在日ペルー人の生活支援を担う

2009年9月26日

昨日は、日本在住のペルー人などへのサポートを手がける、
キョウダイジャパンの代表である木本さんにインタビューを行った。
木本さんのことを知ったのは、そもそも、私が20余年にわたり関与している勉強会、
Direct Marketing Workshop(DMW)に木本さんが参加されたのがきっかけ。
この8月には木本さんの紹介により、五反田のペルー料理店
「Arco Iris Bembo`s」で会の暑気払いを行ったのだが、
終了後、訪れた木本さんのお店には、
南米の食品や書籍が豊富に品揃えされており、
東京にこんな所があったのかと強烈なインパクトを受けた。
あれから1ヵ月半。
月刊『アイ・エム・プレス』のトップインタビューというかたちで、
再び同社を訪れることになったわけだが、
木本さんが現在の事業を手がけるに至った経緯には、壮絶な物語があった。
その詳細は10月25日発行の月刊『アイ・エム・プレス』11月号に委ねるとして、
ここでは同社の現在のビジネスについて紹介しよう。
現在、同社では、約2万5,000人の日本在住のペルー人を会員化しており、
会員に対して、郷里送金の代行、ペルーを中心とした南米の商品の販売、
そして会員の子供たちへの現地の文部科学省公認の通信教育などを行っている。
日本在住のペルー人は約6万人を数えるとのことなので、
会員の家族を含めると、その75~80%をカバーしている格好だ。
郷里送金の代行は、1980年代の終わりに、ペルーから日本への
いわゆる出稼ぎ海外労働者の増加を受けて、
法外な手数料を取る仲介業者が台頭して社会問題化したことを受けて、
ペルーの日系人向けの金融機関3社が連携、
低手数料での郷里送金を実現しようとスタートしたもの。
現在、日本側ではみずほ銀行との提携によりこれを実現しており、
単に手数料が安いというだけではなく、
あらかじめ専用の送金用フォーマットを用意するなど、
日本語がわからなくてもスムーズな手続きができるよう、
きめ細かいサービス設計がなされている。
また南米の商品の販売は、在日ペルー人やブラジル人に
日本ではなかなか手に入らない郷里の商品を購入する
便宜を提供することを狙いにスタートしたもの。
東京・大和・名古屋・伊勢崎に計4店舗を構えているほか、
自社サイト楽天市場などでeコマースを行っている。
取扱商品は、食品、書籍、家庭雑貨など。
食品では、ペルーの名産ともいえるトウモロコシや豆・穀物などの乾物、
香辛料、瓶缶類、レトルト、菓子、飲料、チルドや冷凍食品など、
まさに興味津々の品々がいっぱいだ。
最後に通信教育は、前述の通り現地の文部科学省の公認。
会員の子供たちを対象にした義務教育に加え、
キャリアアップのための大学のカリキュラムも展開しており、
オリジナルの教材を使用すると同時に、添削に当たっては、
会員の手書きによる答案をスキャンしてネット送信し、
現地の教師が添削したものを再びスキャンしてネット送信するという、
まさに手作りの仕組みになっている。
現在、同社のアクティブ会員は約1万8,000名。
これらの会員とのコミュニケーション手段としては、
年に10回、同社の商品・サービス案内に加えて、
日本での生活支援情報を満載したフリーペーパーを送付しているほか、
郷里送金用の金銭の受取送付時の各種同封物による情報提供、
毎週土曜日の司法書士による無料相談会に加え、
電話による各種相談への対応も行っている。
電話相談では、東京・名古屋の事務所と在宅コミュ二ケータをIPで繋いだ、
いわばバーチャルコールセンターを実現。
着信の優先順位をあらかじめ設定することで、
効率的な対応を実現している。
インタビューの最後に、木本さんに今後の展望を訪ねたところ、
国境を越えたマーケットを創造するのが夢、という答えが返ってきた。
海外送金代行を手がける同社には、送金側と入金側の双方の顧客情報が入る。
そこでこれを起点に、日本在住のペルー人と郷里の家族、
そして世界中に散らばるその親戚を束ねることで、
国境を越えたビジネスを展開したいというわけだ。
しかし、これを実現するために超えねばならない障壁は、
物理的な意味での距離のみならず、
国ごとに異なる法規制や社会慣習など数限りがないだろう。
そして、国が人間の作るものである以上、
中でも最大の障壁は、人間の意識の中に潜んでいるに違いない。
物理的な距離はインターネットと物流手段で超えることができても、
人間の意識はそう簡単には変わらないのだ。
日本の現状を振り返ってみても、昨今の不況や少子高齢化の中で、
外国人労働者の問題はさまざまな側面からクローズアップされている。
ここに来て不況のあおりで職を失い、帰国する方も増えていると聞くが、
長い目で見れば増加傾向にある外国人労働者といかに共生するかは、
私たち日本人1人1人に突きつけられた課題にほかならない。
昨日はインタビュー終了後、木本さんのお話を頭の中で反芻しつつ、
そんなことを考えながら家路についた。