通信ネットワーク最前線(第46回):CTIの導入により生産性と顧客満足を向上

ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)ビジョンケアカンパニー

ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)ビジョンケアカンパニーでは、国内初のディスポーザブル・コンタクトレンズ発売を機にカスタマーサービスを開設。同センターの現状と今後の展開について話を聞いた。

品揃えとブランド力でシェアを拡大

 アメリカで誕生したジョンソン・エンド・ジョンソンは、世界最大のトータルヘルスケアカンパニーとして、創業以来、医療用製品を次々と開発。現在では、世界52カ国に約190社の系列企業を有し、約175カ国で製品を販売している。
 その日本法人であるジョンソン・エンド・ジョンソン(株)は、1961年より事業活動を開始。現在、コンシューマーカンパニー、メディカルカンパニー、ビジョンケアカンパニーの3つの社内カンパニーを通して、医療・ヘルスケアの発展に努めている。
 ディスポーザブル・コンタクトレンズ等ビジョンケア関連製品の輸入・販売を手がけるビジョンケアカンパニーでは、世界ではじめて製品化に成功した1週間連続装着が可能なディスポーザブル・コンタクトレンズ、アキュビュー®を発売。その後、2週間装着が可能な2ウィークアキュビュー®とシュアビュー®、毎日新しいコンタクトレンズを使用できるワンデーアキュビュー®、さらに遠近両用の2ウィークアキビュー®バイフォーカルを投入してラインナップを拡充。品揃えとブランド力を強みに、飛躍的にシェアを拡大している。

「アキュビュー®」の発売を機にカスタマーサービスを開設

 ビジョンケアカンパニーでは、アキュビュー®の発売開始にともない、1991年10月よりカスタマーサービスを開設。コンタクトレンズクリニックやメガネストアーなど、全国約7,000件におよぶ取扱施設からの受注、および各種問い合わせと、消費者からの各種問い合わせに対応している。
 取扱施設からの受注、および問い合わせには、電話とFAX、インターネットを利用。消費者からの問い合わせには、フリーダイヤルとインターネットを利用している。フリーダイヤル番号は、0120-132-308。“瞳に爽やか”と語呂合わせがよく覚えやすい。
 カスタマーサービスの告知媒体としては、取扱施設向けには製品カタログと注文票を利用。消費者向けには、一部の商品のパッケージ、取扱説明書、TVCM、ホームページ、雑誌等を利用している(資料1)。
 受付時間帯は、どちらも月曜から土曜日の午前9時から午後6時までで、日・祝日は休業となっている。
 対応に当たるのは、計17名のスタッフ。取扱施設や消費者からの電話に対応するオペレータが14名、センターの稼働状況を把握して適切な指示を出したり、必要に応じて電話対応(2次対応)を行うチームリーダーが2名、他部門との折衝、システム管理、コールセンターマネジメントを行うスーパーバイザーが1名で構成されている。
 使用回線数は、一般加入回線とフリーダイヤルを合わせて46回線。FAXは33回線を導入。また、受注確認書送信用のFAXを8回線用意している。

カスタマーサービスのオペレーション風景

カスタマーサービスのオペレーション風景

【資料1】告知媒体

【資料1】告知媒体ビジョンケアカンパニーのホームページ
(URL:http://acuvue.jnj.co.jp/)。
「会社概要」の中で、カスタマーサ ービスが告知されている

CTIの導入により生産性とCSの向上を実現

 コールセンターシステムにはCTIを導入。取扱施設情報データベースや問い合わせ履歴を蓄積したデータベースと連動させることにより、効果的、かつ効率的なコールセンター運営を実施している。
 カスタマーサービスでは、1995年よりCTIの構築に着手。まずはIVRを導入し、エンドユーザーからの電話はすべてIVRを経由するよう、コールフローを変更した。
 IVR導入前はすべてのコールにオペレータが対応しており、オーバーフローした場合には、折り返しかけなおす旨の録音メッセージを流していたが、コールバックに時間がかかるなどの問題点があった。また、キャンペーン期間中の受付はアウトソーシングしていたが、満足のいく品質を得ることが難しく、コストが高いという課題もあった。そこで、IVRを利用することでスムーズな情報提供ができる取扱施設の紹介などをIVRに移行する一方、電話の操作が苦手な顧客や込み入った問い合わせにはオペレータが対応することで、すべてのコールにインハウスで対応できる体制を整えた。また、これと同時に、営業時間外の情報提供も可能になった。
 その後、1998年には、円滑なフロントオフィス業務を実現するべく、レメディーのヘルプデスクソリューションAction Request System(以下、AR System)を導入。紙ベースで管理していた問い合わせ履歴をデータベース化し、以前はオペレータが手作業で行っていた検索の自動化を図った。ちなみに、AR Systemの採用に当たっては、システムのレスポンスが良いこと、カスタマイズが容易で、かつ安価であることが決め手となったという。
 さらに沖電気のCTstageを導入して、unPBXタイプのコールセンターを構築。AR Systemと連動する体制を整備した。
 CTIの構築により、コールセンターの生産性向上はもちろんのこと、スムーズで的確な対応が可能となり、取扱施設、エンドユーザー双方の満足度向上が実現した。
 このほかにも、1カ月半にわたっTVCMを放送した場合の問い合わせ受付にかかる外注費を数千万単位で削減することができ、コスト面でも大きな効果を得た。

データベースの検索性を高め即時対応を実現

 IVRには取扱施設の案内、新製品の案内、全製品の案内、キャンペーンの案内、無料体験の案内、オペレータ対応の6つの項目が設定されている。
 具体的なコールの流れを、勤務先近辺にある取扱施設を知りたい場合を例に追ってみよう。
 まず、アナウンスにしたがって取扱施設の案内の番号を入力。次に、郵便番号か主要都市、あるいは県名ごとに設定された番号を入力すれば、該当する施設の名称と電話番号を自動音声で聞くことができる。この情報をFAXで取り出すことも可能だ。また、取扱施設の営業時間などの詳細を知りたい場合は、受付時間内であれば途中からオペレータ対応に切り替えることもできる。
 オペレータは、AR Systemの施設案内入力画面を呼び出し、施設を検索。情報を閲覧しながら対応に当たる。施設の検索項目は前述の郵便番号、県名のほか、最寄り駅や路線名、祝日営業、夜間営業、取扱品目など16項目を数えており、あらゆる問い合わせに瞬時に対応できるよう工夫されている(資料2)。
 また、製品の受注はオペレータが同時に動かしているAS/400に直接入力、問い合わせとクレームはAR Systemにリアルタイムで蓄積される仕組みになっている。

【資料2】オペレータ施設案内入力画面 【資料2】オペレータ施設案内入力画面

【資料2】オペレータ施設案内入力画面

月平均2万件のコールに対応

 受付状況を見ると、カスタマーサービスに寄せられるコール数は1カ月平均2万件程度。2000年4月の受付状況を見ると、総コール数が2万864件で、そのうちオペレータが対応したコールが1万7,697件、IVRのみで対応したコールが2,726件、放棄呼が441件。オペレータが全体の約85%のコールに対応していることになる。
 オペレータが対応したコール内容の比率は、取扱施設からのコールが92.1%、消費者からのコールが7.9%。それぞれの詳細を見ると、取扱施設からのコールは、受注が54.8%、問い合わせが16.8%、営業担当者の呼び出しが9.7%、FAX注文の着信確認が5.2%、他部署への転送が4.9%、意見・要望が0.7%。一方で消費者からのコールは、問い合わせが3.9%、製品に関する意見・要望が2.2%、施設案内が1.8%となっている(図表1)。
 平均通話時間は90秒で、年々短縮傾向にあるという。取扱施設と消費者の通話時間を比較すると、後者の方が長く、その差は2倍程度となっている。

【図表1】オペレータが対応したコールの内訳

【図表2】電話対応の流れ

きめ細やかな指導でオペレータのスキルを向上

 カスタマーサービスでは、1~2カ月間をかけて新人研修を実施。研修項目は、「企業理念」「業務内容」「ビジョンケアカンパニーについて」「眼科知識」「業界について」「サービスとは」「ボイストレーニング」「コミュニケーション」「商品知識」「行動指針」「OJT」と多岐にわたる。
 その後は、新商品の発売やキャンペーンの実施、業務処理プロセスの変更時など、必要に応じてフォローアップ研修を行う。また、コミュニケーション・クオリティの維持・向上のため、毎月スーパーバイザーがモニタリングを実施。スーパーバイザーは、チェックシートの項目をひとつづつ査定し、結果をオペレータにフィードバック。オペレータひとりひとりに、きめ細やかな指導を行っている。さらに、3カ月に1回の頻度で外部のトレーナーによるテープ・チェックを実施している。
 カスタマーサービスでは、教育に力を入れることでオペレータのスキルアップを図ると同時に、プロセスの改善を行ないオペレーションの生産性を向上させていきたい考えだ。
 ちなみに、1998年のNTTユーザ協会が主催する電話応対コンテストでは、優勝という輝かしい成績を修めた。

今後の取り組み

 現在、カスタマーサービスで収集した対応データは「カスタマーボイスレポート」として、イントラネットを通じて社内で共有している。今後は、取扱施設や消費者の貴重な声を効果的に活用できるよう、体制を整えていきたいとしている。
 また、近い将来、営業サポートを目的としたアウトバウンド・コールに取り組む意向。現在、試験的に数十件の取扱施設を対象にアウトバウンド・コールを実施しており、ゆくゆくは全国展開を目指している。アウトバウンドといっても、プレディクティブ・ダイヤリングでのべつ幕無しに発信するのではなく、ある条件に基づいてターゲットを抽出して効果的に、なおかつ効率よくアウトバウンド・コールを実施していきたいとしている。
 ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)ビジョンケアカンパニーの今後の動向に注目したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年7月号の記事