェル、クレンジングフォーム、ローション、エマルジョン、
エッセンスがセットになったトライアルキット。
これを購入していただくことから顧客との関係作りがはじまる


ホームページに工夫を施し積極的に活用

 同社では、前述の通り、バーチャル担当者を設け、顧客ごとにカスタマイズしたホームページを通じて顧客とのコミュニケーションを図るなど、ホームページにさまざまな工夫を施している。
 ホームページの主なコンテンツは商品案内、ショッピング、会社案内、アトピークリニック、Fanとなっており、トライアルキット購入時の参考となる肌タイプ診断機能も用意されている。このほか、ボイスアナウンス専用ページでの音声による商品紹介や会社紹介サービスを提供。視覚障害者でも同伴者にホームページを操作してもらえば、音声で直接聞くことができる。
   同社では、半年に1度の頻度でホームページの見直しを行っており、2000年11月には2度目のリニューアルを実施した。このリニューアルでは、これまでトライアルキットを購入して、実際に試してからでないと商品が買えないというこれまでの仕組みを変更。トライアルキットを購入しなくてもはじめから商品を購入できるよう改め、すぐに商品を買いたいという顧客のニーズに応えた。
 このほか、美容情報などを満載したメールマガジンを発行。今話題の女性サイト「Cafeglobe.com」との提携により、「大人の敏感肌、救済大作戦」と題して、同サイト専用商品を開発。ネット上でセグメントされたコミュニティに働きかけるインタラクティブ・マーケティングを推進している。
 同社では、従来からのアナログメディア、インターネットや店舗といったあらゆるメディアを活用しているが、最終的には、これらのメディアへの顧客からのアプローチをすべてホームページに集約していく考えだ。

ブランド力強化への取り組み

 同社ではこれまで、テストマーケティングの意味合いも含めてファッション誌、生活情報誌、美容情報誌など延べ16誌に広告を出稿し、レスポンス率を見てきた。今後はその結果を基に、レスポンス率の高い媒体に絞り込んでプロモーションを展開する方針だ。
 また、化粧品業界初のオリジナル商品を販売するなどしてブランド力の強化に取り組み、ブランドの早期確立に努めていく意向。さらに、従来からのアナログメディアはもちろん、インターネットや店舗といったあらゆるメディアを融合し、その相互作用によりブランドの早期確立と販売効率の向上を図っていきたいとしている。

ショップリスト

ショップリストや最新情報のほか、ホームページの構成が一目でわかるトップ画面
(URL: http://www.ripple.ne.jp/)

「大人の敏感肌救済大作戦」

「大人の敏感肌救済大作戦」では、掲示板に寄せられた意見をもとにパックを開発

ボイスアナウンス専用ページ。 ボイスアナウンス専用ページ。

ボイスアナウンス専用ページ。FECICA誕生の由来からラインナップ、使用方法などと会社案内を流している


月刊『アイ・エム・プレス』2001年3月号の記事