通信ネットワーク最前線(第18回)

(株)ジェーシービー

日本で唯一、国際ブランドカードを発行している(株)ジェーシービー。同社におけるフリーダイヤルの活用方法について、話を聞いた。

会員区分に応じた差別化を図るためにフリーダイヤルを導入

 (株)ジェーシービーは1997年9月末現在で、展開国数167カ国、海外加盟店160万店を含む総加盟店数470万店、会員数3,750万人を擁する、日本で唯一の国際ブランドカードを発行しているカード会社だ。売上高は、同じく1997年9月現在で4 兆2,500億円にも上っている。
 同社がフリーダイヤルを導入したのは1990年6月。同社では、1982年にゴールドカードの発行を開始したことにともない、ゴールドカード会員を対象にインフォメーション業務やリザベーション業務を行う「ゴールドデスク」を設置した。それ以前は、一般カード会員、ゴールド会員の両者ともに一般加入回線で各種問い合わせを受け付けてきたが、一般カード会員とゴールド会員との差別化を図るために、「ゴールドデスク」にフリーダイヤルを採用したのである。これを皮切りに、ゴールドカード会員を対象に年中無休24 時間体制で医療相談に応じる「ドクターダイレクト24(国内)」などの各種サービス窓口へもフリーダイヤルを導入して、ゴールドカードのメリットをアピールしてきた。
 同社ではその後、商品・サービスの予約・販売窓口を中心として、一般カード会員向けにもフリーダイヤルの活用を進めてきた。たとえば、一般カード会員を組織化した「クラブJCB」の会員を対象にコンサートやイベントなどのチケットを販売する「クラブJCBチケットダイヤル」、ギフトカードを販売する「ギフトカードセンター」などである。ほかに、電子商取引を行う「ECOM(イーコム)デスク」、保険会社と提携して取り扱っている保険に関する問い合わせ、申し込みを受け付ける「保険課」などでもフリーダイヤルが活用されており、同社で使用しているフリーダイヤルの番号は数十に上る。
 これらの窓口の告知には、自社媒体をメインに活用している。まず、入会時にカードといっしょに送付する「ご利用ガイド」、ゴールドカードの裏面、利用明細に同封する印刷物、そして会員誌と、さまざまな機会をとらえ、段階的かつ継続的に告知を行っている。会員誌には、ゴールドカード会員に無料で配布する『THE GOLD(ザ ゴールド)』(年12回発行、発行部数85万部/号)と、一般カード会員に有料で配布している『CARDAGE(カードエイジ)』(年間10 回発行、発行部数70 万部/号)の2種類がある。
 フリーダイヤルでの受け付けの場合、料金を負担するのは同社側。少しでも負担を軽減するために、サービスや窓口をわかりやすくPR し、単純な誤解や迷いによる問い合わせが発生しないよう、表現方法などに細部にわたって工夫を凝らしている。

同社が発行している印刷物の数々。左は会員向け機関誌。右は利用明細に同封される「JCB NEWS」(A4 版・12 ページ)。センターページをゴールドカード会員向けと一 カード会員向けに差し替えている

同社が発行している印刷物の数々。左は会員向け機関誌。右は利用明細に同封される「JCB NEWS」(A4 版・12 ページ)。センターページをゴールドカード会員向けと一般カード会員向けに差し替えている

東京と大阪に電話部門を集中

 会員は全国各地に散在しているため、いかに効率良く電話を受け、また、常に安定したオペレーションを行うかが業務上の重要なポイント。同社では、保険を取り扱う「保険課」や、販売促進部が企画・開催する「クラブJCB」のイベントのお問い合わせ、申し込みを受け付ける「JCBホットライン」など、営業系のセクションが管轄する電話窓口を除き、さまざまなインフォメーション業務をはじめとするインバウンドコールのほとんどを、東京・三鷹市のカードセンターと大阪支社の2カ所にあるインフォメーションセンターで受け付けている。日本全国を東と西の2つに大きく分け、東日本エリアからのコールについては東京で対応に当たり、西日本エリアからのコールについては大阪で対応する仕組みだ。
 東京・三鷹市にあるカードセンターは、1994年に設立された。それまでお茶の水の本社やその周辺に点在していた営業系以外の各種電話部門、システム開発部門、カード発行部門、調査部門を1カ所に集めることで、情報を共有化し、横のつながりを強めることがカードセンター設置の目的であった。
 同センター内には、インバウンド業務が主体の『インフォメーションセンター』『ゴールドデスク』『オーソリセンター』と、申し込みの意志確認や督促業務などのアウトバウンド業務を行う『カード発行部門』『調査部門』があり、東日本エリアを対象とした多岐にわたる電話受発信業務を行っている。
 会員とのコミュニケーションの機会が最も多い『インフォメーションセンター』は、利用金額の照会をはじめさまざまなインフォメーション業務を担う「インフォメーションセンター」、コンサートやイベントなどのチケット予約受付を行う「チケットセンター」、JCB ギフトカードの受注業務に当たる「ギフトカードセンター」、会員誌や利用明細の同封物で展開している通信販売の受注業務を行う「テレショップセンター」、加盟店からカード取り扱い全 に関する問い合わせを受け付ける「加盟店デスク」、電子商取引を行う「ECOMデスク」、ダイレクトメールのアフターフォローなどを行っている「テレマーケティングセンター」の7グループからなる。『ゴールドデスク』には、各種照会をはじめさまざまな問い合わせに応える「インフォメーション」と、宿泊施設、航空券、ゴルフ場の予約などを受け付ける「リザベーション」の2グループがある。このようにグループはサービス内容に応じて細分化されており、それぞれに独自の電話番号が設定されている。
 インバウンド業務の受け付けに当たるのは、業務に精 した専任のオペレーター。受付時間帯は、「インフォメーションセンター」が、月曜から土曜日の午前9時から午後5時まで。「チケットセンター」が、年末年始を除く午前9時から午後5時まで。「ギフトカードセンター」が、月曜から金曜日の午前9時から午後5時まで。「テレショップセンター」が、月曜から土曜日の午前9時から午後5時まで。「加盟店デスク」が、月曜から金曜日の午前10時から午後6時まで。「オーソリセンター」が、24時間・年中無休というように、受付時間帯もまた、サービス内容によって個別に設定されている。

インフォメーションセンター(東京)のオペレーション風景。クリーンなセンター、オペレーターひとりひとりに確保された充分なスペースは、最高のオペレーション環境と言えるだろう

インフォメーションセンター(東京)のオペレーション風景。 クリーンなセンター、オペレーターひとりひとりに確保された充分なスペースは、最高のオペレーション環境と言えるだろう

フリーダイヤルのさまざまな活用方法

 カード会員は、一般カード会員、ゴールドカード会員、法人会員の3 つに大きく分けられている。冒頭でも触れたが、これらを合計した総会員数は3,750 万人に達している。この数字を見ただけでも、日々コールセンターに寄せられる電話の件数が膨大な数に上ることは容易に想像がつく。
 フリーダイヤルと一般加入回線を合わせた受け付けコール数は、東日本だけで月間50 万?60 万件。コール数は会員数に比例するもの。着々と会員数を伸ばしている同社のコール数は、年々増加の一途をたどっている。
 同社では各部門に寄せられるコールを、発信地域、放棄時間(オペレーターや自動音声につながる前に切った場合の、着信から切られるまでの時間)、受付件数、1 コール当たりの通話時間、保留時間などさまざまな角度から分析し、その結果を効率的なセンター運営のための指針のひとつとしている。
 同社のシステムは、フリーダイヤルか一般加入回線かといった使用回線の種類にかかわらず、利用状況を把握できるようになっているが、オペレーターや自動音声に接続される前の情報(発信地域や放棄時間など)の把握は一般加入回線では難しい。
 フリーダイヤルには、利用状況を把握するための「明細記録サービス」や「カスタマーコントロール」というオプショナルサービスがある。前者は、導入者側の希望に応じて、通話月日、利用されたフリーダイヤルの付加サービスの種類、発信地域、通話時間、ダイヤル通話料などを1カ月分まとめたダイヤル通話料金明細内訳書を送付するサービス。後者は、導入者側でパソコン端末を利用してNTT のフリーダイヤル交換機にアクセスし、コール数や通話時間などの利用状況を把握できるサービスである。これらを利用することにより、電話がかけられてからオペレーションが終了するまでのデータ収集から加工までを社内でスムーズに、かつ短時間で行うことができる。このような点から、同社ではフリーダイヤルを効果的なオペレーション・マネジメントをサポートするツールとしても位置付けている。
 また、入会促進キャンペーンや提携先とのタイアップキャンペーンなどのキャンペーン期間中の問い合わせ、および申し込みの受け付けにも、特設のフリーダイヤルが利用されている。
 キャンペーン、および専用フリーダイヤル番号の告知には、新聞や雑誌、電車内の窓に貼るステッカーなどの交通広告を活用している。ここではフリーダイヤルは、申し込みを促し、キャンペーンを活性化するための1手段として位置付けられている。

コールセンターの効率的な運営を目指して

 同社ではこれまで、新サービスの開始とともに専用受付窓口を設け、会員がそのサービスの担当グループにダイレクトにアクセスできる体制をとってきた。しかしその結果、窓口の数は増え続け、会員に電話番号の周知を徹底するのが難しくなってきた。また、サービスの種類や会員数の増加に合わせ、段階的に受付体制を拡大してきたため、窓口ごとに使用しているコンピュータ・システムが異なっているのが現状である。同社では、効率的なコールセンターを実現するためには、システムの統一が不可欠であると考えており、現在、その整備に取り組んでいる最中だ。新システムにIVR(Interactive Voice Response Unit)を組み込み、たとえば現在、一般カード会員を対象にインフォメーション業務を行っている「インフォメーションセンター」と自動音声で対応している「サービスインフォメーションボックス」や「資料請求24 時間受付サービス」、「情報FAX サービス」などの窓口をひとつにして、自動音声で資料請求の申し込みは1番、FAXで情報を取り出す場合は2番、オペレーターと話したい時は3番を押すと各グループにつながるというような仕組みを作り上げてコールを振り分けることを考えている。ライブオペレーションと機械対応の役割分担など、詳細については検討中である。
 入口を整理することによって、使い勝手を向上、「この番号さえ覚えていればどんな時でも大丈夫」という安心感を提供することで、会員の利用頻度が高まることも期待できる。また、同社にとっては、効率的・効果的に各種サービスの告知が行えるというメリットが生まれる。同社では、今年度中には新システムを完成させる意向だ。
 効率的なコールセンター運営に向けて、一歩一歩確実に前進してきた同社。その今後の展開に大いに注目したい。
 (堀内 好美)


月刊『アイ・エム・プレス』1998年3月号の記事