世界の医療団のクロスメディア型キャンペーン

2010年6月20日

自宅に「世界の医療団」からの写真のような手紙がポスティングされていた。
それは、まるで火事場に残された絵葉書のような印刷物で、
表面にはコンゴからのエアメールをイメージさせる切手や消印に加え、
焼け焦げたようなデザイン処理のおかげで部分的にしか読めないコピー、
そして裏面には病院らしき建物に向かってひた走る人々の写真が掲載されている。


表面の「この手紙を読む」の指示に従ってQRコードを読み込むと、
焼け焦げていて手紙からは読み取れなかったコピーと思しき文面が、
写真とともに紙芝居のように現れる。
そして紙芝居が終わると、世界の医療団のロゴと共にENTERの文字が表示され、
これをクリックすると、「コンゴ民主共和国の現状」ページにジャンプ。
紙芝居のメッセージのさらなる詳細を知らされることになる。
曰く、コンゴの人々は今なお、90年代末に起きた紛争の爪痕に苦しんでいる。
紛争の原因のひとつは、携帯電話などに使われているコルタン資源の奪い合い。
今、貴方が使っているケータイにも、コルタンが使われているかもしれないと、
ケータイを片手にこのサイトにアクセスした人々の注意を引き寄せる。
そして、発信人である世界の医療団の説明を経て、
メール、mixi、Twitter、facebookなどあらゆる手段で、
この真実をお伝えいただくことが、大きな貢献になると語りかける。
画面の下には、例示された4つの手段のアイコンが整然と並んでいる。
例えば、メールのボタンをクリックすると、メーラーが立ち上がり、
そこにはあらかじめ本件のメッセージとURLが表示されているといった具合だ。
世界の医療団のTwitterのアカウント(MDM_JP)を見ると、
開設して間もないためか、現時点でのツイート数は22、
フォロー数は39、被フォロー数は62とまだ限られているようだが、
この手のチャリティ・キャンペーンのTwitterとの相性の良さは、
すでに宮崎の口蹄疫の一件でも証明済み。
mixiとfacebookは未確認だが、きっとコミュニティが開設されているのだろう。
加えて、キャンペーン専用のPCサイトには、
コンゴの窮状を訴える動画メッセージが用意されている。
こちらは手紙やケータイサイト、
そしてソーシャルメディアから誘導がなされる仕組みだ。
http://www.congophone.com/
つまり、私の自宅のポストに届けられた手紙は、
コンゴの窮状を少しでも多くの人に知ってもらうと同時に、
寄付を募ることを目的とした、クロスメディア型の
チャリティ・キャンペーンへの入り口だった。
それは、ポスティング、ケータイサイト、eメール、
Twitter、mixi、facebookといったソーシャルメディア、
そして動画を搭載したPCサイトと、考えられる限りのメディアを総動員した
クロスメディア型キャンペーンというだけでも注目に値するが、
加えてキャンペーンを構成する個々のメディアも丁寧に設計されている。
中でも、焼け焦げたような手紙は、それ自体かなり目を引く。
これが紙媒体ではなくeメールだったら、と想像すると、
インパクトが大きく低減することは想像に難くない。
本キャンペーンのプランナーは、そのことを知っているからこそ、
コストのかさむ紙媒体をあえて起用したのだろう。
また、その手紙のクリエイティブも振るっている。
焦げ目に隠れてコピーが読めないからこそ、QRコードをスキャンして、
その正体を見極めようとする受信者の意識を逆手に取ったアプローチは、
考えに考えて設計されたものに違いない。
さらに、焦げ目の間にわずかに見えるコピーには、
コンゴの国名が2ヵ所に含まれており、読めないながらも内容をイメージできる。
これも、クリエイターにより細かく計算された技なのだろう。
私自身は数年前、日本からの支援策のあるべき姿を調査するために、
コンゴを訪れた友人から話を聞いていたが、その実情はかなり悲惨なもの。
これを機に、コンゴの窮状を周囲の人々にもっと知らせていこうと思った。
ちなみに、世界の医療団のWebサイトには、
すでにこのキャンペーンのリリースが掲載されている。
http://www.mdm.or.jp/news/news_detail.php?id=370