通信ネットワーク最前線(第31回)

富士ゼロックス(株)

国内稼働台数の約1/3を東京都全域で占めるという富士ゼロックス(株)。その保守などの受付業務を担う東京テレフォンセンターについて話を聞いた。

FWSSの導入により作業効率と顧客満足度を向上

 1962年、富士写真フイルム(株)と英国ランク・ゼロックス社との同額出資により設立、カラー複写機や複合機、ファクシミリをはじめとするオフィス機器を取り扱う富士ゼロックス(株)。同社では、日本全国を北日本、関東、東京、中部、大阪、西日本の6つに分割し、それぞれにカストマー・サービスセンターを設置、お客様への保守、およびテクニカル・サポートを行っている。全国のカストマー・サービスセンターの中でも、稼働台数、プリント枚数、カストマー・エンジニア数は東京に集中しており、約1/3を占めているという。お客様からの修理依頼や問い合わせの受け付けは、それぞれのカストマー・サービスセンターが運営・管理するテレフォンセンターが一手に担っている。
 テレフォンセンターの業務内容は、複写機・デジタル複合機・ファクシミリなどの修理依頼、および操作方法の問い合わせ受付が中心だが、このほか、緊急連絡や派遣などカストマー・エンジニアの活動サポート、部品配送のコントロール、営業・サービス・開発部門への情報提供、お客様への電話によるケア活動なども担っている。業務の大半を占める修理依頼、および操作方法の問い合わせは、電話、FAX、後述するEP(エレクトロニック・パートナーシップ)システムで受け付けている。
 同社では、お客様に常に安定した品質を提供するために、1987年より、お客様が導入している商品の機種や保守契約の内容などのお客様に関する情報と、お客様への訪問スケジュールなどのカストマー・エンジニアの行動情報をコンピュータによって一括管理するオンラインシステム、FWSS(フィールド・ワーク・サポート・システム)を導入。さらに、1997年には、カストマー・エンジニアひとりひとりにパソコン端末と携帯電話を持たせて、社外からダイレクトにお客様情報蓄積サーバにアクセスして、過去の履歴などのお客様情報を確認できるようにした。また、パソコン端末には、主要機器のマニュアルをインストール。それ以外の機種に関してはマニュアルをデータベース化し、サーバに構築することにより、カストマー・エンジニアが必要なときに技術サポートを受けられる環境を整えた。これにより、修理受付からカストマー・エンジニアの訪問、事後処理までの作業がスムーズに行えるようになり、より迅速で適切な対応が実現した。つまり同社では、FWSSとモバイルの導入により、カストマー・エンジニアの作業効率を向上させただけでなく、顧客満足度を向上させることにも成功したのだ。
 FWSSの導入以前は、1件1件のお客様情報をカルテのようなものを用いて紙ベースで管理しており、電話を受け付けた後、オペレーターが1枚1枚手でめくって検索していた。そのため、修理依頼を受け付けてからカストマー・エンジニアを派遣するまでに長い時間を要しており、この時間を短縮することが同社の課題のひとつとなっていたのである。

4万6,000件/月のコールに対応

 前述の通り、稼働台数、プリント枚数、カストマー・エンジニア数において全国の約1/3を占める東京カストマー・サービスセンターのお客様からの受付業務を担うのは、東京・中野区にある東京テレフォンセンター。お客様からの電話には、フリーダイヤルを導入。回線数は37回線。NTTのFDPS(フリーダイヤル・パソコン・システム)を導入しており(図表1)、ACDによりリアルタイムで回線数の使用状況を見ながらコール数が多くなる曜日や時間帯を予測して、回線数を調節。お客様をお待たせすることなく、常に電話がつながりやすい状態を保つよう努めている。その結果、テレフォンセンターにおける話中率は、約1~1.7%と低く、平均1.3%を保っている。
 受付時間帯は、月曜から金曜日が午前8時から午後8時まで、土曜日が午前9時から午後5時30分まで。日曜・祝日は休業となっている。応対に当たるのは、36名のオペレーターと10名のスペシャリスト。計46名で、月に約4万6,000件の修理依頼や問い合わせに対応している。
 テレフォンセンターに寄せられたコールは、ACDを通り、一時受付のオペレーターに均等に分配される。ここでは、比較的簡単な複合機や複写機に関する問い合わせ、および修理依頼を受け付けており、故障に関しては、ここで約10%解決することができるという。複合機や複写機より高度な知識が必要な、ネットワークやプリンターに関する問い合わせについては、二次受付でスペシャリストが対応に当たる。二次受付に入る故障の約70%は電話で解決することができるという。
 一次受付、二次受付ともにカストマー・エンジニアの派遣が必要な場合は、FWSSのホストコンピュータにどこのお客様から、どんな内容で派遣依頼が入ったかを入力すると、自動的にカストマー・エンジニアの携帯電話に連絡が入る仕組みになっている。連絡を受けたカストマー・エンジニアは、携帯しているパソコン端末でFWSSのお客様情報蓄積サーバにアクセスして、機種や過去の履歴を確認してからお客様を訪問する(図表2)。訪問先でカストマー・エンジニアが技術サポートを必要とする場合は、パソコン端末を利用してFWSSにアクセスし必要な情報を入手すればいい。派遣依頼受付からカストマー・エンジニア派遣までの約96%はこの方法により完了する。ただし、病院や警察など携帯電話が使用できない場所においてお客様情報の確認や技術サポートを必要とする時は、公衆電話などからテレフォンセンターのサポートグループに電話をかけ、必要な情報を入手している。
 同社では、FAXによる訪問要請の受け付けにもフリーダイヤルを導入している。お客様が送信したFAXご用命シートは同社の自動受付システムで受信し、画像処理される。同時に、お客様へは受信した旨を知らせるFAX受付完了シートを自動的に送信する。また、必要に応じて、オペレーターが受付確認の連絡を入れる場合もある。画像処理された情報はFWSSのホストコンピュータに転送され、電話での受け付けと同様にカストマー・エンジニアの携帯電話に自動発信される。カストマー・エンジニアは、FWSSのホストコンピュータにアクセスして画像情報を確認し、お客様を訪問する仕組みになっている。FAXによる受け付けの特徴は、お客様が記入したFAXご用命シートと同じものをカストマー・エンジニアが見られること。これにより、お客様の要請内容を確実にカストマー・エンジニアに伝えることができるようになった。当然、お客様を電話口でお待たせすることもなくなり、顧客サービスを充実させることができた。

【図表1】フリーダイヤル・パソコン・システム(FDPS)/オートマチック・コール・ディストリビューター(ACD)

【図表2】受付からエンジニアの派遣まで

FWSSを活用してお客様のニーズに対応

 同社では、テレフォンセンターの一次・二次受付で対応した内容、およびカストマー・エンジニアが訪問した作業内容などを作業終了後即座にFWSSのお客様情報データベースに登録。常に最新のお客様情報を保っている。同社では、この情報をもとに、お客様が使用するマシン1台1台の状況を把握し、定期的にお客様への提案を行うなど、日々の営業活動に役立てているほか、製品の改善や新製品の開発へ反映させている。
 また、電話での受付内容やカストマー・エンジニアの訪問などを通じて得られたお客様の要望やクレームも、FWSSに登録。お客様の要望などを数字だけでなく言語情報として残しているほか、大きな声で言われたなど、感応度を入れることでお客様の感覚を的確に把握し、個々のお客様の要望にきめ細かく対応。顧客満足度の向上に努めている。顧客満足度は、同社が実施するお客様満足度調査で知ることができる。この調査は、年2回、郵送により行われる。アンケートには、企業イメージやサービスについてなど約40項目が盛り込まれている。同社では、この調査結果から、お客様からご指摘いただいた重要な情報を抜き出しFWSSに反映している。

東京テレフォンセンターのオペレーション風景

東京テレフォンセンターのオペレーション風景


EPによりお客様の管理業務を軽減

 同社では、1995年5月より、お客様の複写機やファクシミリと同社とを通信回線で結び、マシンの保守・点検、メーター・カウントの確認など、お客様のマシンの管理をリモート操作で行うサービス、EP(エレクトロニック・パートナーシップ)システムを展開している。複写機には、専用の通信モデムEP-SVを取り付け、複写機と同社のEP運用センターをフリーダイヤル回線で直結してサポートを行う。EPシステムでは、①請求書の発行、②コピー用紙やトナーなどの消耗品の供給、③短縮ダイヤルの設定、④故障診断・故障受付を、すべて自動的に行うことができる(図表3)。これにより、複写機やファクシミリに関するお客様の管理業務の軽減が実現した。
 ちなみに、EPシステムによるサポート情報も、FWSSに登録される仕組みになっている。

【図表3】EPシステム(Electronic Partnership)

現状の課題と今後の取り組み

 近年、オフィスのネットワーク化が普及することにより、同社のサービス内容も単に複写機やファクシミリにとどまらず、広範囲な内容になってきている。そのため、テレフォンセンターに寄せられる電話の内容も多岐にわたり、また高度化しているのが現状。これに対応するべく、オペレーターの知識を向上させることが目下の課題となっている。同社では、二次受付のオペレーターに、業界標準となっているマイクロソフトのMCP(Microsoft Certified Professional Program)を取得することを目的とした活動を行っている。MCPとは、マイクロソフトが世界共通、かつ同一規準で提供しているプログラムで、マイクロソフト製品に関する高度な技術試験への合格者に贈られる称号である。
 FWSSやEPシステムなどの通信技術と独自の技術診断知識を活用したサービスを提供することにより、サポート体制を強化し、顧客満足度の向上に努める富士ゼロックス(株)。同社の今後に期待したい。


月刊『アイ・エム・プレス』1999年4月号の記事