やずやの新聞広告に思う

2006年9月2日

今からちょうど1週間前。8月26日の日本経済新聞朝刊12面に、
やずや(福岡市)の全面広告が掲載されていた。
やずやと言えば、青汁や香酢でおなじみの健康・自然食品の通信販売会社。
(すみません。香酢の酢の字が違います・・・)
問題の広告は、過日、同社のチラシ広告表現が
「消費者に誤認を与える」と指摘されたことを受けて、
「あらためて、私たちやずやのことをお話しさせてください。」
というキャッチコピーの元、文字通り「あらためて」自社の考え方を打ち出したもの。
約900文字に及ぶボディコピーは、
「言葉で伝える大切さをいま一度、お客様に教えていただきました。」
「顔が見えない通信販売だからこそ、言葉でお伝えします。」

という2つの見出しから構成。
前半では、通信販売は、カタログなどのメディアを駆使して、
商品の情報を言葉で伝える販売方法であるにもかかわらず、
今回の一件は、その「言葉の使い方」を誤ったために生じたものであり、
「どこかで企業側の立場で言葉を選んでしまっていた」のかもしれないと、
反省の辞を述べている。
そして後半では、今回の件に伴い、お客様から多くの意見が寄せられたこと、
同社が自らの想いを綴った手紙をお客様に送ったことを通して、
改めて「自分たちの言葉で情報を伝えていくことの大切さ」に気付き、
通信販売の可能性を再認識したとして、
今後、さらに「言葉の力を磨く努力」を重ねることを約束すると同時に、
お客様からの意見・提案などを歓迎する旨を伝えている。
この広告を見て、私は「(やずやも)やるな~」と思うと同時に、
どこかで似たような話を聞いたことがある気がした。
そう。同じく九州に本社を置く再春館製薬所が、
今を去る10年以上前に、オートコール・システム(自動発信装置)を駆使した
アウトバウンド・テレマーケティングの展開に伴い、
山のような返品が寄せられたときの話しである。
当時の再春館製薬所の対応は、新聞に全面広告を出稿し、
お客様にお詫びと決意表明の手紙を出すと同時に、
アウトバウンドを3ヶ月に渡り休止するいうもので、
まさに今回のやずやのケースと同様のものであった。
もちろん、対応はそれだけでは終わらない。
再春館製薬所では、アウトバウンドを休止した3ヶ月間に、
販売戦略を見直し、売上高の70~80%を占めていたアウトバウンドを縮小、
インバウンド中心に戦略をシフトすると同時に、コミュニケータの再教育を実施。
また、顧客満足の徹底追求を目指して、お客様満足室を開設したという。
ちなみに私は、今から2年前にトップインタビューで同社を訪れたのだが、
本社の1階ロビーにはその当時の広告やお客様への手紙と共に、
うず高く積まれた返品の山をイメージしたオブジェが展示されていた。
広報のご担当者自ら苦労して作ったというこのオブジェを通して、
社員一同で当時のことを今一度噛み締めると同時に、
自らを戒めるのが狙いとのことだ。
やずやのWebサイトを覗いてみると、FAQのコーナーに、
今回問題になった「熟成やずやの香酢」広告表現について
のQuestionが設けられており、本件に関する今後の対応として、
前述のお客様への対応に加えて、広告活動をしばらく中止する旨、
再発防止に向けての取り組みを強化する旨、
当分の間はお客様への説明と信頼回復に全力を傾ける旨などが記されている。
お客様への説明の次なるステップ、すなわち再発防止への取り組みは、
今後の課題となっているようだが、同じ九州発の通信販売会社として、
再春館製薬所のケースをベンチマークしつつ、
「(やずやも)やるな~」ともう一度、唸らせて欲しいものだ。
八頭さん、たいへんでしょうが、がんばってください。
そして、そのときには弊社にいちばんに取材させてくださいね!
※再春館製薬の事例は、弊社が発行する月刊「アイ・エム・プレス」の
2004年12月号のトップインタビュー、および「CRM白書 2005」に掲載されています。