通信ネットワーク最前線(第43回)

アクサ損害保険(株)

今回は、1999年7月よりリスク細分型自動車保険の通信販売を開始した、アクサ損害保険(株)のカスタマーセンターを紹介する。

ヨーロッパ各国で培った通信販売のノウハウを武器に日本へ参入

 アクサ損害保険(株)は、世界60カ国以上でビジネスを展開している、世界最大級の保険・金融グループであるアクサグループの一員。同社では、規制緩和とともに消費者が自分の目で企業や商品を選別する時代を迎えていることを踏まえ、高品質な商品やサービスを求める日本の消費者に応えるために、1998年10月に、日本で損害保険事業認可を取得。フランス、イギリス、スペイン、ドイツなど規制緩和の進んだ競争の厳しい市場で培った通信販売のノウハウを基に、1999年7月より「アクサダイレクト総合自動車保険」の発売を全国で開始した。
 「アクサダイレクト総合自動車保険」は、お客様のリスクに応じて保険料を算出するリスク細分型自動車保険。この特徴は、①規制緩和の進んだ欧州での豊富な経験と実績を基に独自に開発したリスク区分を採用、②運転免許証の色での割り引きや、自宅での故障にも対応するアシスタンスサービスの提供といった日本初の画期的なサービスを提供していることの2つ。
 ターゲットは特に絞らず、幅広い層へのベネフィットの提供を志向。今後は、インターネットなど新しいメディアを通じて、より広い層に向けて商品を提供していきたいとしている。

メディア・ミックスにより積極的な告知活動を展開

 同社では、「アクサダイレクト総合自動車保険」の発売開始と同時に、全国の新聞、雑誌、テレビ、ラジオでの広告、およびインターネットのホームページ(http://www.axa-direct.co.jp)といったあらゆるメディアを活用して商品の告知をスタート。“ゴールド免許で保険料が安くなる”“自宅での故障にも無料で駆けつける”といった商品の特徴や“通信販売”であることをアピールした広告を展開している。
 お客様の反響は当初の予想を上回り、告知開始から約半年が過ぎたいま、同社では緩やかな認知度の高まりを実感しているという。今後も代理店を通さずに直接保険会社から保険商品が買える“直販”であることと、手軽に購入できる“通信販売”であることを強くアピールしていきたいとしている。
 同社では、メディア・ミックスにより積極的な告知活動を展開しているわけだが、テレビCMを例に挙げた場合、15秒や30秒の限られた時間の中でサービスや商品を思うように伝えることが難しいといった課題があるのも現状。今後は出稿頻度の増大も含めて、各メディアの活用方法を検討していく意向である。
 また、アクサダイレクトのブランド名そのものの認知度を高め、理解を深めることを目的としたイメージ広告やプロモーションを展開。1999年7月には、「アクサダイレクト自動車保険」の発売を記念して、人と車との安全で楽しい関係作りのために役立つことをテーマに、「アクサダイレクト交通安全アイデア大賞」を開催。グッズ、装置、交通システム、理想の自動車保険など、交通安全に役立つ発明、アイデアを募集した。これには、およそ1,000件の応募があった。また、2000年1月11日より、同社のホームページにアクセスしてアンケートに答えると、抽選で3名にフランスのプジョー206XT5ドア4ATが当たる「ミレニアムウェルカムキャンペーン」を実施。この結果は、3月下旬に決定される予定となっている。

東京・有明にあるアクサ損害保険(株)本社

東京・有明にあるアクサ損害保険(株)本社

働く環境がオペレーションの質を左右する

 同社では1999年5月、「アクサダイレクト総合自動車保険」の発売開始に先駆けて、東京・有明にカスタマーセンターを開設。2カ月間のテスト期間を経て、同年7月より本格稼働を開始した。
 ヨーロッパ各国での経験から、オペレーション環境が快適であればあるほどお客様との良い関係が構築できると考えていた同社では、コールセンターの開設に当たり、カスタマーアドバイザーが働きやすい環境を作ることに留意したという。まず、什器には木材を使用したものを採用。体に自然なフィット感のある弓形の大きめなデスクを4つ向かい合わせに配置し、隣のカスタマーアドバイザーの声が邪魔にならないよう、ひとりひとりのスペースを広々と取った。また、大きな画面のオペレーション端末を導入するなど、あらゆるところに細心の注意が払われている。
 同社では、このように快適なオペレーション環境がカスタマーアドバイザーの満足度を向上させ、最終的には顧客満足度の向上につながり、同社とお客様との間に信頼関係が生まれることを期待している。日本の損害保険会社で行われている代理店を通した販売の場合、代理店が対面でお客様にわかりやすく商品の説明をしたり、お客様のニーズを汲み上げるほか、契約後も何かにつけてお付き合いをすることでリレーションシップを図っているが、電話でもこれと変わらないリレーションシップの構築を目指しているのである。

お客様サービスの一環としてフリーダイヤルを導入

 カスタマーセンターの具体的な業務内容は、全国のお客様からの問い合わせや保険料見積もり、契約申込、契約後の各種変更手続きの受け付け。受付時間帯は、月曜から金曜日の午前9時から午後10時までと、土日・祝日の午前9時から午後5時まで。告知媒体には、商品の広告やホームページのほか、パンフレット、契約者に送付する安心キットなどを活用している(資料1)。
 受け付けに当たるのは、自動車保険の知識と電話応対のスキルを兼ね備えたカスタマーアドバイザー。前述の通り、電話でも対面と同様のリレーションシップの構築を目指す同社では、お客様との唯一の接点となるカスタマーアドバイザーの教育に注力。研修期間は、導入研修だけでも1カ月間にもおよぶという。
 受付窓口には用件ごとに異なるフリーダイヤル番号を導入しており、着信番号でお客様の用件を判断して、適切なカスタマーアドバイザーにつないでいる。同社がフリーダイヤルを採用した理由は、お客様サービスの一環として。お客様に通話料を気にすることなく、保険内容を十分理解していただくことが狙いだ。また、NTTの0120フリーダイヤルが着信課金サービスの代名詞と言えるくらいに消費者に浸透しているためである。
 また、コールセンター・システムには、フランスから持ち込んだアクサグループ共通のシステムに日本市場向けの改良を加えて使用している。ここにもヨーロッパで培ったノウハウが生かされているのである。
 ちなみに事故受付については、カスタマーサービスセンターで専用のチームとフリーダイヤル番号を設けて、24時間・年中無休で受け付けている。

【資料1】契約者に送られるウェルカムパッケージ。上より「安心キット」中面、「お客様証券ホルダー」表紙、「安心キット」表紙。「安心キット」には、事故受付とアシスタンスサービス受付のフリーダイヤル番号が明記されたカードが入っている

【資料1】契約者に送られるウェルカムパッケージ。上より「安心キット」中面、
「お客様証券ホルダー」表紙、「安心キット」表紙。「安心キット」には、事故受付と
アシスタンスサービス受付のフリーダイヤル番号が明記されたカードが入っている

アクサダイレクト総合自動車保険のパンフレット。これ1冊で会社概要から商品についてまでがわかるようになっている。また、資料請求者からの問い合わせを受け付ける専用のフリーダイヤル番号も記載されている アクサダイレクト総合自動車保険のパンフレット。これ1冊で会社概要から商品についてまでがわかるようになっている。また、資料請求者からの問い合わせを受け付ける専用のフリーダイヤル番号も記載されている

【資料2】アクサダイレクト総合自動車保険のパンフレット。これ1冊で会社概要から商品についてまでがわかるようになっている。また、資料請求者からの問い合わせを受け付ける専用のフリーダイヤル番号も記載されている

お客様像は“自分で意思決定ができる人”

 最も多いコール内容は、保険料の見積もり受付となっており、問い合わせからそのまま見積もりへと進むケースもある。同社では、電話のほかにホームページとFAXでも見積もりを受け付けているが、最近では、ホームページでの見積もり、および問い合わせの件数が増えているという。
 ホームページ上での見積もり依頼は、指示に従って必要事項を入力するだけと非常に簡単。入力画面は5つにわかれており、まず第一画面で希望契約開始日、氏名、電話番号などを入力したあと、第二画面、第三画面へと進んでいく(資料3)。各画面で見積もりに必要な情報を確実に得るため、記入漏れがあった場合には次の画面に進めない仕組みになっている。見積もりは、画面上ですぐ見ることができる。
 同社に問い合わせをしてくるお客様の傾向を見ると、あらかじめホームページなどから情報を入手していたり、他社商品とも比較をした上で問い合わせてくることが多いため、特別な説明をしなくてもいいケースが大半を占めるという。同社では通信販売で自動車保険を契約するお客様を、“自分で調べて納得した上で決めることができる人”であると捉えている。

ホームページの見積もり画面。見積もりに必要な書類や注意事項がわかりやすく書かれている。また、個人情報の取り扱いについても第三者に開示・提供することがない旨が明記され
ている ホームページの見積もり画面。見積もりに必要な書類や注意事項がわかりやすく書かれている。また、個人情報の取り扱いについても第三者に開示・提供することがない旨が明記されている

【資料3】ホームページの見積もり画面。見積もりに必要な書類や注意事項がわかりやすく書かれている。また、個人情報の取り扱いについても第三者に開示・提供することがない旨が明記されている

インターネットでのサービス提供を拡充

 同社では、カスタマーセンターで収集したお客様のニーズや意見を、オペレーション・スキルの向上やサービスの改善に反映させていく考え。特に、インターネット上でのサービスの拡充に力を入れ、お客様の利便性の向上に努める意向である。具体的には、クレジットカードでの決済を可能にし、ホームページでも契約できるようにするといったことが挙げられるが、これを実現するためには、まずセキュリティの確保が急務と言えるだろう。
 また、お客様にとって本当に必要なものを追求し、競争力のある商品を提供していきたいとしている。
 アクサグループの哲学である“お客様主導”の考えと、運用資産70兆円を超える財政基盤を背景に、お客様にとってのわかりやすさや透明性を大切にする“クリアで頼れる”保険会社を目指す同社の取り組みに注目したい。


月刊『アイ・エム・プレス』2000年4月号の記事