IMPザッポス情報交換会リポート

2010年7月11日

『ザッポスの奇跡』の著者である石塚しのぶさん、
および石塚さん率いる米国・ダイナサーチ社の方々を囲んで
開催された「IMPザッポス情報交換会」は、
交通機関のトラブルにより若干、開始が遅れたものの、
リアル、およびオンラインでの参加者の方のご協力を得て、
約4時間に渡り活発な議論を構成、無事、終了した。
イベントの主旨などは昨日のブログをご参照いただくとして、
ここにはそのリポートを掲載する。
前半では、石塚さんの自己紹介や『ザッポスの奇跡』執筆の感想を経て、
リアルの参加者からの質問に答えていただきながら、
日本の読者と石塚さんをはじめとするダイナサーチの方々との
まさに“怒涛のような”ディスカッションを展開。
後半では、オンラインでの参加者から寄せられた質問にも回答。
それを受けて、再びリアルの参加者の質問や発言が活性化するなど、
とにかく、ものすごく盛り上がりようだった。
リアルでの参加者は、女性6人、男性5人の総勢11人。
ダイナサーチからご参加の3人以外では、
カタログ&ネット通販会社のマーケティング担当者が3人、
ダイレクトセリング(訪販)のコールセンター担当者が1人。
コールセンター、物流、インターネット・サービス、メディア(私)など、
サードパーティ(支援)側の企業が4人という構成だった。
ダイナサーチからの3人を除く8人のうちで、
男女比が半々、広告主側と支援側の企業が半々というのは、
さほど意識したわけではないものの、何ともバランスがよい。
職種別では、経営者が3人、マネージャーが5人。
年代的には、20代1名、30代3名、40代1名、50代3名と
さまざまな年代の参加者があった。
さて、実際のディスカッションの模様は、
まったくもってブラインドタッチではない私が、
ハッシュタグ「#IMP」を使ってTwitterにアップしているのだが、
なぜかその一部は、(私のPCで操作する限りでは)
ハッシュタグの検索では出てこないので、
「#IMP」と私のアカウント「africangray」のTweetの
双方を参照いただければ、おおよその全体像が掴んでいただけると思う。
とは言え、一応、以下にポイントをピックアップしておく。
冒頭の石塚さんのコメント
日米間をつなぐビジネスを25年間に渡り継続する中で、
ザッポスという優れた会社に出会った。
ザッポスが優れているのは、自分たちの利益よりも、
お客様へのサービスを優先させているところ。
そしてそのことが結果的に高収益につながっている。
これからのネット時代には、お客様と社員をつなぐエコシステムを作ること
が大切であり、これを実現しているのがザッポスである。
噛み砕いて言えば、お客様や社員の声に耳を傾け、
良いことはすぐに実行するという積み重ねが高収益に帰結している。
これを受けてのリアル参加者のディスカッション
・「ザッポスのCEOであるトニーがいなくなったら、
ザッポスはどうなると思うか?」という参加者からの質問を機に、
石塚さんが「パイプライン」を初めとする、
ザッポスのマネジメントについて改めて紹介。
ザッポスの売り場(サイト)が優れていることについての
参加者からのコメントを受けて、商品(靴)のサイズ展開の豊富さや、
1商品についてさまざまなアングルのサブカットを使用していることに言及。
後者は、倉庫の中にスタジオを設けることで、実現しているとのこと。
ちなみに、参加者の一人である日本の通販物流系支援企業では、
同様のサービスをクライアントに提供しているそうだ。
(参加者の1人からのサービスとはそもそもクリスチャン的な世界、
という発言をTweetしたところ、オンラインでの参加者から共感の声)
B to Bのケースに話題が移行。
以前、月刊『アイ・エム・プレス』に連載していただいた、
米国のオフィス用品市場における“アカウント・マネージャー”
の仕組みについて、石塚さんが改めてご紹介くださった。
オンラインでの参加者から寄せられた質問への石塚さんの回答(順不同):
Q.ザッポスのコンタクトセンターのオペレータがお客様に花を送った、
という逸話があったが、その決裁権は誰にあるのか?

A.全オペレータが本書にも記されているコアバリューを起点に行動しており、
お客様に花を送るか否かの判断はオペレータに委ねられている。
(ただし、コストは会社が負担している)
★上記4行、2010年7月13日修正
Q.採用やトレーニングは?(元の質問が俄かには見つからない)
A.採用においては価値観重視。ルールは極力、作らない。
これを受けて初期教育では、問題がなぜ発生したのかと、
その問題をどう解決するかについて、4週間掛けて徹底的にトレーニングする。
(これを受けて、リアルおよびオンライン参加者より、
ディズニーランドやリッツカールトンの例が挙がる)
Q.ザッポスは日本企業が忘れかけている伝統的な日本の経営スタイル
(お客様第一主義、共存共栄、家族主義)を現代の手法で実践している?

A.まさにそうだと思うが、逆に日本の企業がそれを忘れかけている。
アメリカはそもそもいろいろな人種が集まっているので、
米国企業は企業文化を重要視している。
それに対して日本企業は、国の文化=企業の文化だけに、
企業文化をきちんと意識せずにマネジメントしている。
Q.サッポス的経営に移行するために経営者がなすべきことは?
A.みんなと楽しくやろうと経営者が割り切って、格好をつけずに裸になること。
自分自身も、ダイナサーチも、ザッポスに触れたことで大きく変わった。
(ここでリアルの参加者間では会社の利益の分配についてディスカッション。
石塚さん曰く、「会社はコミュニティになるしかない」)
(リアルでの参加者の1人が、「ザッポスのマネジメントは、
ドラッカーが書いていない世界なんだよね」と発言したことを受けて、
リアルでの参加者が「う~ん」と唸る)
Q.ザッポスのMD部門には売上目標があって大変では?
A.冒頭で紹介したエコシステムに則って、
従来に比べて100倍、お客さまの声を聞けば、需要予測の精度も高まる。
これと同様に、幸せな会社を作るためには、従来の100倍、
従業員の声を聞かなければならない。
一部、省略したことに加え、発言が錯綜している部分があるかもしれないが、
オーバービューとしては、ざっとこんなところであった。
※Twitter上での発言もこのブログも、石塚さんはもちろん、
参加者の方々にご確認いただくことなくリポートしているので、
文責はあくまでも私にあります。削除依頼、修正依頼など、
本ブログのコメント欄でご遠慮なくお申し付けください。
まとめると、リアル&オンラインで情報交換会に参加した、
『ザッポスの奇跡』の読者の関心事は、下記のようなところか。
(ちなみに、リアルでの参加者は全員が、『ザッポスの奇跡』のみならず、
月刊『アイ・エム・プレス』の読者、執筆者でもある)
■サッポスの顧客サービスの詳細と、それを支える仕組み
■ザッポス的経営スタイルと日本の伝統的な経営スタイルとの関連性
■ザッポス的経営スタイルに移行するためのヒント
■ザッポスの経営スタイルと企業収益との因果関係
なお、オンラインでの質問の受け付けは21時前に終了、
あとは通常の飲み会に移行し、美味しいお酒と肴を味わいながら、
22時過ぎまで楽しく懇談した。
お酒;[[pict:beer]]、[[pict:sake]]、泡盛、焼酎
肴[[pict:fish]]:鰯のなめろう(梅、味噌)、水ナスとトマトのサラダ、
変わり奴(冷奴にジャコと干しえび)、ジャコ胡瓜、鰯の竜田揚げ、
出汁巻き卵、じゃがいもとハラペーニョの炒め物、お新香、焼き枝豆・・etc.
一次会終了後、ダイナサーチの皆様+1名をお送りして、
残ったメンバー7人でニューオリンズ料理の店を訪れ、
ニューオリンズ名物のザリガニやガンボ、ナチョスを肴に、
これまたニューオリンズ名物のハリケーンパンチを飲んで、12時頃に解散した。
こうした企画は私にとって初体験だったのだが、
リアルでの参加者の“怒涛のような”ディスカッションを
(しかも全員が“早口”というのが共通点だった。
1人が早口で話すと、みんながつられてしまうのかもしれない)、
飲みながら、食べながら、Twitterでリポートするのは至難の業。
参加者の皆様には、つたないTweetで申し訳なかったが、
次回はもう少し運営方法を改善し、こうした企画が実現できればと思っている。
最後に、リアル、そしてオンラインでの参加者の皆様、
「IMPザッポス情報交換会」を盛り上げてくださり、ありがとうございました。
ダイナサーチさんからも、石塚さんのTweetに加えて、
スタッフの方から下記のダイレクト・メッセージが届いています。
昨日は大変お世話になりました。西村さん厳選の素晴らしい面々で、
日本の企業に属する「個」の皆さんが今考えておられることを垣間
見させていただいた会合でした。自分の日ごろの不勉強を認識し、
改めて気を引き締める良い機会ともなりました。このような機会を
いただいたこと本当に感謝しております。
喜んでいただけたみたいで良かった。[[pict:meromero2]]
ちなみに、今回の来日時に石塚さんに日本に持ってこられたキーワードは、
ソーシャルメディアやショッピングでおなじみの“ソーシャル”とか。
私自身は、今回の「IMPザッポス情報交換会」を、
石塚さんをはじめとするダイナサーチの皆様、
そしてリアル、およびオンラインでの参加者の皆様のおかげで、
このソーシャルというキーワードをまさに具現化した
イベントにできたことを心から嬉しく思っている。
また、弊社にとっても、ダイナサーチさんにとっても、
これは会社オフィシャルのイベントではないが、
ある意味、両者のコラボレーションがあってこそ実現している。
その軸にあるのは、過去10年間において、
何度かお仕事をご一緒してきた中で培われた相互の信頼感と、
お互いの持つ世界観への共感的なものではないかと思う。
今後、ご参加の皆様、そしてこのブログをご覧になった皆様が、
本イベントの結果を、それぞれのかたちで、
ご自身のビジネスに生かしていただければ幸いである。
一方で私は、石塚さんはじめダイナサーチの皆さんと、
昨日ご参加の皆様のご発言を参考にしながら、
月刊『アイ・エム・プレス』における石塚さんの
第三弾の連載企画を煮詰めていく計画だ。
詳細が決まったら、またこのブログでご紹介する。
では、いざ投票へ! 
そして、本業の企画書作りに手をつけねば・・・・。[[pict:ase2]]
※上記の★の部分に間違いがありましたので、4行を修正しました。
元のブログでは、花を送るか否かの判断のみならず、
コストもオペレータが負担すると記していましたが、
コストは会社負担とのことでした。
大変、申し訳ございませんでした。(2010年7月13日21時半)