通信ネットワーク最前線(第26回) 

ニフティ(株) 

1997年にサービス開始10周年を迎えた会員制総合オンラインサービス「NIFTY SERVE」。今回は、そのカスタマーサポートについて話を聞いた。

約265万人の会員数を誇る「NIFTY SERVE」

 ニフティ(株)の設立は1986年。同社では、その翌年から会員制の総合オンラインサービス「NIFTY SERVE」の運営を開始した。1995年頃から、パソコンが一般家庭へ急激に普及しはじめたことにともなって、同サービスの会員数も急増。1995年に会員数100万人を達成してからわずか3年間でその数は約265万人にまで膨れ上がり、現在では、国内最大の会員数と売上実績を誇っている。
 この265万人の会員をサポートしているのが、問い合わせ内容別に設けられている『サポートダイヤル』である。
 「NIFTY SERVE」を開始した直後はひとつであった『サポートダイヤル』も、会員数の増加やサービス内容の拡充にともなって、それぞれのサービス内容に特化した複数窓口の設置へと変革を遂げてきた。現在では、入会に関するお問い合わせや入会資料請求を受け付ける「入会サポート」、同社オリジナルの通信専用ソフト、ニフティマネジャーでの接続や操作方法についての問い合わせを受け付ける「ニフティマネジャーサポートセンター」、パスワードの再発行、および登録情報(住所・電話番号・勤務先など)の変更、退会などの手続きに対応する「パスワードサポート」、サービス全般、およびニフティのインターネットサービスについての問い合わせを受け付ける「カスタマーサポート(会員専用)」のほか、「ビジネスアカウント(法人)について」「CUG/PSについて」「CompuServeサポートフリーダイヤル」の合計7つの窓口が設けられている。
 同社では、「NIFTY SERVE」の開始と同時に『サポートダイヤル』を設置し、その受付窓口にフリーダイヤルを導入。現在では、「入会サポート」「ニフティマネジャーサポートセンター」「パスワードサポート」「カスタマーサポート(会員専用)」「CompuServeサポートフリーダイヤル」でフリーダイヤルを導入している。会員が気軽に問い合わせのできる体制を整えることによって、サービスの利用促進を図ることがその目的である。
 『サポートダイヤル』の告知媒体としては、同社のホームページ(http://www.nifty.ne.jp/)のほか、各種お試しキットなどを活用している。ホームページ中には、お問い合わせ一覧が掲載されており、各種お試しキットには、それぞれに該当する問い合わせ窓口の電話番号が明記されている。また、パソコン雑誌などに出稿する広告には「入会サポート」のフリーダイヤル番号を記載している(図表1)。

【図表1】『サポートダイヤル』告知媒体

問い合わせ内容ごとに専門のオペレータを配置

 『サポートダイヤル』の要となるコールセンターは、東京・大森にある本社内に設置されている。コールセンターは、テクニカル系コールセンターが2つ、一般的なサポート部門のコールセンターがひとつの合計3つ。前者では、ニフティマネジャーやインターネットのテクニカル・サポート、後者では、入会案内や会員登録情報・パスワードの問い合わせ、「NIFTY SERVE」の総合案内を行っている。
 受付時間帯は、平日の午前9時から午後9時までと、土曜日の午前9時から正午までと午後1時から5時45分まで。日曜・祝日は休業となっている。問い合わせには、パソコンの知識と「NIFTY SERVE」の知識を兼ね備えたオペレータが対応。問い合わせ窓口がその内容ごとに分かれているのと同様に、オペレータも問い合わせ内容ごとに担当が決まっている。
 会員からの問い合わせ内容はダイヤルされた電話番号をもとに判別され、交換機を経由して担当のオペレータへ転送される仕組みになっている(図表2)。オペレータはID番号で会員の確認を行った後、問い合わせ内容に応じてネットスケープ、もしくはインターネットエクスプローラーで必要なサポートツールを検索し、情報を見ながら回答していく。ちなみに、オペレータの担当業務によって検索できるサポートツールは異なり、オペレータは担当する業務に必要な情報だけを取り出せるようになっている。

【図表2】コールのフロー

サポート体制の強化を図る

 同社では1998年10月1日から、これまで午後7時までだった平日の受付時間を2時間延長した。
 同サービスの会員プロファイルを見ると、男女比では、男性が78.2%、女性が21.8%。年齢構成は30~34歳が22.7%と最も多く、続いて25~29歳が22.0%、35~39歳が16.8%、40~44歳が10.9%、45~49歳が8.5%、20~24歳が7.9%、50~59歳が7.7%、60歳以上が2.7%、19歳以下が0.8%となっており、20~30代で全体の69.4%を占めている。
 また、1997年に実施した会員アンケートによると、アクセス場所は、「自宅から」と答えた会員が圧倒的に多く64.4%、次に「会社・学校から」が24.9%、「移動先」が7.6%、「(前記)すべてから」が3.1%。利用目的は、趣味が46.4%、趣味・仕事の両方が39.4%、仕事が14.2%であった。この結果から、仕事を持つ20~30代の男性が帰宅後に趣味、あるいは仕事のために自宅からアクセスするケースが多いことがうかがえる。つまり、利用中にトラブルが生じるなどして『サポートダイヤル』が必要となるのも夜間が多いということだ。
 受付時間が午後7時まででは仕事を持つ会員が帰宅後、家から電話することは難しい。会員がサポートを必要としている時にサポートできないのであれば、『サポートダイヤル』の真価は発揮できない。これが、同社が受付時間延長に踏み切った理由である。
 受付時間を延長してからは、会員が画面を見ながら相談できるケースが多くなり、ニフティマネジャーやインターネットについて、スムーズなテクニカル・サポートを行えるようになったという。

CTIシステムの導入を検討

 同社が目指すコールセンターは、“すぐつながるコールセンター”だ。同社では今後、会員からの電話をよりつながりやすくするために、回線数の増加、およびオペレータ数の増員を行っていくほか、保留時間を最小限に抑えて、さまざまな問い合わせへのより迅速な対応を実現していく意向。その第一歩としてこの11月より、現在「カスタマーサポート」が1次窓口となっているインターネットサービスに関する問い合わせ受付を「インターネットテクニカルサポート」として独立させる。ダイレクトにテクニカル・サポートのオペレータにつなぐことにより保留時間がなくなり、会員をお待たせせずに回答することが可能となる。また、オペレータがサポートツールを検索するための保留時間を最小限に抑えるために、サポートツールの改善にも取り組んでいる。
 そして今、最も大きな検討課題となっているのがCTIシステムの導入だという。同社では、CTIシステムの可能性を高く評価しているが、導入に際しては非常に慎重な姿勢を見せている。
 現在、問い合わせ履歴は、オペレータが必要な時に同社が独自に開発した検索ツールを利用して引き出さなければ見ることができない仕組みになっている。しかしこの仕組みでは、1度の問い合わせで問題が解決できずに再度問い合わせがあった場合、前回の問い合わせ内容を確認するために多くの時間がかかってしてしまう。たとえば、オペレータが問い合わせを受けながらその場で内容を記録でき、また、ワンクリックで問い合わせ履歴画面にアクセスできるように検索方法を改善すれば、前述のようなケースだけでなく、はじめに応対したオペレータが回答できずに別のオペレータに電話を転送する場合の引き継ぎもスムーズになると同社では考えている。ところが、どんなに素晴らしいシステムであっても操作性に優れていなければ、オペレータの負担が大きくなり、活用の効果は薄れてしまう。併せて、クイックレスポンスで会員の満足をどれだけ向上できるかも検討すべき点であるとしている。
 また、CTIシステムの導入に付随してナンバー・ディスプレイの導入も検討されているが、同社では、着信とほぼ同時に電話の相手がわかり、会員がIDナンバーを告げる前に「誰々様ですね」と呼びかけられるということだけでは顧客サービスの向上にはつながらないと考え、その活用方法を探っている。
 まだ、採用するシステムやその導入時期については確定していないが、比較的近い将来にはCTIを導入する方向で検討が進められているという。
 “すぐつながるコールセンター”の実現のために、時流に振り回されることなく、一歩一歩慎重に取り組む同社の今後の動向に注目していきたい。


月刊『アイ・エム・プレス』1998年11月号の記事